美しく欠けていく
「分かった、じゃあこれから俺はどうすればいい?」
「君お得意の未来予知で僕達を救ってくれればいい」
(ロードって言えば戻れるからな……これが1番現実的か」
「ハハっ、俺にぴったりだ」
その救う時はここにいる誰かが死んだ時だ、仲間が死ぬのを見るのはかなり心に来るものがあって自分が強ければこうはならなかったのにと。
「そんな強かったの!?じゃあこれからどう動いても安心だね」
「あぁ、だな」
「さぁ!次のところに行こう!」
少し疑問が生まれたのだが、王都内にも魔物はいたしここも市街地であるのになぜか魔物が暴れている、街に入る前に兵士は止められないのか?
狭い道に入り進んでいると赤い魔力弾が三発飛んできた、メティアが手で地面へと打ちつけたがこの正確さからして人である可能性が高い。
「モルテデモ隊……?」
「初めて見た、本当に攻撃してくるとはね」
フミコが前に出て剣を構えると魔力が収縮されていき放たれようとしていた、だが空から何かが降ってくるとあたりの魔力が全て無効化されてしまった。
デモ隊は魔力に頼り切って生きてきたせいで転んでしまう者も数人いた。
「死人が出る争いは私が許しませんよ」
「喧嘩ふっかけてきたのはお前の国のデモ隊だぞ!責任とれや責任!」
格上かどうか分からないがメティアが短剣を手に取り剣を抜くふりをした兵士?のような者に詰め寄ると金貨を渡されていた。
「あー気分いいわ、数分おきにデモ隊来ねーかな」
(……メティアさんまさか常習犯か?)
態度を一瞬で変えていたのを見てから何度かしているのには気づけた、金貨といえばかなり高価なものなのでそれをこんな理由でもらうのに罪悪感を見せないのには皆引いていた。
「あとあなたは窃盗、強盗、殺人未遂、暴行などの件がまだ片付いていないだろう?ついてきてもらおうか」
「店長……僕を安心させるためでも、そんなこと隠さないでよ……」
キーノもかなり引くと言うより、少し信用していた相手が重罪犯だったことに悲しさすらあるようで涙を流しかけていた。
「はぁ?この国は僕を魔物と言ったんだ、魔族なら許してやってたけど魔物なら何してもいいだろ?止められなかったお前たちの責任だし」
「国ではなく代理団長がでしてね、その前にそんな子供のような屁理屈並べず一度取り調べ室まできてください!」
メティアがため息をつきながらきっと皆んな自分の見方をするだろうと思いながら後ろをやれやれと振り向く、だが皆の視線は冷たく諦めたようだ。
「こんな時にライムがいれば……分かった分かった、僕とみんなで行くよ」
「なんで私まで?」
「俺は心配なのでついて行きますけど、何もしてないですからね」
「えー?ユウガが行くなら私も行くよ」
剣を持った兵士が手錠をかけようとしたがメティアが睨んで手錠を地面に叩きつけた、周りのデモ隊ですら口を開けて震えていた。
「ついてきてくれるのだろう?」
「そうだよ?」
また手錠をかけようとしたが地面に叩きつけられてしまう、デモ隊はとうとう逃げ出し、自分達は国に対して何やってるんだよ!と思いながら少し焦る。
「もういい、じゃあちゃんと私についてきてください」
ユウガとフミコは愚痴を言っていたらいきなりメティアに逃げるぞと言われ、キーノは抱えられユウガは手を繋がれて本気で走り出した。
とても素早く魔力で手が引きちぎれないようにされていた、数分後ろも見ずに走って宿に着くと息も切らさずにいた。
「ハハッ!付き合うだけ無駄だよね」
「気に触るかもしれないけど、俺達巻き込まないでくださいよ」
二人が店長である存在に対してずっと説教をしていたらいつの間にかユウガの後ろに先ほどの兵士がいた、ショートソードを引き抜く前に転移石を使われ強制的に皆は取調室に入れられた。
「よく逃げる気になりましたね?」
「帰してくれないなら皆んな殺すから」
子供の駄々かのように聞こえたが内容はかなりカスであった、強さをこうも暴君に使うのが自分の上司であると考えると嫌気がある。
「あなたにはできないでしょう、脅迫はやめてほしいです」
「そりゃまぁ……てかここまで来たんだしすること済ませてあげるよ」
「なんで店長が上から目線なのよ」
全くもってその通りである。
メティアは椅子に腰掛けて兵士を睨みつけた、それに比べて兵士は礼儀正しく静かに椅子に座り睨みつけず真剣に見つめていた。
「皆さんは後ろで座っていていいですよ、私は拷問官ではないので生々しいこともしませんので」
「それじゃ」
3人は椅子に座りこの光景を眺め始めた、別に暴力的なものはないが現実的生々しさが強かった、異世界にきてなんでこんなものを見なければならないのだろう。
「あなたの犯した罪のことは全て知っています、それに転生者のことも生かす、そのような重罪に対してこの国が取る処置は懲役刑ですが今回は特別です」
「皆んなごめん、死刑確定演出だ」
雇ってもらって3日目ちょいにして店長がいきなり死ぬかもしれないと言ってきた、もう少し責任を持ってほしい。
「違います!実はあなたの仲間に危険性が見られずその上とても強いということで、転生者の見方を改めるという名目であなたの店の転生者を借りて……私の妹の看病を頼みたく」
「奴隷でも雇えばいいんじゃないのか?そんなうまい話あるわけないだろ」
「もちろんあなたの罪も消しますし、なぜ皆さんに頼んだかと言うと秘密にしてもらいたいのですが、私のような身分の人間が奴隷を雇えば批判を受け、兵士に看病させようとするとそれはそれでパシリにさせた兵団長と批判を受けるので……」
理由を聞けばまぁ人間らしいクソみたいな批判がくることを少し恐れているようだ、きっとこの兵士は上の人間であり、そんな人間の情報ほど良く外に漏れてしまうのだろう。
「批判くらい覚悟し」
「それと……私の妹は結晶痔命の病にかかっていて……転生者の皆さんは加護で呪いの耐性を持っていることから」
結晶痔命は世界中にあるとても珍しい魔鉱石から出るオーラに当てられた者にかかる呪いで、それは呪いに耐性のない人間の体を静かに結晶化させていく悲しみの具現である。
「店長、俺で良ければやりましょうか?」
「でも僕のためにそこまでしなくても」
「俺は前世がクソみたいなやつだったんだ、ちょっとでも人を救えるなら俺は自分のために救いたいんだ」
「望んで人を救う?偽善にしろ偉いことだ、ま!僕もなんかプレゼントあげるから頑張れ!」
最後までメティアはユウガに偽善だなんだと言った、少し怒りも湧いたが助けてもらった身であり0からこの世界でやり直したんだ、悔いのない人生がいいだろう。
「あなたはまず店員を大事にしたほうがいいです……それと君、名前は?」
「スクイ・ユウガです」
「ユウガ、この件を受けてくれて本当にありがとう、報酬には欲しいものをなんでも渡すよ」
「随分と太っ腹だこと」
ユウガはこのあと病についてのことや妹についてなどのことを教えられ、話を終える。
「それじゃあユウガさん以外の方はこのあとここにくる兵士が外へと連れて行ってくれますので、じゃあユウガ……行こうか」
自分はこの棋士達の集う館から出て数分歩くと、周りより少し大きめな家に着いた。
「中は裸足で構わないよ、それと私は家を何個か持っているからこの家が燃えたとしても妹に危害がなければなんでもして大丈夫だからね」
「お、おう!任せてくれ!」
二人は家に上がり2階の部屋に入る、そこにはとても高級そうなベッドにほんの少し結晶化した手をいじる妹がいた。
「妹の名はファル・チェムネ、事情は説明してあるから優しくしてあげてほしい、私はこの後戦争をしている地域を制圧してくる……あとは頼みます」
兵士は部屋を出る前に妹の手を握り家を出た、ユウガは急に静かになった空間で少し話してみることにした。
「初めまして!俺はスクイ・ユウガ!金はないからそこだけ期待しないでくれよな!」
「……私の病は治らないのに、兄がすみません」
「確かにチェムネの兄さんも治らないとは言ってたけど、俺がなんとかその方法を見つけ出してやる!人の命一つ救えないようじゃ転生した意味がねーからな」
半分嘘であり半分本気である、もちろん自分のできることは全力でするつもりだし美少女を殺すなんて気も悪い、だがそんなに上手くいく人生は存在しない。
「いいの……これは運命だもの、あなたは私を救う運命にある人じゃないしこの世にそんな人はいないって」
「正直俺も少しは無理だと思ってるがな!できることなら本気でやるさ!」
「兄は私の病を治すため常に結晶系の本を買っていたの、そこの本棚にあるから読んでいいよ」
最後に微笑んでチェムネは眠った、自分はこんなにも早く眠れることを大して大きなことと思わなかったが違和感なら少しあった、だが気にせず結晶痔命の本を読む。
先ほど治らないと言われたがちゃんと治療法はあった、それの内容はサカムの作り出す悪魔と試練を死なずに乗り切ったものが手に入れる黒結晶を、体にできた結晶に当てると自然と消えていく。
(サカムってあの……どこにいるかも分からないってのに、しかもこの子を放っておくわけにもいかないからな)
しばらく悩んでいると部屋のどこからかパキパキと音がする、ガラスが少しずつ割れていくような、氷に覆われた水たまりを踏んだときのような、そんな音がチェムネから聞こえる。
(本人に痛みはない、だからこそ自分の状況も曖昧になって静かに蝕まれる?こんなんじゃ体も楽に動かせないだろうに……)
音ですぐに目を覚ましてしまう、なぜあんなに早く眠れるのかわからなかったがこれを繰り返しているのだろう。
「私の体からはたまにこんな音が出るの、迷惑はかけたくないのにごめんなさい」
「謝ることじゃない、君は必ず救って見せるさ!」
「いいの、もう思い残したこともないから」
チェムネは見た目からして13〜14あたりといったところで、こんなにも微笑んで人を不安にさせないようにしているのをみると悲しくなる、きっとこの子は自分の状態にも気づいているから、自分の死で周りを悲しませないようにしているのだろう。
「でもその歳だろ?俺ですらまだ思い残すことなんていくらでも」
「思い残そうと思える人と、思いたくても思えない人はね、この世にいくらでもいるんだよ?」
希望がないからというより、希望があっても叶えられる自分じゃないことの絶望感で、あるべき自分を失おうとしているのには気づけた。
「……安心しろ!クソゲー、というよりクソみたいな人生でもハッピーエンドにできないことはない」
「あなたならできるの?ふふ、面白い人でよかったよ」
「俺ならもちろんできるさ!」
そういうと突然頭を何かで貫かれたような感覚があったが実際死んでいない、目を開けるとそこは真っ暗で地面も空も存在しない空間だった。
そこにあったのは忘れた記憶の数々。
「これは……?」
小さな光が3つ並んでいて、そのうちの一つを触ると脳内なのか目の前なのか分からないが突然こんな光景が見えた。
母親のヒスで父の怒りの矛先がいつも何故か優雅にいく最低な場面が何十、何百と見えた、その次は母親に話を合わせ続けていたらいつのまにか両親が離婚していたり。
それからの自分は全てが全て自分のせいだと思うようになり、学校でも上手くいかず徐々に不登校気味へと。
とある日母親が自分の前でマンションから飛び降り、そして死亡。
自分は訳がわからなくなると言うより、母親が消えたことの安心感があったのと金の絶望感や人生の絶望により数日後首吊り自殺をした。
自分は咄嗟に吐いてしまい自分の意思で掴んだ小さな光を砕いた。
「気持ち悪い!!なんてもの見せてくれやがる!」
光りから走って逃げるが常に位置は変わらず、まるで自分が走っていると錯覚するほどだった。




