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五
いつものように開店準備を始める。割烹着を着ながら、玄関先の郵便受けに投函された数通の郵便物を取り出してから、調理場へ入る。人を雇う余裕はない。郵便物の束を取りあえず調理台の脇におき、その横に伸一が残したレシピノートを広げて仕込みをする。弁当の種類も唐揚げ、焼き魚、日替わりの3種類だけにして、味は勿論のこと、彩を考えた材料と丁寧な盛り付けに注力している。とりわけ唐揚げ弁当が人気だ。それは料理人だった伸一が考えたレシピで、よくある一般的な唐揚げではなく、揚げる前の味付けに、秘密のレシピというほどのものではないが、他と異なるひと手間があった。おそらくそれが人気の要因だと瑤子は思っている。
ただ、食品を扱っている場合、食中毒には細心の注意が必要だ。瑤子は一度でも手を入れた材料は、すべてその日のうちに使い切りことにしている。そうなれば、必然的に残り物が自身の食卓に登場することになり、それが頻繁になると美咲には不満が募るらしい。このあいだの保護者面談以来、美咲の様子がおかしいことにも瑤子は気付いていたが、そればかりに構っていられるほど時間的な余裕もない。さきほど足を踏み鳴らして階段を下りていったのも、おそらくその辺りのことが原因なのだろう。




