幸せの序章
なんと外に出たと思っていたキーノが扉の外からずっと皆の意見を聞いていたようだ、もしもここで気持ちが悪い最悪なんて言っていたらと考えたら本当に苦しい結果を辿っていたろう。
「良かったよ、君達という世間は僕という呪いを……受け入れてくれるなんてね」
「祝福だろ?君は呪いとかけ離れた存在だ」
確かに元は聖職の道を歩む者なのだ、半強制的に変えられてしまったとてその人の心は途絶えることはそうそうないだろう。
(根は聖職者と大差ないし、いいやつなんだろうな)
安全性の面は消えたがまず女性であることのがより驚いた。
「本当に女の子?」
「女性に対して失礼だな、君も女の子なら分かるだろう?」
「誰も性別なんて気にしてないからね」
二人がなんだかんだ喋っている間に自分は一応教えてあげるとやっと顔から警戒心は見られなくなる、この異世界に来て何百人と救ったがこの時だけが唯一の自分の癒しとしての効果が一瞬あることに気づく。
「とりあえずだ!転移魔法で行くのはなんか違うだろ?馬車で行くぞー」
「何日かかるのよ、それにどう行っても特には何も変わらないわよ」
「どっちの意見も分かりみはあるな」
「それ言うならどっちか選べ!」
どちらにも肯定的な意見を出したのに二人は迫ってくる、自分的には便利さも必要だとは思うが時間をかけて打ち解けていくのも理想的だ。
「俺はやっぱ、この世界のこともあまり分からないし馬車とかで知りたいなとは少し」
「もしそれで危険生物にあったらどうするの!」
「道中そんな危なくないぞ」
王都は様々な国の主要地展に囲まれていてそのぶん流通も多く、人の通る場所は魔物もあまり通らないのでそう危険ではない。
「絶対ではない!」
「僕だって油断しなければ即死はないから安心してくれよ?」
(二回くらい死んでた気が……)
この前受けた依頼で飛竜に殺されキーノと共にいたデカい何かに殺されていたが、あれは油断していたということなのか?
「てことだから、この後城壁あたりでフィリスタ行きに乗ろうか、準備しておいてね」
「俺とキーノ金ないっすけど大丈夫ですか?」
「ちゃんとお金はあげるさ」
「ざっす」
「ありがとうございます」
メティアは一階に行き、シノはバックをクローゼットから取り出していろいろ荷物を入れていた。
ユウガはというとキーノの能力を聞いても悪巧みはするつもりなんてさらさらない、だから耳元で聞くことにした。
「キーノの能力って何?」
「全部食べる能力を結構前に貰って、僕自身の能力は魂をくれた方だけ召喚出来ます」
「どっちも強いな!」
キーノを尋問室から無理やり連れて行こうとする前に壁を食べていたので言葉通りの能力だろうが、召喚系の中でも魂をもらうというのはそもそもが使うには難しすぎるとユウガは思う。
実際には暴食の加護でかなりの量の魔物から崇拝されているが、魂を捧げた生物は20で使えるものが3体だけ。
「ありがとう……」
「二人とも準備は終わった?」
「準備って言ってもすることねぇからな」
「ほんと?じゃあ店長の顔からスライム剥がしてきて」
「そんなしょっちゅうやるわけないっしょw」
流石に冗談かと思いながらも階段から柵の方を見ると、また椅子に座りながらスライムを頭に乗せてくつろいでいる姿が見えた。
すぐに外すと少し機嫌が悪そうだ。
「また?いいかい!店長のすることは全て当たり前であって普通のことなの」
「思想強めな人みたいなこと言わないでください」
「店長!そんなことでまた死んで教会行かないでくださいよ!?私だってあそこ使うんですから!」
「それは悪いとは思ってるよ……」
上からもう一人降りてきて全員が集まるとメティアが小さなバッグからさらに小さな貨幣の入った袋をユウガとキーノに渡した。
「じゃあそろそろ行きます?」
「馬車と決まった割に乗り気だね、行くか」
(まだ雇ってもらって2日目?なのに早速旅行か?てかそもそも店長から旅行誘ってくれる店ってかなりいいな!)
スーパーホワイトよりのホワイトなところで働けるのはかなり嬉しいが、異世界というだけでこうも心配なのは自分だけなのだろうか?
店を出て数十秒するとユウガの服を指二本でつまみキーノがついてくる、それに女の子だと知ってからというより元が天使なのでかなり可愛く見えてくる
(おー!めっちゃ可愛いじゃん!!)
「よかったな仲良くなれて!」
「信じてくれてるみたいだし、俺も嬉しいよ」
こんな幸せそうな3人を見てメティアは1番前で通行人が少し引き気味な顔をするほどニヤニヤしていた。
こうして王都を歩くとかなり大きく一部危なそうな場所もある、完全に安心できる場所というわけではないようだが人の笑顔のが多く見える。
馬車が貸し売りされている場所に着き5人乗りのをとりあえず借りて皆はそれに乗り、御者が馬の手綱を握りフィリスタという和の国へと向かう。
言われた通り道中は危険とは程遠く、そよ風と草原の広がる美しい所であるが、こればかりが続くとなると退屈さも出てくる。
「メティアさん、魔物ってどんなのがいるんですか?」
「僕はスライム以外そんな知らないからね、フミコが何故か持ってきた図鑑とか適当に読んでればなんとなくわかっていくよ」
「本当に私もいらないのに持ってきたからこれあげるよ」
渡されたのはとても分厚いかなり本格的な本のようで、そこに書かれていたのは転生した時の祝福で字が読めるのか知らないが、魔物や種族についてのものである。
とりあえず全てを長い時間かけて読めるほど面白かった、スライムは本当に何十種類もいてゴブリンも体の形が大きく違かったり。
その中でも気になったりよくわからないものがこれだ。
サカム
種族:ハーフ
能力:?
平均痔命:?
個体数:1
人間と共存する魔族と天使のハーフであり、奈落写しの実験に成功した唯一の生物。
人間への害はないとされるが駆除依頼や戦争などの遠征では極端な行動で何万と味方も敵も皆殺しにした。
竜との融合体
種族:竜 人
能力:ねじ込まれた人間達の能力
平均痔命:?
個体数:5
何者かの実験により何百人と誘拐された子供や老人が竜との低魔力融合実験に成功して作られた竜、そしてそれから産み落とされた全ての生物の害である生物。
サカムの画像は紫色に光る剣を持って顔を黒鉄で隠した冒険者のようでとにかくかっこよかった、だが竜との融合体は体の至る所から人の一部が飛び出ていて吐き気がした。
「結構種類あるんだな、サカムとかめちゃくちゃかっこよかったぞ!」
「サカムってライムの友達だよね?」
このライムという名前かなり出てくるがあまり関わってこなかったので今聴くことにした、かなり気になる所だが親友なのか?
「そのライムって誰ですか?」
「あー、僕の親友」
「もうちょい詳しく教えてくださいよ店長ー……私だって気になります!」
二人が気になっているので流石に教えようかと考えていて決まったようだ。
「元勇者で元剣聖で元魔王、今は騎士団で一般階級って呼ばれる突撃兵、そういえば教皇もやってたな」
「……は??」
「今は病んでたまに僕とスライム育ててるよ」
「マジか……そんな人と親友ってメティアさんはなんなんだよ」
ライムという人はどれも特別職でありながら転生者や大きな希望と救世をもたらす者しか授からない能力を持っていたようだ、だがフミコは知らないようで。
「自慢の親友だね〜……本当に正義感が強くてねー」
「魔王なのに?」
「魔王になった理由も優しくてさ?ただこれ以上は言えないからね!」
「そこまで言ったなら教えてくださいよ!」
「変わりに僕の好きなタイプを教えてあげようか?」
そのライムのこともかなり気になるがそれよりもこの謎めいた店長に好きなタイプがあることに驚きが隠さず、二人だけが頷くどころかキーノも頷く。
「ハハ!そんなに気になるかい?僕はエロい人が好きだ」
「ユウガ……店長ってこの前どエロい人に誘われたのに断ってたんだよ」
「女の子なんだからもう少し言葉を和らげてくれ…てかそれってメティアさん嘘ついてるよね?」
言葉を包めないところは一旦置いといて、メティアはその歳なのにまさかタイプすら嘘をついてしまう人間なのか?
だとしたらあの回答はかなり根がおかしくないとできない、嘘をつくのならせめて優しい人とかだろう?
「本当ですか?」
「じゃあ綺麗な人」
「もう適当になってるじゃん」
「それか……キーノとか!」
メティアがそう言うとユウガ以外引いた顔をしている、キーノが未成年だとしてもこいつなら手を出しかねないと言うことだろう。
「ハハ、まあ好きな人なんて作ろうと思えば簡単に作れるさ」
自分はこの時完全に油断していて、御者が手に投げナイフを持ちキーノに勢いよく投げた。
皆がそれに気づくが止められずにまた人が死んでしまうとユウガは思ったが、いたる影から剣が飛び出て投げナイフを砕くと地面の中に食べられるかのように吸収されていく。
「……いやこえーよ」
ユウガが腰を抜かしているとメティアが御車に近づきこう言う。
「無料で運んでくれたら嬉しいな〜!無料がいーなぁー!」
メティアは杖を懐から取り出し無言の圧でそう伝えると馬主は笑顔でこう言う。
「すみませんでした……もちろんそうするので!」
「それでさぁ、なんであの子を狙った?」
「その事についてですと……奈落の宝をやるから暴食の種火を殺せと、奈落の怪人にそう言われまして」
そう言うと馬主はよくできた指名手配書を出した、そこに暴食の悪魔と書かれたキーノの姿が写っていて報酬は奈落の宝物。
奈落というものは初めて聞いたが周りは皆知っているようで。
「奈落に怪人?冒険者の間違いでしょ?」
「自分にもよく分からなくて、ですがきっと異形の類であるかと!」
「まぁなんでもいいけどさ、帰りも金払わなくていいよね?」
「それは当たり前のことですとも!」
「いきなりペコペコし出したな」
初めは無口だったのに突然命乞いをするかのような態度になったのは多勢に無勢だからである、暗殺してすぐに転移なら成功していたろうに。
「奈落ってなんですか?」
「それはですね、過去に魔力超臨界実験というもので出来上がった深度不明の大穴でして!それに誘われるが如く最新部へと潜ろうとする輩は必ず帰ってこない魔境でっせ!」
「あなたはそこに行ったの?」
「奈落からきたという何かが自分にあの紙を渡して報酬の話をしてきて」
こういう人間こそ危険な場所にいかないのでそれはそうだろう、だがその怪人は奈落からきて一度地上に来たということは死なずに地上まで辿り着いたということ。
「まぁキーノが許すなら僕も許そう!」
「自分は怪我してないので大丈夫ですよ」
「おぉ!ありがとう!」
この後は奈落関連のことを図鑑で読んでみたが、怪人らしきものはなかった。
数十分すると前世の影響かだんだんと眠気がきてそのまま眠ってしまう、寝相は悪く転がり回ったりしていた。
夢の中は少し不気味で、周りはとても広く空は水のような何かの層で覆われていて、自分は皆と共に見知らぬとても大きすぎる洞窟の中を歩いていた。
その時前から図鑑で見たまんまのサカムが仲間である何かを連れて自分たちに襲撃を仕掛けてきた、そこで夢は終わり目を覚ます。




