腐り切れず止まれず心を喰らい
初めて暴食の種火という何かを耳にしたが、名前からして大罪に関わっているのはよく分かる。
「マジ?てことは白騎士はそいつに身を捧げてるのか?」
「それ以外に何があるってんだ、私達なら厄災が本格化する前に止められる」
「その暴食の種火ってなんすか?」
二人は知っているようだが帰らせてもらえなかったのだから説明くらい聞けるはずだ、ただその暴食の種火を食べた何かに身を捧げると言うことはかなりの上位存在なのかもしれない。
「弓神教の信徒と崇央教の教皇が作り出した大悪魔の魔力からできた魔力の具現だ、それにも種類があるけど全部大罪関係だね……だよね?見た方が早い」
「暴食はもう自制心なんて持ってないだろうし、見つけたら殺しちゃった方が早いよ」
自分は転生者だからというよりも、元は人なのにそう簡単に殺せる精神の方が異常な気もする、そうしなければ生きていけないのも分かるし殺さないとダメなことも分かるが、複雑だ。
「そうですか、その人はどこに?」
「全ての生物の住処がそいつの周りと化してるはずだ、きっと旧王都の展望台にいるはずだ」
「兵士はこう言う時に使うもんだろ!なんで帰らせるんだよ!?」
「白騎士3体に負けかけるんだ、私達のが犠牲は少ない」
犠牲は少なくともメティアはともかくシノは兵士の中でもかなり上の位のはずで、死んでしまえばかなりの損益のはずだ。
それに兵士は戦うためにその職に就き死ぬ覚悟はできている、これは兵士への冒涜と言ってもいいし軽く見ているのではないのだろうか?
「それはお前の都合だろ、あいつらは死ぬ覚悟くらいできてる」
「それでも死なせない、生きる価値がある人間を死なせるほど愚図じゃない」
(凄い正義感だなこの人、初対面奴隷?にあんなことしてたのに)
二人は仲がそこまでいいわけじゃないのは見て分かる、だが二人が力を合わせないとこの先は結構厳しいものだと思われる。
「嫌なら帰ればいい」
「お前なぁ!今まで自分一人で上手く行ったことないだろ、どれだけ凄くても精神がそれじゃここで死ぬ!」
(俺はこの修羅場どうすればいいんだ、普通転生者ならこういう場面も難なくこなせるもんだろ!)
自分は何ができるか考えてでた結果、結構シンプルなものだった。
「無理だと思ったら逃げればいいと思うんですが」
「それもそうだけどさぁ?……もうこうなったらそれしかないか」
「そうだ!現状を見て考えて、それから言葉を発せよ!」
「うざ」
上手くいくはずないと思ったが案外すんなり受け止めてくれた、だがメティアの最後の発言でシノは怒り腹を殴ろうとするが避けられた。
「怒んなってw行くぞー」
「指揮するのは普通私だろ」
二人は魔力を周囲と同じほどの小さなものへと変えて闘技場の監視塔に向かうので自分もついていく、正直3人で旧王都を巡るなんて無理な気もするが大丈夫なのだろうか?
「ここからは無言だ、複数巨大な魔力が近づいてきている」
二人はシノの言うことに頷いて答えた、こんな面白そうなことは異世界にきて初なので静かに隙間から闘技場の中央を覗いて見る、数分すると下を向いて震えた様子の少年と灰色の瘴気を纏った白騎士と少し既視感のある、3mほどある真っ黒な鎧を着た何かが側を着いて歩く。
何かを話し合っているようだが鎧を着た何かが丁寧に呪いを抱き抱えてから背中に乗せた。
(持ち帰っちゃうけどいいの!?)
横を見るとシノがメティアに何かを伝えていた、自分にも隣にいるメティアから教えられる、あの少年が暴食の種火を食した本人であることが確定したので隙を見て一撃で仕留めると。
シノは背中から弓を引き抜き構えて矢を放つと、鎧を着た何かが微量な魔力の風で方向をずらした。
自分達の位置はどうやら初めから気づかれていたようだ、勝てるかどうかはともかく強いことはわかった。
「初めからバレてるじゃん」
「たまたまだろ、次は仕留める」
鎧を着た何かがとても大きな大剣を引き抜こうとするが少年に何かを言われて、少年に弓が当たらない位置に自分が移動しただけになった。
「敵意はないんじゃ?」
「魔族はそう見せかけて人を殺す、初めに殺さねば犠牲者が出てしまう」
また弓を放つと今度は呪いの死体を少年に預けて大剣を引き抜くと、歩いてこちらへと近づいてきた。
「もう気づかれてる、伏せていないで二人は戦え!」
「わ、分かりましたよ」
優雅のショートソードなんかであの鎧を貫けるわけないし魔力なんて使ったこともないし使えるかも分からない、自分にとってこの状況は二人に頼りっきりになるだろう。
「メティア、こいつを私が食い止めている間に暴食を殺せ」
「分かった分かった」
「殺すの?まだ自分達は何もされてないのに」
「仕方ないさ、過去に種火を食らった者達はやりすぎたからね」
きっと人を殺しすぎただとかなんだとかであるのだろう、だがそれでも彼は自分達になんの害も与えてこなかったのに殺してしまうのは理不尽なのじゃないのか。
そんなことを考えている優雅は呑気なだけと思われてもそれは当たり前だと思う、歴史から今を変えるのは当然であるから。
シノが鎧を着た何かと接近戦を始めた、右手で持つ大剣を左へと素早く振りもちろんそれは避けたが左手で片手を掴まれてしまう。
「クソが!離せ!」
相手は攻撃を一切してこない。
「私達に近づくな」
シノは空へと吹き飛ばされ石を魔力で鋭く錬成しそれをさらに魔力で吹き飛ばし体ごと貫かれ死亡した可能性が高い、そしてメティアは少年が攻撃を上手くかわし続けている中大剣を投げられ魔力壁を作るが体ごと貫かれ二人は死んだ。
「ろ、ロード!」
まさか二人が負けるとは思っていなく震える声でロードをした、セーブ地点はどうやら暴食達が来たところからだ。
「メティアさん、絶対に二人に攻撃はさせないでください」
「君がそう言うならもちろんそうするさ」
シノにもそれを伝えてくれてなんだか複雑そうな顔をしていたが説得は成功したようだ、これで誰かが死ぬことはないはずだ。
「でもどうする?あいつらを逃すか?」
「そうはさせたくないが、おいユウガどうすんだよ」
「まぁ……俺が話を聞いてくるよ」
「新人のくせに死ぬなよ」
二人のところへと歩み寄り段差を降りる、少年が自ら近づいてくるが敵意はないようだ。
「初めまして……武器も持たず何をしに?」
「少し話をしようと」
「も、もういいや、見てると本当に気分が悪くなる……帰っていい?」
(失礼だなこいつ)
「あぁそう、でも一つ教えてくれないか?お前って人は殺した?」
少年はこの言葉を聞くととても苦しそうな表情をして走って逃げて行く、鎧を着た何かもどこかへ行ってしまい、自分は追いかけるのもなぜか気が引けた。
上にいた二人はユウガに攻めるように言ってきた。
「話聞くとか言って何か収穫はあったのか!無いんだろうが!」
「そりゃないぜ」
「……ごめん」
「チッ、いいから追いかけるぞ」
シノの後に二人はついて行く、自分は魔力があっても使い方がわからないので二人の走りに合わせるのは少し辛い、いやだいぶ辛い。
少年が見えると突然歩き始めやっと疲れを癒せるそうだ、元引きこもりにこれは酷いってやつじゃ無いのか?
「本当になんなんだよ!!死にたくない……死にたくないんだよ!!!また蔑むんだろうが……ゴミどもが!」
少年は必死で逃げるがそろそろ疲れてきたのか鎧を着た何かの後ろに隠れた、ここはだいぶ狭く今ならなんとか二人同時に倒せるかもしれない。
「やれるな」
シノが鞭を取り出すと少年の陰から白騎士が現れた、一体とは言えスライムやゴブリンとは格が違うためいい足止めではある。
「本当に僕達だけで来たのが正解か?」
「そりゃな」
メティアはそこまで強くないと思っていたが、水をレーザーのように発射して白騎士の胸を鎧ごと貫き殺した。
少年は驚きながらも逃げ続ける、だが人を殺しているかもしれないのだから捕まえなければならないのは当然だろう。
「もういいだろ!」
シノが跳躍して少年を捕まえてとても高い旧王都の鐘塔に登ってしまった、自分もメティアに掴まれながら吹き飛びそこまで行った。
「離して!!僕は悪くないだろ!!!なんで僕がこうなるんだよ……!クソどもが……」
「帰るか」
「シノの尋問が見れるなら行ってみるよ」
シノが転移石を地面に落とすと4人は尋問室へ転移していた、少年は無理やり拘束される時とても周りを憎むような目をしていた。
椅子にも縛られ少年は落ち着く様子が見られないので頰を叩かれてから尋問が始まる。
「暴食の種火に君は関わったか?」
「そうだ」
「人は殺したか」
「食った」
「……親は?」
「お前らに殺された、どうせ自分はここで殺されるんだろ?」
優雅とメティアは壁に寄りかかって呆然としながら眺めるだけ、この少年は兵士に親を殺されたというがそんなことあるのだろうか。
「お前は魔族だろ?それも根がおかしい反逆心まみれ、親はどんなやつだったのだろうな?」
「お前も思考なんてしなければいい、苦しみってのをお前ら人間は知らないようだね」
拘束具が溶け始めて外れるとそれを少年が食らって魔力が先ほどよりも増したのがよくわかる、これに恐怖してシノが封印魔法を使って手と足を封印した。
「お前らはやりすぎた、大罪は揃い大悪魔はやっと集結した」
「知ったこっちゃない、もう人を殺したのは確定だろう?それに暴食だ、ここで死ぬんだな」
扉が開き処刑人が入ってきた、きっとこれは誰も知らぬ死刑なのだろう。
斧が振り下ろされる瞬間自分は少し怖くなったにも関わらず目は見開きながらその光景を眺めたままでいたからこそわかった、少年は斧を首から現れた口で砕き飲み込み封印を解いた。
「来るかっ!二人は離れてろ!!」
少年は攻撃しようとこの部屋の皆に雷を帯びた魔力剣を目の前に浮かせるが、涙を流しながら眠った。
「全くなんなんだ……私はこの件、正直嫌いなものかもしれない」
「なら僕がこの子もらっちゃうわー……追加でお前のいうこと聞いたしいいよな?」
「でもメティアさん、危なくないですか?」
「それに何かしたらどう責任は取れるのか?これの存在は今処刑人以外この部屋のメンバーだけが知っているから渡せるものの……」
この世界の歴史で種火を食らった人間や生物は必ず大厄災となり国を滅ぼしかけるか滅ぼしたり、現れるたび大きな犠牲を払わなければ事態は解決しないなどさまざまなことがあった。
「大丈夫、油断しなければ僕は負けないし罪は皆も犯す、ならば一般人を育てるのとなんら変わらないはずっしょ?」
「それを世間である私が批判したいが関わりたくない、絶対にそいつを外に出すなよ」
シノが部屋を出て行くと二人はため息を吐いていた、短い時間であっても法の上での尋問は見ていて気分のいいものじゃない、殺された側の気持ちも分かりたいが。
「なぁユウガ、彼どうしたらいいと思う?」
「あなたが育てるって言ったんでしょうが」
二人はひそひそと喋っていると暴食が壁を殴り破壊して、壊れた壁を食し始めた。
「何やってんねん!」
「暴食だから壁くらい食ってもマイナスなことはないぞ」
異世界を知れば知るほど訳が分からなくなっていく、暴食と言え壁は石なのだから。
「ほら行くぞ」
メティアが暴食の手を無理矢理引っ張るが力が強いのに加え抵抗してくるのでなかなか運べない。




