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偶然?で始まる 素晴らしき人生!!  作者: 保温地域の右手
優しさを買えば対価もある

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腐香の罪を許せるか

「ヌゥン!こっち来いよ!!」


無理矢理暴食を壁から引き剥がそうとしているが今度は腕を噛まれてしまい悲鳴を上げながら引っ張る、周りから見たら狂人でしかなく通報されるのが当たり前だろう。


扉を開けて外に二人を出すと兵士達はメティアと顔見知りなのか剣は構えずどこかへと目を合わせず逃げて行く、自分はこの人と知り合いと思われたくないので少し距離を取る。


「僕は変人じゃあないからなぁ!あー!!痛いってば!」


手に治癒魔法をかけ続けながら噛まれ続けている、これをなんとか耐えて自分の働く店に着いた。


「ユウガ!こいつ離して!」

「どうやって!?」

「スライムを頭に被せて!」


柵の中にいたスライムを暴食の頭に被せると息ができなくなったのかもがき苦しんでいた、メティアは頭にいつもスライムを被せてくつろいでいるがこれが普通の反応なのだろう。


(……異世界って大変)


どんどん自分のイメージする異世界の理想が剥がれて行く、本当なら転生した時点で超強い魔法だとかチート級に強い自分が無双するものだと、どう転がっても恵まれないのが少し悲しくなってきた。


「ユウガって何日か寝てないだろう?2階にスタッフがいるけど気にせずベッドで寝てて」

「分かりました……」

(こんな店に自分以外のスタッフいるのかよ)


店主は強いのか弱いのか曖昧でかなりの変人、店の名前は規制をかけないと駄目なほど酷くスライムを大量に飼っている、雇って欲しい人がいるどころか客が来るかすら怪しい。


(一応魔道具屋っぽいし、弟子的な感じなのかな)


2階にはスタッフと思われる小柄な女性がいた、自分は一礼して隣のベッドで寝ようとすると手を掴まれ童貞なので顔を赤くした。


「今のって礼だよね、日本人だよね!?」

「違いますよ〜……おやすみなさい」


手を振り解こうと振り回すが魔力を扱えているのかなかなかに力が強い、本気で手を振るが全く離れない。


団長に何度も言われた事を自分は一切忘れずにいるからこそこうも必死にバレたく無いのだ。


「本当に違うって言ってるでしょうが、証拠もないですし」

「店長は転生者しかこの店で雇わないって決めてんの」

「そ、それはほ……あぁそうすか」


これが嘘だとして反応したなら転生者とバレ、あの時のように小さな箱に詰められどこかに連れて行かれる気がしたのでこれ以上問いがきたら全否定することにした。


「なんでそんな隠したがるの?どうせチート級の能力持ってんでしょうし苦しいことなんてなかったでしょう?」

「……お前が転生者だってんなら俺だって信用は少しする」

「第二次世界大戦が終わった数年後の日本人が私」


自分は今まで並行世界だとかなんだとかを本気であるとは思っていなかった、ただこれに関しては並行世界と似ているが違うことかもしれない。


ユウガは2027年に自殺してこの世界へと転生した、だがこの女の子は第二次世界大戦が終わった数年後からきたらしい、まさか転生できる人間は自分の次元以外の人間もできるのだろうか?


「俺は2027年に死んでここにきたユウガ、無一文の16歳だ」

「私はクルス・フミコ、18歳で能力はテレポート!ちなみに私みたいにすぐ能力は言わない方がいいわ」


まさか自分より年上とは思っていなかったので少し驚いたし能力も自分より強い、それに優しそうな先輩で安心もあった。


「優しそうでよかったです……ちなみにこの店にはどうして入ったんですか?」

「転生者ってのは能力を悪用しすぎるからね、見つけたら即処刑って感じなんだけどここの店が私をなんと拾ってくれたんだ」

「確かにそんな人もいそうですね……ちなみに俺はここに住んでもいいと言われたので雇ってもらうことに」


そんなふうに雑談をしていると下から聞こえる騒音がやっと静まり、二人は心配になったのか見に行くと暴食はスライムの柵の中に入れられており、スライムはどんどん体に昇って行く。


「何やってんすか!殺そうとしないでください!」

「彼は暴食の加護がある、魔物には崇拝される存在だから死ぬことはないよ」

「とは言え……なんか駄目でしょ!」


センシティブ感が徐々に出始めてフミコとユウガが引っ張り出す、そのとき暴食は目を見開いたまま恐怖して何も喋れずにいる。


「トラウマになったらどうするんですか!!」

「そうですよ……」

「ま、まぁまぁ、それに落ち着いたようだよ?」


確かに言葉も発せないほど微振動しているが、まずそこが問題だと言ってやりたいとこだが理解しようとしないだろう。


「そ、それより君!名前はなんだい?さぁ教えてくれ!」


この場の空気をなんとか変えるために服のどこかに名前が書いていないのかを探した、だが名前は書いていなく人の体をただベタベタ触っただけの人間になってしまった。


(この二人相性最悪すぎでしょ)

「……うん、僕は悪くない、僕がそう思うならその通りだな、ユウガよ!この子の名前を教えなさい!」

「親じゃあるまいし知りませんよ」


なぜか無茶振りをされたにも関わらず無理だと言うと鼻で笑われた、自分のできなかった事を人にしろと言うくせになんなのだろうと少しイラつくと望蜀がやっと名前を発した。


「キーノです」

「ふふふ……僕のおかげだな」

(???)


声は姿とマッチした美少年感溢れるもので危険性はこの一瞬でない気がした、声が弱々しいと言うだけでこんな判断をするのは駄目なのかもしれないがなぜか害は無さそうだ。


「じゃあキーノ君、ちょっとこっちに来てもらうよ?」

「何する気ですか……もう何もないですよ」

「いいからいいから、怖くないよ」


セリフだけは一丁前にNTR系に出てくるヤツそのものであるが、まぁ未成年に手を出したら法的にもこの世界でアウトなはずなので流石にないだろう、


キーノはメティアの自室に半分強引に連れて行かれる、自分とフミコは疲れた顔をして2階に帰った。


「そういえばあの子誰?」

「暴食の種火ってのを食べた人らしいです」

「凄、そんなの存在してたんだ」


全く寝ていないのと何度も死んだ疲れで気絶するようにベッドで眠ってしまい、目を覚ますと窓からはまだそこまで明るくない光が差し入っていた。


(いつの間に俺は眠ってたんだ)


立ち上がる元気はあまりなく寝返りを打とうとすると柔らかく細い何かが自分の腕に当たる、驚いてゆっくり振り向くと自分の布団を全て纏ったキーノの腕が当たっていた。


「……」

(なんでだよ)


目をこすりながらも確認するがやはりそこにはキーノがいた、メティアの部屋で寝るものかと思っていたがなぜか自分の隣で寝ていた。


「ユウガ……キーノ……一晩でそういう関係になったのね」

「違う違う!いつの間にか隣にいたんだよ」


まぁこの図からしてそう捉えられてもおかしくはないが流石に自分はそういう趣味は、まだ芽生えていないので何もしていない。


「おや、すんなり言うことを聞くとは思わなかったよ」

「キーノに何言ったの?」

「僕と寝るのが怖いなら上の子達と寝てきていいよって、でも人間不信だと思ってたのになんでユウガにはくっつくのやら」

「そりゃスライムの中に放り投げた人と一緒は怖いよ」


襲われないとはいえスライムは知能が低いので格上だろうとくっついてくることはある、それを気持ち悪いと感じる人間もいるのにその生物の大群の中に放り込んだ人間と一緒になるなんて、初対面の人間じゃまずあり得ないし絶縁案件だろう。


「まぁ否定はできないな、ちなみにまた旅行行くつもりなんだけど二人はどっち行きたい?エンゼ……名前で言ってもむずいよね、夢見の国か和の国」

「後者は分からんですけど、夢見はなんなんすか?」

「構築された夢に入って遊ぶことができる最高の国!料理は小さいくせに高いけどそれ以外は全部最高」


自分は料理を食べると前世でいろいろな理由で吐き気がしてあまり食べていなかったせいか、今もろくに食べたいと思えないのでそこらは気にしていないので夢見の国に行ってみたい。


「ていうか店長は和の国のアイドルから物盗んだから行きたくないだけでしょ」

(そういえばそんなこと言ってたな)


ユウガにこの店の服を渡した時にそんな事を簡単に口にしていたが、それが大物だったら只事じゃ済まない気がする。


「アイドルのくせにバフ付きの服なんて持ってるのが悪い、それに僕はライム以外に謝りたいと思ったことはないんでね」

「私がユウガ連れてこの店出て行くよ?それに和の国行きたい」

「分かった分かった、僕の弱点を突くのやめてくれよ〜?てことで和の国です」


ライムという名前は確か呪い討伐戦の時にも出てきていた名前だ、兵団長も知っているくらいだから案外皆に知れ渡った人間なのか?


「……なんですか?」

「おはよう!寝起きも可愛いじゃないか」

「きもいですよ店長」


キーノもメティアにあんな事をし続けたのになぜこんな笑顔で接してくるのか分からず、戸惑いより恐怖が勝っていた。


「キーノさん、自分達は近いうち和の国に旅行しに行きますよ」

「そういうのは相手をよく知ってから誘った方がいいかと……」

(正論だなぁ)


まだ全然話し合ってもいない子をいきなり旅行に誘うのは早かったか?いやタイミング的に今しかなかったはずだろう。


「でもあれ教えちゃっていいのー?」

「僕は構いません……この人達から僕を避けてもらえるなら」

「ふふ……じゃあキーノのことについて教えてあげよう」


キーノが部屋の外に行ってしまうとメティアが話を始めた。


「キーノは生まれた時から教会で生きてきた純白な信徒だった、ただ周りと少し違った思想を見つけてから他の子供達からは迫害された」

「見つけたって、持ったわけじゃないんでしょう?その時点で辛いねぇ」


きっとその時から少しでも暗い心を持った者達は落とすために異教徒として扱ったことまで想像できた、そこは結構共感できて自分も頷く。


「とある日自分の親を名乗る者が教会に来たけど暴食の種火と共に自分の娘を浄化してくれと金のためなら動く司教に依頼してそれは受理された」


この時点で精神はズタボロだろうにまさかの娘も殺してくれた親が言うとは思わないだろう、こんな事を言われたらユウガの場合神しか信じられなくなるだろう。


「教皇はそれを止めようとするけど信徒に異教徒って言われて殺されて、キーノは暴食の種火と教皇の死体が入った箱に入れられて火葬されるわけ、まぁそこで苦しみから種火と融合して教皇だけ食って強くなった感じ」

「娘……?てかその前に自分を助けてくれた人を食べたの?」

「暴食に慣れるまで人一人分の肉食わないと平常心は保てないからね」


自分もかなり辛い人生を送ってきたと思っていたが最終的に周りの言う神の反逆者になり、大事な人を食し生きながらえるのはかなり辛かっただろう。


「でも人はそれ以降食べてないんですか?「

「らしいよ?歴史には人を10万人食ったって言うやつもいるのに凄いよなぁ」


暴食はどれだけ何かを食らっても腹が満たされるわけではなく、常に腹が満たされずとはいえ腹が減っているわけでもない、ただ人を食らうと幸せや快楽を感じてそれが中毒になってしまうらしい。


本来種火を食すのは悪意しかない人間なのだがあの子の場合望んでもいないのに、生に負けて食らったのだろう。


「教皇って言うくらいだし心も広いだろ?確かに死体とは言え食べたのは禁忌かもだぜ?でも、俺から見てキーノは悪くないと思うんだ、それに俺は気にしないさ」

「私も感情論は嫌いじゃない、下手な屁理屈並べて仲間外れにしようとする奴のが私は嫌いだよ」

「だってよキーノ!」

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