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7 心からの祝福を(1)


 リスの呪いが解けてから1ヶ月ほど経ち、僕たちはアンリ王太子の22歳の誕生日パーティーに出席するため、王都に来た。

 数カ月ぶりに会った王都邸の使用人たちは、僕の元気そうな姿と夫婦となったリスとの仲睦まじい様子を見て、安心し喜んでくれた。

 執事から状況の共有はあったとはいえ、前に会った時の絶望に暮れている姿が焼き付いて心配でしょうがなかったらしい。

 願いも込めて夫婦の部屋は気合を入れて整えておいたと報告された。嬉し恥ずかしという感覚だった。しっかり活用させてもらうだろうから、照れながらもお礼は伝えた。

 リスの呪いが解けた後、僕たちは恋愛結婚したかのような空気感の夫婦になった。間違いなく、夫婦としての夜を過ごすようになったのがきっかけだと思う。それから日中もリスから僕へのスキンシップが増えだしたし。

 僕の呪いも少しずつ解けていっている。リスも僕の表情をしっかり見られるようになる日が楽しみだと言ってくれてる。

 冷たい視線が多い王都でも、リスが隣にいてくれると思うと、不思議と不安がない。


 王太子の誕生日パーティーへの参加に向けて、王都だからこそ知り得る他家の情報の確認をした。距離の問題もあり、辺境伯領では国の中心部の動きを知るには不便なところがある。

 パーティーでは王太子の婚約者も発表されるのではないかと目されている。有力候補として挙げられている令嬢の中にダリア嬢はいなかった。

 フラグメント侯爵家は、この一ヶ月で急に評判が悪くなり、いくら王太子とダリア嬢が相思相愛と言えど、王家が縁組をするに相応しくないと言われるようになったとのことだ。

 最初に聞いた時は驚いたけど、冷静に考えれば当然のことだった。

 リスの呪いは解けた。フラグメント侯爵家とその一族は、呪いの代償を支払っているところだ。

 人々の意識を操り、リスに着せていた汚名はあるべき場所に戻っていった。そして、汚名を着せた分だけその身に生涯消えない黒い痣ができているはずだ。

 社交界から疎まれてということだけではなく、痣が原因でフラグメント侯爵家に連なる一族が自ら社交界から足を遠ざけることも考えられる。

 リス曰く、ダリア嬢に関しては優しい子として育てられてその通りに育ったらしい。他家に養子縁組をすれば王太子の婚約者として問題ない身分になるのではないかとのことだった。

 


 王都の辺境伯邸に着いた翌日は、僕の両親に挨拶するためにプリエール公爵邸を訪ねた。

 僕の呪いが少しずつ解け始めていることを報告すると、両親は泣いて喜んでくれた。

 弟のエフォルは疑いの眼差しで僕たちを見ていた。リスが少しだけ不機嫌になったのがなんとなく分かった。

「リスノワール殿はこの化物に騙されている!!ダリア嬢にそっくりでこんなに美しい方が化物と結婚だなんてあまりにも憐れだ!!」

 突然の弟の大声に僕も両親も驚いて、目も口も開いたまま固まってしまった。エフォルに嫌われていることは察してはいたけど、こんなに言われるほどとは思ってなかった。

 いや、僕がリスという素敵な妻がいることへの嫉妬でわけが分からなくなっているのかもしれない。

「弟君は呪いを恐れているのですね」

 リスがにこやかに言い放った。笑顔なのは確かなんだけど、それとは裏腹に怒っているのがひしひしと伝わってくる。

 エフォルのことが目に入っていないかのように、リスは両親の方に顔を向けて答えている。リスが僕のために怒ってくれていることが嬉しい。

 リスに声をかけられてハッとした両親は、エフォルを自室へ戻すよう護衛に指示をした。エフォル本人に戻れと命じはしなかった。

 護衛の騎士にエフォルは大して抵抗できず連れて行かれ、静かになった応接室で両親が公爵家の現状を話した。

 僕をフォール辺境伯家の後を継がせたのは、僕の容姿では社交界で生きづらいと考えたことと、国の防衛都市として優秀な当主が辺境伯領で必要とされていたかららしい。実際、僕がフォール辺境伯家を受け継いだ時は、魔物による被害が増え始めていた状況だったのは確かだ。

 長子がいなくなって、残ったエフォルにプリエール公爵家を継がせようと考えていたが、社交界で悪い影響を受けたようで思想に偏りがあり、当主の器として心配しているそうだ。

「ドゥマンの呪いが解けた時に、エフォルがまだあの調子だったら公爵家を継いでくれないか?」

「それは…」

「考えておいてくれ」

「…はい」

 突然の跡取りの話の後に、すぐに辺境伯邸に帰った。

 両親は夕食に誘ってくれたけど、食事の時は仮面を外さなければいけないからと言ったら、すぐさま帰宅を了承してくれた。

 なんだか泣きたい気持ちだった。

 帰りの馬車からリスが手をつなぎ続けてくれた。リスが側にいてくれる喜びと、リスがいなければ僕の人生はどうなっていたのだろうという恐怖が僕の頭の中でぐるぐると回っていた。



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