右腕との再会
「クリア坊っちゃま、おかえりなさいませ」
ヴィラン伯爵邸に戻ると、メイド服を着た猫耳少女に出迎えられた。
うちのメイドはメリーの教育が厳しすぎるためやめた方がいいと伝えていたのだが、そちらの道を選んだらしい。
メリーの教育は本当なら使用人20人ほどで切り盛りする程度の規模のこの屋敷を一人で切り盛りできるレベルに教育するものなので、普通の人間は耐えられないのだが大丈夫だろうか。
体が頑丈だと評判の獣人なので、ギリギリいけるか。
領地の人族は皆、初日で「殺される……」と捨て台詞を残して、脱走したが。
「名乗るのが遅れてすいません。私の名前はアナベル・チャッキーと申します」
「ほう」
アナベル・チャッキー。
ネームドキャラクターだ。
肩書は帝国軍事最高顧問ーーラスボスの片腕で、命乞いをしてから自らの鎧を爆発させて、主人公を瀕死に追いやるという悪役らしい悪役だった。
ゲームでは顔中傷だらけの女で、猫耳が存在しなかった上、厚化粧ということもあり、それに何より、性格が拷問好きの狂人のため、現在のおとなしい性格と似ても似つかなかったため気づくのが遅れた。
「大物になりそうな名だ。逃げ出したくなったら、また仕事先を斡旋しよう」
「お褒め頂きありがとうございます! 一生懸命ご主人様のお役に立ちたいと思います!」
褒め言葉に喜んでいるようで、猫の尻尾をブンブン振って、アナベルは力拳を作る。
やっぱり部下を罵倒しながら、人間爆弾にして主人公たちに特攻させるゲームのアナベルとは似ても似つかない。
ゲームでは深くは語られなかったのでわからないが、どうやったらあそこまで性格が歪むのか。
胸糞の匂いがする。
ストーリーと合流させるのは全力で阻止しなければならない。
「続きですまんが、新たに客人を迎えることになった。亡国出身の身寄りのないものだ」
「盗賊に捕まっていた方を保護したのですな。坊っちゃまの性格ならそうなるのではないかと思って、準備は済ませてあります」
「準備がいいな。流石だ」
メリーとアナベルが前回同様、荒んだ環境で汚れた身を整えに向かうと、母上が奥からやってきた。
「クリア、話がある。執務室に来い」
「わかった」
どうやら何がごたついているようだ。
「ジャックの子のマリスが昨日から帰っていないようだ。報告のあった今朝、捜索隊を結成して、一度捜索したが見つからなかった。ウチの近所の娘だ。何か行っている場所に心当たりはないか?」
執務室に行くと母上は早速本題を切り出した。
聞くだに大事になっているので、幼馴染のマリスと関わるのはストーリーをフラグを立ててしまうことに繋がる可能性もあるが背に腹は変えられない。
それにそんな怠慢で命が失われるような結果になったら後味が悪すぎる。
「心当たりはないが、居場所を探せる術なら持っている。皆疲弊してるだろうし、俺がすぐ連れ戻してこよう」




