人を救うこと①
「そういえば……これから君は名前を偽るんだぞ?理由は自分達の基地に戻ってから話をする、これを一生の約束だと思ってもらいたい」
あの時自分が裁かれたのを思い出すと恐怖すらある、もちろんこの人の言うことに従わないと自分が酷い目にあうなんてのは考えずにもわかることなのだから名前は変えることにする。
「名前ですか?詳しいことは分からないけど、もちろんです!」
「まともな転生者でよかったよ」
二人は店を出ると兵士達が列を作り直しまた隊長についていく、今更だがここはただの街ではなく王都などの規模で大きな街なのでこの兵士達は位の高い者である可能性が高い。
基地に着いた、地味ではあるが大きな館で庭もかなり大きい。
「私と彼以外は皆各々連絡があるまで自由にしていて構わない!さぁ、行こうか」
「はい」
二人は館の中に入り2階の他とは雰囲気の違う扉を3度隊長がノックして誰かの声で許可を得て中に入る、そこにはあの時助けた女の人がいた。
「あの時のいせか……!!あれ?」
「魔力がないだけで異世界人ではありませんのでご安心ください、私たちは白騎士に遅れをとっていた時助けてもらいました」
この女の人の前になると態度は急に引き締まっている、ただ忠誠心がないにしても本当のことは言わず自分のことを助けてくれたことには信用ができた。
「そうなの?ありがとうございます、でもね?魔力がない人じゃ鎧を貫くなんて無理よ?」
「白騎士の魔剣を彼がかわしながら当てたのです、命知らずですが我々に対する危険性はありません」
自分でもあの魔力剣が即死性なのは知っているので真の命知らずであるのはわかる、まさしく狂人だが兵士を助けたのはかなりメリットだった。
「ふふ……こんな人が兵士に何人もいればいいのに、あなたは王都に住んでいるの?それとも旅の人?」
(ど、どう答えればいいんだこれ?)
転生者であるのはバレたら本当にマズイはずなので少し考えて出た答えがこれだ。
「ぶ、武装集団に捨てられました!」
「……」
隊長は呆然としながら自分を憐れむ目で見てきた、まぁ自分でも馬鹿だなとは思っている。
「デモ隊か魔王軍もしくは荒れた冒険者かもですね」
「はぁ……」
隣で隊長が小さくため息をついて少し安心していた。
「では、出身と年齢を」
(日本なんて言ったら終わりだろ!!しかも年齢は……引きこもり過ぎて分からん)
「すみません、彼は産み落とされずっと一人で生きてきたので曖昧なようで」
(ワイルド過ぎない?)
自分も自分だが隊長もあまり変わりはなく、この世界であり得なくはないだろうが嘘である可能性がかなり高いのはよくわかる、もちろん泣きかけの目で見つめた。
「え゛、そ、それでは名前を」
「スクイ・ユウガです!」
今までの質問の中で唯一ハッキリ言えたのが名前だけだった、今のところ怪しすぎる救世主止まりだ。
「こう、なんというか……ね?」
「職業はあるの?」
「……」
自分が高校1年生なのは忘れているし年齢も忘れているがバイトすらしていないのは分かる、それにこの世界時間でいう生きた時間は1時間程度なので職になんて就けるわけがない。
「ちょ、ちょっと!この子何者か全然分からないわよ!」
「私に言われても、ただ魔力もないのでわたし達の脅威ではないはずですよ?」
「それはそ、いやいや!白騎士相手に生きて帰った魔力なしよ!固有能力の問題でしょ!教えて!」
この世界では必ず一人に一つ特別な能力を持っている、優雅はオートセーブとロードだがこれは言って大丈夫だろう。
(これは別に大丈夫か?)
「オートセー」
能力を言おうとすると突然地面から黒くドロドロとした魔力が上へと地面に落ちるかのように上がる、これを見て何か起きる気がして言うのをやめた。
「あー、そうですねぇ、精神が強くなる能力です」
「精神?メンタルが強くなるだけ?うーん、まぁいいと思う」
(嘘つけ、顔が全てを物語ってんのよ)
この世界でそのクソみたいな能力は虐げられるかもしれない、だって隊長はあの場面を見ててそうかも知れないと思った顔をして女の人は苦笑い。
「特に質問もないけど怪しすぎる」
(そりゃ聞いた上であの答えじゃ不安で済まんでしょうね)
もちろんこのまま見逃してもらえるはずもなく。
「身体検査をしましょう!」
「構いません」
隊長が優雅のポケットや腹を触り何も出てこない、これなら先ほど言った武装集団に捨てられたも貫き通せるかもしれない。
「何もないです」
「ホームレスのがまだお金あるわよ?テロリストじゃない?情報部にユウガの過去を調べさせて」
「どうなるんですか?俺」
「とりあえず牢屋行きか、尋問攻め」
どちらもろくなもんじゃない、結局どう人を救っても自分の思う異世界のスローライフは送りたくても送れないことが身を沁みてよく分かった。
「助けただけなのに、ですか?」
「仕方ないよ、T室に連れて行ってあげて」
「分かりました」
自分は何も言わずにただ見知らぬ兵士に見知らぬ部屋の椅子に座らされた、なんなんだよこの世界と拘束が解かれたら絶対この国の敵になってやると思いながら座り続けた。
扉の開く音がして前を向くと腕がない獣人が投げ捨てられた、生きてはいるがこのままだと出血多量で死んでしまうのは確実だ。
「君の話は聞いた限りお人好し感満載だ、悪く思うなよ?」
「何やってんだ!怪我してるだろ!」
獣人に駆け寄るが気絶しているようだ。
位の高そうな軍服を着た少女は初対面でわかるように自分の好む人間でないことがよくわかる。
「椅子に座れよ、じゃないと君は私が売り飛ばし、この奴隷は殺す」
「知ったことか!正義パンチをお見舞いしてやるぜ!」
女だろうが知ったことはなくクズはクズとして扱い、そこまで力は込めず叩く程度にしようとしたが自分は魔力の波に一度当たると死んだ。
ロードするとそこは少女が奴隷は殺すと言ったところから始まった。
(こいつ怖すぎだろ、絶対こいつ救ってから叱ってやっかんな)
「けっ、俺は金も何もないぞ」
「ゴミから金が出ないのは知っているぞ、そんな事より顔も初めて見ただろうあの奴隷のために自分の隠している事を言ってもらおうか?」
自分は二人を命を懸けて短時間で助けた人間だ、この少女は半信半疑で奴隷のため自分の情報を吐き出せるかと言っているが、情報だけで助かるならもちろんだ。
「それだけか?能力は……」
能力を言おうとすると体の中の魔力が自分の腹を内から突き刺そうとする痛みが止まない、セーブとロードと言うだけなのに。
「ふん、自分の命が1番なのか?」
「精神強化です」
痛みは治りさっき二人に言った能力と同じにしたらなんとすんなり言えた、だがこの結果に納得いかないのか胸ぐらを掴まれた。
「魔力なし能力は雑魚、まぁ私達には不要だったゴミというわけね、白騎士を殺したのは隊長の成長と」
(死ね)
「そうですよ」
まさかゴミ呼ばわりされ白騎士を倒したのが隊長自身のおかげだと言われた、死んでしまえばいいのに。
「もういらないから、帰って帰って」
「その人を治してくださいね?」
「はいはい」
奴隷は少女に引きずられながらどこかに連れて行かれ、自分はまた一人になった。
「誰か俺を助けてくれ、なんで俺ばっか」
そうやって愚痴を言っているとまた誰か入ってきた、今度は普通の兵士だ。
「ユウガさん、私についてきてください」
「はい」
(やっと帰れる、あとでどこ行こうかな)
復讐とかなんだとかの暗いことは一呼吸して忘れてこの異世界を満喫する方法を考えた、兵士についていくといつのまにか館の外にいた。
「2等団隊長からの言葉ですが……聞きますか?」
「誰か知りませんがお願いします」
「時間返してくれる?勇者でも聖剣士でもない無一文、誰かに期待されるといいですね」
これを聞いただけでわかるあの腐り切ったクソ女だとよくわかる、この先一生会いたくない少し顔のいいだけなやつだ。
「そして1等団隊長からは、今回の件は本当にすみませんでした、それと今後も例の約束を守ってくれ、恩人には死んでもらいたくない」
(例のって転生者ってことか?……ぶねぇ!!あの時転生者って言いかけたぞ……)
尋問されていた時に能力しか言わなかったことが自分の命を長く保ったようだ。
「それじゃあ自分はそろそろ」
「はい」
気分をあまり晴らすことはできない、金もない地獄みたいな出来事さらに空腹ときたもんだ。
(どう生きればいいんだよ!文字分からんしギルドがあるかすら怪しいんだがっ!!)
街を歩けば歩くほど訳の分からない文字の書かれた看板をよく見る、言語設定はどうなってるんだと思いながら自分の昔からの夢である無双をしたいのでギルドの場所を誰かに聞くつもりだ。
「すみません、ギルドの場所って知ってます?」
「他国から来たの?それならあそこの少し大きな建物だよ」
「あざっす」
場所を聞いた人が指を指した場所には少し大きな建物がある、その周りには派手な鎧を着た人や羽衣を纏った美しい人など個性が強い人が多くいる。
入るのに勇気が必要だったが中に入ると人が多すぎて何がなんなのかよく見えないし、見たところで何も分からない。
「誰か助けてくれ……」
「君はあの時の!助けて欲しいと言ってるが何が分からないのかな!」
きっと白騎士から助けた兵士の誰かだろう、見覚えはないが頼れる人感はある。
「実はギルドのことよく分からなくて」
「珍しいな、まぁ全部1から教えよう!」
一緒にギルド内を歩いて回る。
「まずこの貼られた紙に色々書いてあるだろ?星の数が多ければ多いほど難しいんだ、あと受付があそこで依頼のことを詳しく教えてくれて報酬金を貰えるぞ」
「ちなみに初心者がよくや」
「君は強いからな!神の剣と旧王都の害獣討伐が1番似合ってるぞ!!」
大体のことを教えてもらって悪いのだがさすがにその依頼は星が周りと比べて多いがする、断ろうとするが周りはこれを聞いて凄いなと言っているので、断ろうにも断れなかった。
「俺もちょうどそこに行くから助けてくれよな!」
「……ワカリマシタ」
周りは歓声を上げた、その依頼はどれほど凄いものなのか分からないがいくらロードすればクリアできるのやら。
「神の剣となんたらって、どこに行けばできますか?」
「旧王都ですね!ですがその前に……遺書などは?」
「あ、大丈夫です、それじゃ行ってきます……」
いろいろ教えてくれた兵士の手を引っ張り外に出た。
「あなたの名前は?」
「カイだ!」
「俺はユウガです、この国に来て全然だから旧王都とか分からなくて」
「それなら安心してくれ!結構な額だったが転移石を持っててな、もう行くか?」
「行きますか」
自分は武器も何も持たずに転移してしまったことをかなり後悔していたのだが、なんと周りには折れた魔力剣や結晶の何かが落ちている。
「知ってると思うけど武器以外に触ったら爆発するから気をつけてな」
「そうなのか、ん?」
全くこの世に慣れていないせいもあって魔力の融合爆発は知らなかった、優雅は知らないが体から魔力が今も出ていないので優雅だけは触れても爆発はしない。
「てか、馬鹿持たないのはさすがに自信ありすぎだぞ?目の前で死なれるなんてごめんだ」




