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 手作りの弁当ショップ〈ますヰのお弁当〉は何とか秋には開店することができた。しかも、最寄駅に行くには、必ずこの店舗前を通らなければならないことが奏功して、開店当初からそれなりの売上を見込むこともできた。

「おはようさん!どうだい?順調かい?」

商店街組合の会長をしている脇田幸三がいつものように声を掛けてくる。

「あ、いらっしゃいっ、いつもありがとうございます」

ショーケースに盛り付けた弁当の見本を並べていた瑤子は、カウンターへ向き直って笑顔で頭を下げた。開店当初は会長の立場もあって、状況確認のため仕方なく来ていたと思うが、3種類しかないメニューの味が口に合ったのか、他に何が気に入ったことがあったのか、分からないが、自身が営んでいる不動産会社の従業員用だと云って、店の休日である水曜日以外は連日のように顔を見せてくれている。

「今日の日替わりは肉じゃがかね…」

脇田は瑤子が並べ終えた見本とメニュー表を見比べた。

「会長、肉じゃが、だめでした?」

「いや、そうじゃないんだけどさあ、肉じゃがって、作る人によって味が極端に違うだろ?」

脇田は苦笑いを浮かべて応えた。

「うーん、ま、確かにそうですね。家庭の味とかって云いますからね。これお口に合うかどうか…。でも大丈夫だと思いますよ。これも主人のレシピなんですよ。高級割烹の味付けですからね」

「そうかい。じゃあ、問題ないかな。ご主人、有名な店にいたんだってなあ…。確かにこのあいだの野菜の炊き合わせなんかは、弁当と思えないぐらい絶品だったよ」

脇田は肉じゃが弁当とサバの焼き魚弁当を二個ずつ買っていってくれた。


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