第8話 美少女と風の国
新たな大陸、オリエンティア大陸に上陸したミモリたちだったが、着いた先はウィンドールという移民に厳しい国だった。
首都カゼタウンで旅行許可証を手に入れなければその他の街には入ることが出来ない。
「で、そのカゼタウンってのはどこにあるの?」
「地図貰えばよかったですね。」
「ずっとさまよう気か?」
風が絶え間なく吹き続け、砂が巻き上がっている。
空までくすんで見えるようだ。
そしてミモリの服も巻き上がっている。
「ふざけてるよなそれ。」
「ち、違うんだって!」
ミモリは今までの旅の経験からどう進めばいいか分かったようだ。
「ミモリ流、知らない国の歩き方にどこでも通用するある作戦がある。その名も太い道を行けばでかい街あるでしょ作戦!」
「それ繋がってるかもですけど逆方向進む可能性もありますよね。」
「はあ…ここまでか。いい人生だった。」
「ちょっと!諦めが早い!」
しかしそれしか道標がないので太い道をそれっぽい方へ進む。
すると運がいいことに首都カゼタウンにたどり着いた。
「旅行許可証ってのを貰わないといけないんだけど、どこで貰うのか聞いてない!」
「街の人に聞いてみましょうか。」
ウィンドールは半数が人間族のため、なかなかビキカとヴァキアを見ると話してくれない。
「うーん、大陸渡ってもか…。これは思ってる以上に大変なのかもしれない。」
「あ、フェアリーがいますよ。私が聞いてきますね。」
街の真ん中の方に役所のような建物があるとわかった。
地味な薄灰色の建物だが、看板を見るとここで合っているみたいだ。
「あのー、旅行許可証をください。」
「はい、確認しますのでお名前を教えていただけますか?」
「ミモリです。」
パソコンのような役割をする機械でその人の情報が見れるようだ。
「えーと、冒険者、ピーニ王国王都出身。フェアリーと魔族を連れてる…?なるほど。では、こちらが旅行許可証です。お気をつけて旅を楽しんでください。」
「ありがとうございます。」
旅行許可証も手に入れたのでカゼタウンを観光することにした。
とりあえずいつも通り宿を探すが進んでも進んでも同じ景色に見えて全然見つからない。
「建物がどれも灰色の四角だからどれがどれだか分かんない。」
「風で建物もボロボロになるから立て直しやすい土で作ってるんだ。」
「あ、地図がありますよ。宿は右にあるそうです。」
宿の中は思ったよりは悪くない。
ただし少し狭い。
「このベッド一つで3人寝ろと?いやだね。床で寝る。」
「だめだよ!体痛めちゃうよ?」
「船の時みたいにくっついて寝ましょう。」
「やめろ、思い出させるな。」
水が少ない国なので風呂がないのが少し残念だったが食事はでる。
おかずは肉類が多かった。
「美味しい!何のお肉か分かんないけど。」
「こっちの謎のお肉も美味しいですよ。」
「それはキツネでそっちはヘビだ。…ってお前ら食べ尽くす気か!?」
本当に食べ尽くしてヴァキアが引いている。
そして、例に漏れずしばらく動けなくなる。
「食べすぎた…。」
「アステリアであんなに反省したじゃないですか。…うぷっ。」
「なんなのこの人たち。」
復活後、少しカードゲームをしてから寝る。
ミモリ、ヴァキア、ビキカの順で1つのベッドにぎゅうぎゅうに横になる。
「なんで私が真ん中なの。」
「ほら、小柄だから挟めそうだなって。」
「もっと詰めないと落ちてしまいます。詰めてください。」
「やめろ!挟むな!前後から当たってんだよ!むぐっ、肉に溺れるっ!」
翌朝、ミモリとビキカはなんか目覚めが良かったという。
ヴァキアの気を取り直して街を散策する。
服が欲しいとビキカが言うので服屋に入る。
この国の服は肩から垂らした布を帯で締めたようなものが主流らしい。
「ひらひらして軽くていいかも。一着持っとこ。」
「どうです?結構可愛いのではないでしょうか。」
「…もう防御面を考えないのには慣れた。」
食料品を買いにスーパーへ入る。
野菜や果物は全て輸入品で肉類はほとんどウィンドール産だ。
「ヘビ美味しかったですよ。ヘビ。」
「私はサソリかな。」
「うえ…っ。しかも大量に買ってる…。」
街も堪能したところでそろそろダンジョンを目指すことにした。
新しい大陸のダンジョンはもしかしたら凄い宝があるかもしれない。
「それにしても広い国だなぁ。ダンジョンに着くまでに1晩どこかの街で宿とらないと。」
「あ、ヘビいましたよ。」
「よく普通に触れるな!…食うなよ?」
「えー。」
旅行許可証を見せて街に入る。
強国なだけあって周辺の街もなかなか栄えている。
「でもベッドはなぜ1つなんだ。」
「ぺろっ。」
ヴァキアの精神がそろそろ持たないかもしれない。
幸い次の日にはダンジョンに着いた。
「ここもまだ攻略されてないみたいだね。」
「宝があると思っていないのかもしれませんね。」
だが、ミモリたちに恐れていた自体が起こる。
このダンジョンの内容はアスレチックだった。
パキイアを使ってようやく一般人並の体力のミモリとビキカではとても乗り越えられない。
「ヴァキアちゃん、お願い!」
「お願いします。」
「ふん。昨日も一昨日もあ、あんなことしておいて。随分と都合がいいですね。」
腕を組んで壁を見つめて拗ねるヴァキアを1時間ほどヨイショして、なんとか行ってくれることになった。
「でもダンジョンなんて私一人で行けるのか?」
アスレチックもかなり難易度が高い。
左右交互の傾いた足場を飛び移って進むやつ、回る足場を回さないように昇り降りするやつ、壁に手足でつっかえて衝撃に耐えるやつなどがあった。
「魔族の力ならなんとか越えられるけど、人間には厳しいだろうな。」
息も絶え絶えお宝部屋にたどり着いた。
今回も宝箱が真ん中に置いてある。
「はあ、はあ、お、これか?開けるか。」
中には小さな袋が入っていた。
「なんだこれ。ん、説明がついてる。なんでも収納出来る袋…。」
袋を奥底にしまってミモリたちの元へ戻る。
ミモリたちは街で買った肉を焼きながらカードゲームをしていた。
「おかえりー!お宝何だった?」
「…なんも無かったよ。」
「ええ!?そんなことあるの!?はずれかなぁ。」
「なんでも収納出来る袋とかあれば便利なんですけどね。」
「…私が持つからいいだろ。」
肉を食べて昼食を済ませ、近くの街でヴァキアを休ませる。
するとその街で盗賊が現れた。
「これは私たちの出番だね。」
「ええ。」
「おいそこの女!金をよこせ!」
まさかの可愛さが効かない。
過酷な環境で欲が無くなったのだろうか。
「拘束魔法、トース!」
「こんな魔法、避けちまえばいいのさ!」
「これは…。」
結局ヴァキアを起こした。
今回はついてないようだ。
魔族の爪でナイフを弾いて一撃を入れる。
「ふう。制圧完了。寝る。」
「ごめんね。今度好きなの買ってあげるから。」
「流石にもう少し戦えた方がいいのかもしれません。反省します…。」
なんだかんだ仲間として馴染んできたヴァキアだった。
もっと長文を書くと言ったな…あれは嘘だ。
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