旅行までが早すぎる!
自分は汗をかきながら起き上がると皆は馬車から消えていて、苦笑いをしながらも馬車から降りるとメティアが封印されているのとキーノが消えていて、それ以外の全員は死んでいた。
「……!」
この惨事を引き起こしたのはゴブリンの集団である、馬は射抜かれていたので奇襲の可能性が高く、封印魔法を使えるほど強いゴブリンは見当たらないがとりあえず逃げようとするがメティア達を置いて逃げるわけにはいかない。
(死んでるのか、いや、それでも関係ない!)
魔力の十字架に貼り付けられているが何とか引き剥がそうとする、だがその間に優雅は頭を矢で撃たれて死んでしまった。
セーブ地点は眠る前の風景であった、あのことをすぐに伝えねば何が起こるか分からない。
「メティアさん!この後この馬車はゴブリンに奇襲されます!」
「君の能力は未来予知かな?精神強化というが……まぁ教えてくれてありがとう!」
今までもこうやって突然教えることが多かったので能力の本質はだいぶ見抜かれているはずだ、とはいえ信用はしているので大丈夫だろう。
「怖いこと言わないでくださいよ、ゴブリンとは言え自分じゃ勝てませんからね?」
「おや?暗殺者である君がゴブリンを知っているとは、元冒険者かな?」
「これだけでよく分かりますね、一応冒険者だったんですが……上を知ってまうとこうも諦めが早くって」
暗殺者は普通単独で行動し冒険者登録をすることもない、それに集団で行動するゴブリンに喧嘩を売ることも死を意味するのできっとパーティーを組んでいたのだろう、盗賊として活躍する彼として上の人間を見れば力の差を知って諦めるのも納得はいく。
「この世界で今も生きていられてるのは運がいいだけ、自分は運だけで生きてきた人間で」
「いいこと教えてやる!運がいいってのは神に愛されてるってことだぜ!」
「神かぁ……信仰でもしたら俺もまだやり直せるかもな」
こんなことをしばらく二人が話していると森から明るい光が見えた、それは火炎魔法を放とうとするメイジゴブリンであった。
メティアも油断はしていなかったのか放たれた炎を魔力壁で防いでそこに雷槍を投げると倒したようだ。
「魔法って本当にどうやって使うんですか!」
「気になるよねぇ、でも僕が教えるよりフミコに教えてもらったほうがいいよ?」
「じゃあフミコさん!教えてください!」
「私ぃ?まぁ私ならチート級の力与えられるわ!なんたって騎士団の中でも話題にされる……」
この後も話は続いたが転生者は漫画にもある通り本当に強く、自画自賛ばかりしていた。
「てことで私ほんと強いのよ!」
「そうすか、じゃあ教えてくださいよ」
「とりあえず手の先から火を出すのをイメージして!」
言われた通りイメージして手を出してみたのだが、マッチほどの火しか出てこなかった。
「ブッ!wユウガってあんなに魔力あるのにそれしか出せないの?ww」
「き、きっと属性の問題だよ!今度は水でやってみて!」
馬車の外に手を出してイメージしてみたのだが、元気のないおしっこのように水が垂れでるだけで。
「も、もうwこれはw」
「店長は黙ってて!じゃあねー、次は小さな光る玉を浮かせるイメージで!」
涙目になりながらも今度はよーくイメージした、すると手のひらの上で周囲を明るく照らす玉が浮かんでいた。
「魔法スゲー!!!」
「ファーww」
「い、いいのよ!まずはこれで……!次で基礎的なのは終わり、今度は小さな石を生成してみて」
「本気でやります!」
力を込めてイメージすると手で握れるほどの石が手のひらに現れる、というより泡が現れそれが固形になっていくという方が分かりやすいほど魔法は難しい。
「おぉ!!」
「……生きていけるといいね」
「そんな力じゃ知恵だけでやっていけないよ」
「そんな言わなくてもよくね?」
確かに石を浮かすこともできないが作れたのだからもう少し褒めてくれたっていいだろう、とはいえ現実がこれだから仕方ないが。
「あ!でも全魔力を一瞬で消費する武器の魔法ならどうよ!」
「店長?馬車で試しに使ってみせるよ!なんて言ったら私辞めますからね?」
「も、もちろん!ユウガ?後少しで湖に着くからそこで君が使えるかもしれない魔法を教えよう!」
「石浮かせられるんですか?」
「それもだけど……少し違うかな!」
数分すると空は曇ってきたが雨は降る様子なく、大きな湖についた。
一行は馬車から降りてストレッチをしていた。
「まず上裸になって!」
(やっぱそう言う趣味の人なのか……)
店に来た時もこんなことを言われたのでホモの可能性は捨てられずとも、一応は脱いでおいた。
「魔力がちゃんと出てるね、これなら3発は撃てるはずだよ!」
「やっぱチート魔法俺TUEEですか!?」
「かもね……とりあえず弓を引くイメージやってみて!」
弓道部にいたわけでもないので適当に引くのをイメージしたが、構えが悪いのとそもそも魔力が込められていない。
「おぉ、うーん……まず魔力を込めるとこからだね!構えは結構あれでも当たり判定は大きいからさ」
こうも自分が何もできないとなると焦ったくなってしまう、今まであんな敵やあんな能力を見てしまったのだからこれでは何もできないと、異世界は自分に向いていない気がしてきた。
「なんかごめん……と、とりあえず魔力込めればいいんだろ!」
力を踏ん張って出すようにすると自分を纏う大量の魔力がドロドロと頭上に溜まっていく、だが何も起きず続けているとキーノの影から剣が吹き飛んできた。
もちろん避けたがなんだか魔力を出すと殺される気がしたのでやめた。
「もしかしたらユウガの魔力は魔物だとかを狂わせるのかもねw」
「ごめんなさい……」
「いやいや、あんだけ凄い魔力持ってるのに!私だって使ってるところ見たいよ!」
皆が一斉に喋ってきたのでうんと一言だけ言っておいた、結論自分は魔力の扱い方が下手なので小さな光る玉を浮かせること以外何もできない。
「これじゃ騎士団の思う通り魔力なしみたいなもんだね、それに転生者ってなるとガチで守らないと一瞬で殺されちゃうねw」
「異世界は好きだったけど、来てみると格差があるんだなって」
今ここのパーティーは暴食の種火を食らった少年と、あまり正体はわからないが油断しなければ何も敵ではない店長、それに多分超強いはずの転生者の女の人。
そしてその中に能力以外取り柄のない自分、そして能力を言おうとすれば死んでしまうような痛みが体をめぐる。
自分はこの世界に拒まれるなんてもんではなく、きっと殺される運命なんだろう、死ねないのが苦というのもあるが死にたくないという矛盾が今のユウガ。
「強ければいいってもんじゃないから安心しな!」
「ハハ……ありがとうな」
「後少しでフィリスタだぞ!あそこはどうせ魔力なんてあっても使わないから安心してくれ!」
服を着て馬車に乗りまた進む、道中自分はこのまま異世界を堪能できるのかを考えているが、こんな店に雇ってもらっている時点で上手く生きていけるわけがない。
「あそこの国は夜も治安がいいから安心できる、とはいえ油断してたら最悪な目に遭うからね」
「その最悪な目って?」
「無理やり奴隷商に売り飛ばされたり、まぁユウガの場合ほら」
「あー!そういうことね、気をつけます」
聞きたくもないことを聞きそうだったので遮って反応しておいた、とにかくその国の夜は男も女もいけることが分かった。
「フミコさん、ここの店はこんなすぐ旅行行くんですか?」
「だねぇ、でもこういう時ってだいたい超高額な討伐依頼があるとかだから気をつけてね」
「まさか害獣討伐とかじゃないですよね?」
「そんなんじゃないわよw」
旧王都のデジャヴの可能性もあるがそう強い敵に合うなんてことはないはずだ、だが旅行というよりこれは依頼をこなすため他国に行くだけじゃないのか?
「ほらついたぞー!」
馬車から皆が降りたので自分も降りる、フィリスタの大きな街に来たようだが和の国というイメージはあまりなく、西洋感が抜けていない。
一言で言うと共生を成功させた日本だ。
「ちなみにこの国の人間は神というより国を信仰……まぁ狂愛してるから二人ともそこらは気をつけて」
「そんなことあるか?」
「本人達は自覚しないタイプだから、でも根はいい人たちだからさ」
メティアについていくといつのまにかギルドについていた、まずは宿じゃないのか?
「星の量スゲー!!!これやるか!」
星が8個貼られた討伐依頼があったがそれを受けてしまったようだ、フミコがメティアの胸ぐらを掴んだ。
「なんでこんなの受けたのよ!」
「半分収集依頼だからさ」
「何を受けたんですか?」
「元素の拡散生物の死体」
元素の拡散生物と言われても形がよく分からない、不定形なのだろうか?
「なんで星の数はあんな多いんです?」
「拡散生物は恐れなどの感情は持たないのと、大抵強いモンスターの側にいるから、さぁ!ついてきて!」
ユウガはまず初めにキーノを守りつつ危なくなれば逃げることが仕事なのだろうと考えながらもついていく、依頼場所は街中のようで一通りがなぜか多くなっていく。
「人が多くないですか?」
「ここの人達は魔物をあまり見ないから、死人が出ても仕方ないね」
どんどん人が少なくなっていくにつれて悲鳴の数も多くなっていく、人は遠くへと逃げていき逆に見にいくものも。
「こいつら……死にに行ってるのか?」
拡散生物というよりかは軽装鎧の羽を生やした何かが拡散生物を剣の形にして扱い人を喰らっているようにしか見えない。
「あれが?」
「あいつの握ってるのがそうだ、僕達の依頼は人型魔物じゃないんだけどなぁ」
「俺は逃げればいいっすか?」
「その通り!」
人型魔物の方にユウガはメティアに投げ捨てられる。
「逃げてね!」
「無理っす……」
人型魔物のが拡散生物で宙を刺さすと、風魔法が自分の手に擦り傷をおわせた。
全力で逃げようとするが道は大きな腐肉のようなものが地面から生えてきて塞がれた、拡散生物は大剣に変わりそれを片手で振り回して自分は当たりかける。
「助けてくれよ!マジ無理だって!」
拡散生物が壁に当たると溶けて地面に落ちた、すると紫色の細長く半透明な何かを落としたのでそれを拾ってメティアの方へとやっと逃げ切った。
「よくやったね」
フミコが魔力の槍を人型魔物の頭に投げると貫通して倒したようだ、一歩間違えれば死ぬところだったというのになぜメティアはこうもヘラヘラしているのだ。
「店長?今からユウガをそんなふうに使わないでくださいね?」
「ユウガはこういう役が向いてる気がするんだよ」
「俺ならこんな役何回でもやってやるぜ!」
「命が無限にあったとしても大事にしなさいよ!」
何回も死んだせいかおかしくなってきている、とはいえ自分はこの役以外に何もできない気がする。
「分かってるよ、でも俺はこうやって役に立てるなら本望だからさ」
「あーやっぱなし……投げた分際で言うけどこういう奴ほど病みやすいからな!それじゃダメだ」
「でも魔力使えないですし」
「戦い方に正解はないけどな、僕が駄目だと言ったらダメ、店長だぞ僕は?」




