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雨とたばこ

作者: りおん
掲載日:2026/02/15

2025年7月15日、大阪では梅雨前線が後退しその夏の最後の梅雨の雨だった。その日は日本の夏を象徴するかのように蒸し暑く、家賃三万のボロアパートに住む僕は効きの悪いエアコンに苛立ちながらも、残りの通信量の少ないスマホから目を離せずにいた。

 僕は2025年の春から大学に入った一年生であるが、一年の浪人を経て性格が捻じ曲がってしまったのか、あるいは元から人と話すのが苦手なのが理由なのかわからないが友達が1人を除いてできなかった。

 その僕の唯一の友達の名前は 藤ヶ谷 翠という

名前とは裏腹に真夏に長袖を着るような変な女だ。

だが、彼女とは映画サークルの新歓で同じようにあぶれていた。

僕   『飲み会って何が楽しいんだろうか』

藤ヶ谷 『君も楽しくないんだね』

僕   『君は新入生?』

藤ヶ谷 『そうだよ、君も新入生だろうに変な質問だ

ね』

彼女は新入生らしからぬ青く染めた髪を指でいじりながら、にんまりと笑った

僕   『先輩たちは君を入部させようと必死みたい     だけど、君にその気はないの?』

藤ヶ谷 『その君ってのは嫌いだなー、翠って呼んで     よ、同じ一年生じゃん』

僕   『質問に答えてよ‥』

藤ヶ谷 『うーん、今はわかんないかな

     でも君が入るなら入ろうかな!』

僕   『なんでだよ』

藤ヶ谷 『だって、そっちの方が面白そうじゃない?     』

女性経験がない僕にとってその答えの意味はわからなかったが、なんとなく彼女は僕のことを気に入ってることがわかった。友達が作れずにいた僕には好都合だったこともあり、僕らは映画サークルに入った。

サークルはあまり面白くなかった。

大学は最後のモラトリアムともいうが、彼らにとって大事なのは恋愛やセックスや酒らしく、映画に一ミリも興味がないのだから相容れるはずもなかったが、彼女だけは僕と同じく映画に興味があったのか、それとも僕に興味があったのかわからないが彼女とは仲良くなれた。

7月の頭に大学の初めのテストが終わり、夏休みに入る前にサークルで飲み会があった。僕は彼女と夏休みに会うことができるかわからなかったため、イヤイヤ参加することにした。すると彼女も参加していたが、やはり彼女は誰とも話さずに1人、酒を飲んでいた。

私は酔いを覚ますために店の外に出て、灰皿の横で

なれないタバコに火をつけ、口に入れてふかしていたとき店の扉が開いた。

僕 『君は酒は飲んでもタバコは吸わないだろ』

翠 『君はやめてよ、何度も翠って呼んでって言って   るでしょ』

翠 『ねぇ、タバコ一本ちょうだい♡』

僕 『嫌だよ、君には吸ってほしくない』

翠 『なにそれ、新手のプロポーズ?』

僕 『違うよ、こんなもの吸わない方がいい』

翠 『それって理由になってないよねっ』

そういうと彼女は無理やり僕のたばこを奪って、咥えてこちらに向かって目を閉じた。

僕 『何そのポーズ?』

ととぼけつつも火が欲しいと思いライターでつけようとすると彼女は私の手を遮り、唇ではなくタバコの先っぽを奪い数秒したのち離した。

それはまるで恋人同士が交わす口付けのように甘く、

僕の脳を焼くのには十分な火力だった。

僕は火が吹いたように赤くなった顔を隠すように目を逸らしながらタバコを吸い終えるまで彼女の方を見ることができなかった。逃げるように彼女より先に店の中に戻り、まだ酔いが覚めてないと先輩からいじられながらも席に戻った。

一次会が終わり、帰ろうとしていたところ彼女にラインで繁華街から少し離れた公園の位置情報が送られてきた。その意図を汲み、駅に向かって帰るふりをし、遠回りしてその公園に行くと彼女がベンチに座っていた。

翠 『遅いんだけど』

彼女は頬を膨らませ、まるでデートに遅れたかのような態度で僕を迎えた

僕 『遠回りをしてたんだ、許してくれ』

翠 『そこまでして私との仲を隠したいんだー

   独占欲ってやつ?』

違うと言いかけて違わないことを自覚し、何も言えなかった。

翠 『そうなんだぁ』

と彼女は蠱惑的な笑みを浮かべたと思えば、恋をする少女のように嬉しそうに笑った

そんな顔を見た僕は彼女からのサインを受け取ったと思い、彼女の唇を仕返しのように奪った。

すると彼女は驚きなのか恐怖なのかわからない表情で僕を突き飛ばし、公園から出ていった。

僕は呆然と公園の地面に座ることしかできなかった。


そして待っていたかのような雨の中を傘もささずにふらふらと歩きながら家に帰った。

それが2025年7月15日のことである。

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