人を救うこと③
いらん事を言ったせいでシノは少し怒っているように見えるがなぜか攻撃はしてこない、やっぱりメティアはちょっと強いのかもしれない。
(あの女がメティアさんを攻撃しないって、やっぱ強いのか?)
実力は何も知らないがスライムに頭を飲み込ませながら眠りかけるほどの度胸があることは分かる、何があったらあれで寝ようと思えるのか。
「彼……強いの?」
「多分ここで1番弱いけど、色々と不思議な子だからね」
「何言ってんの、私なら瞬殺よ?スパって」
鞭を振る素振りをして自分はまた殺される気がしたが流石にそれはなかった。
「恨まれても知らないよ?すでに恨まれてるかもだけど」
「いちいち失礼ね!いいの?黒歴史新聞にばら撒くわよ?」
「スライム食っただけだ、それより前のことは親友しかしらねぇよ」
(俺の出番ないな……)
この物語の一応主人公である優雅はずっと二人が喋っているせいで後ろから眠そうな目をこすりながらついて行くだけ、正直旧王都のことなんて忘れかけで何があったかなんていう気力もない。
「ここから先に行くのは久しぶりだね、とはいえ兵士もそれなりにいるし安心安心!」
自分は大きな門の前で待機する大勢の兵士の中からカイを見つけて近寄る、皆暗い顔をする中カイだけは星空を真顔で眺めている。
「あの時は逃げちゃってすいません」
「ユウガか!お前に会えて安心だ、命懸けで俺たち戦いに行くんだけどな?相手は一人なのにこんな1000人も兵士使うんだぜ?馬鹿らしいよなぁw」
「それな」
多分神の剣の呪いとは旧王都の害獣を一撃で葬った者の事だろう、確かに強かったし飛竜相手に一歩も引かず戦っていたとはいえ1000人も使う必要があるだろうか?
「皆!私がまずこの門の先にある橋を渡る、問題がなければ続け!」
そう言うと皆がシノの方を向き大橋を見る、大橋の先には大きな遺跡がありそこを入らないと先にいけないようだ。
シノが盾を構えながら走って橋を渡り遺跡に到着するが何も起きず、兵士が皆注意せず走って大橋を渡り遺跡の前まで辿り着いた時、なんと遺跡の中から飛竜が現れブレスだけで優雅以外皆死んでしまった。
自分はロードと言ってシノが周りに伝える前の待機している所で始まる。
「……メティアさん、ちょっとこっち来て欲しいです」
「おお!!!どうしたんだい!」
自分が新人のために役に立てて嬉しくなりとても興奮していたが、自分としてはこの人じゃ望みは薄い。
「どうして分かるかは聞かないで欲しいんです、実はあそこの遺跡の中に飛竜が隠れていてブレスで皆さん焼かれてしまって」
「全く能力が分からんけど僕もなんだかそんな気はするよ、橋の上には動物の黒い骨が何個もあるってのを見たらその可能性は捨てられない」
「良かった……です、でもシノさんには言わないでください」
「当たり前さ」
カイに先ほどと同じ挨拶をしてシノがまた同じ事を言って遺跡の前までいく、いつになったらメティアは動き出すんだと焦りながらも兵士はいつの間にか遺跡についていた。
(メティアー!!マジで助けてくれって!死ぬぅ!死んじゃう!!!)
脳内でかなり焦っているとなんだか遺跡が明るく光ると、ブレスで照らされる飛竜の顔が見えて兵士は盾を構えようとするがブレスは放たれる。
それをメティアが微量な魔力の壁を作り出し弾く、予想通りこの女?はだいぶ強い者だった。
「盾を構えろ!」
兵士はメティアがいながらも盾がなければ不安なのか全員盾を構えた、優雅は盾なんて持っていないのでカイの後ろに隠れた。
「あの魔力の壁スゲェな、透き通るくらい弱い魔力なのに壊れないなんて」
「あれを防ぐには普通もっと硬くなきゃダメなの?」
「そりゃあなぁw周りを構わず防御しないと普通防げないもんだぜ」
カイはこんな状況でも呑気で心配になるくらいだった。
飛龍が恐れたのか遺跡の天井を突き破りどこかへ飛んで行った、姿はやはり小汚い血まみれの悪魔のようなドラゴンだ。
「ユウガよく教えてくれたね」
「勘です、ほぼ勘」
「それでもだよ!じゃあ皆んな進もうか!これでだいぶマシになったはずだ」
兵士達は一安心して遺跡の中に入ると行き止まりだった。
「おかしいな?前までここはぶっ壊れてて通れてたはず……」
「幻術だ、そこの壁は壊れている」
シノが鞭を壁?にぶつけると幻術が解けて道が出現した、道にしては荒々しいがちゃんと通れはする。
一人の偵察兵が確認のため先に前へと行った、自分達は目を離したわけでもないがその偵察兵は目の前からいつの間にか消えていたのだ。
瞬きをせずただ見つめていたのに消えるのは超高速でどこかへと連れて行かれたか、能力による存在の消滅など色々挙げられるがまず周りは少し混乱している。
「こんな幻術は……魔法陣でもないとなると能力か」
この千人の中の誰かの能力である可能性も捨て難いが、今は一人でも欲しい状況であり誰もがその現状を見ながら進むので流石に消すなんてことは味方内ではしないはずだ、敵であるのは確定だ。
「へぇ?随分と怖い能力じゃないか、魔法系なら嬉しいな」
メティアが懐から小さな木の枝を取り何層も自分に半透明な膜を張り前へと進む、すると何かが膜にいつの間にか突き刺さっていたのだがそれは人の腕だ。
「能力は神速のようだね?超速なら捕まえられたのに……」
膜が次々と割れていきとうとうなくなり流石に死んでしまうかと思った時、メティアの手には体がところどころぐちゃぐちゃになった人らしき何かを掴む光景が見えた。
それを遺跡の窓から湖の中に落として前へと進む、カイを見ると彼からは想像のできない少し不安そうな表情が見えた。
「人の技じゃないよな、自分達は死ぬほど鍛錬してもあそこまではいけない」
「別にあの人になろうとなんてしなくていいんだ、カイは今のままが1番だ」
「ふむ、まぁ自分の今の実力は自分の目指したところだしな、それに辿り着けたし追い求める必要はないよな」
少し自信を取り戻したようだがカイとしては認められることよりも生きていくためにはあれだけの力が必要なんだろうと感じている、ただ自分達より年上なのかなんなのかすら分からない相手に自分を越されているのは兵士としても悔しいだろう。
「とは言っても流石に兵士としてのプライドはちょっぴりある、しょうもねぇプライドだけどな」
「ハハ、どうせカイみたいな性格してる奴は絶対いつかプライドなんて捨てちまうよ」
カイは優雅のこの言葉も笑って返してるので結局プライドとして成り立っているわけではない、ではただ強すぎるのを妬んでいるように見えるが実際そうかもしれない。
「正直ここの攻略なんて異常に強いやつだけでいいと思わないか?」
「それな」
周りの兵士達も緊張はあるがだいぶ敵も出てこなくなり安心感が増したのか気を緩めて離し始めた、まぁアニメであるあるなのが気を緩めたら死ぬぞ!系のものばかりだが流石にこの世界はそこまでハードじゃないはずだから大丈夫だろう。
歩けば歩くほど道は広くなり建物は焼け焦げたものばかりだ、不穏ではあるし優雅はここで過去に何が起きたか知らない。
(王都の半分以下が旧王都として捨てられた地域、ドラゴンとか飛んでるし神の剣とかあるくらいだから争いで使えなくなったのかな)
まだこの世界のことなんて1割も分からないがそのうち本だとか店長の知る範囲内で教えてもらえたらいいが、本なんてあるのだろうか。
「さてさて、神の剣の呪いはこの闘技場の中にいるはずだ…誰一人として欠けることなく来れたのは奇跡だ!まず皆に作戦を教える、呪いは攻撃されてから3秒後に敵と認識する、つまり皆がほぼ同じタイミングで強力な遠距離魔法攻撃を行えば必ず倒せる!」
シノは皆に拡声器の役割をした玉に声を出して作戦を伝えた、案外シンプルだが700人程度が魔法使いなのに残り300人の上級戦士達は何をすればいいのだろうか。
「歩兵の者は皆が魔法を打ち終わった後確実に呪いを殺せ、さぁ魔法使いは段に並んでこい!歩兵はまず50にんが闘技場の中に入れ、そして味方に剣は当てるなよ」
兵士達は皆が準備をして5分で終わった、シノとメティアが闘技場の崩壊寸前のVIP観客席にいたので自分はそこに行く。
「メティアさん、俺は何もしなくても大丈夫なんですか?」
「やっぱり何かあれば伝えて欲しいな、魔法はまだ君には早いからね!別に老害ムーブしたいわけじ」
シノが突然拡声器の役割をしたものに声を出す。
「魔法使い達よ!私がカウントダウンをして0になったら1番強力で必ず当たる魔法を放て!……3、2、1、0!!!」
魔法は全てが全て地面を必ず抉るほどの威力で、炎の攻撃ですらそれなのであって魔法とはやはり想像以上に美しいものだった。
「おぉ……」
「何かあれば私が行くよ」
「そりゃな」
砂塵でまだ呪いが隠れてしまい兵士ですら見つけるのは困難かと思ったが、魔法が放たれて2秒後にはすでに斬りかかり全てが魔力を帯びさせた剣なのできっと死んだだろう。
「強力な呪いと言えどさすがにやりすぎだろ?こんなに人数必要ないはずだけど」
「ここは旧王都だからもっと人数は減ると思っていた、だから……あれは、飛竜か!」
また飛竜が現れ今度は有利な空から最大火力で火を放ち戦士は魔力壁でガードして壁に叩きつけられ、間に合わなかった者は骨すらも焦げてしまった。
魔法使いには位置的に当たらないが飛竜に魔法は効かないので全員外へと退避した、自分はこれを伝えるためにロードを使いセーブ地点は呪いに魔法を放った瞬間だった。
「メティアさん、この後空から飛竜が炎を放ってきます」
「マジか」
闘技場の壁に魔力剣を出現させて飛竜が来るまで待つことにした、ちなみにこれは魔法とは言え半分物理なので耐性を貫ける。
飛竜が空から現れまた炎を放とうとした瞬間に魔力剣が自動的に喉を貫き痛みで地面に落ちた、その時何かが弾ける音とともに砂塵は吹き飛び呪いの姿が見えた。
呪いは傷だらけだが飛竜の背中を神の剣で突き刺し放り投げた、自分の体より何十倍もある存在を軽々と投げられるのはさすがに白騎士でもできないはずだ。
「そろそろ私が行く」
シノが跳び呪いの頭に鞭ではなく大きな鉄の塊のような大剣をぶつけて殺した、その時神の剣はカイの足元に落ちていた。
「勝ったんだな?」
皆は歓声は上げずただため息を吐き剣を鞘にしまいまた列を作り直した、シノが神の剣を拾って掲げた。
「今回死者が一人も出なかったのは奇跡とは言えない、白騎士が見当たらないのは何かの前兆であることが予想される、私とメティア一行が旧王都を数日調査すると伝えて来い!」
兵士達は闘技場から帰って行き自分も帰ろうとするが腕を掴まれてしまう、厄介なことにはあまり首を突っ込みたくないのに。
「おいおい冗談だろ〜?」
「アハハ……」
地面に座り込み今後を考えると王都から出たらさらに大変なのだろうと予想した、やはり今の自分は周りの人間に頼らなければならないようだ。
「それで僕達は何をすればいいのかな」
「暴食の種火を誰かが食した可能性がある」




