表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

第4話 美少女と宗教国家アステリア

 ヴァルディア国を抜けて小国、アステリア公国に入る。

 アステリア公国の国境は豪華な塀で囲まれている。


「この塀は越えられそうにないね。」


「小国なりの防衛なのでしょう。」


 塀の周りを歩いて大きな門をくぐると、白い建物が並ぶ綺麗な街並みが見える。

 一見平和そうだが、ヴァルディア国の隣国であるため治安に少し不安がある。

 一応警戒しながら街を見て回っていると、教会があちこちに建っていることに気づいた。


「教会だ。何するところだろう。」


「アステリア公国は宗教で人が集まってできた国で、いわゆる宗教国家だそうです。」


「宗教かぁ。勧誘とかされたらどうしよう。でもそれならではの文化とかありそう!」


 教会から人が出てきて止められる。

 教会が施設の中で位が高く、警察の役割もしているのだろう。


「あの、外から来た人ですか?」


「はい。ピーニ王国から来た冒険者です。」


「アステリア公国では白い服を着てください。この国では白いものが一番良いとされています。」


 色に規定があるとは思っていなかったので驚いた。

 宗教上のルールは法律に等しいため従うしかない。


「ミモリさん…他に白い服はなかったのですか?」


「だって白はすぐに汚れちゃうし…。そっちだってその服しかないの?」


 ミモリは白タイツ、ビキカはバニーガールだ。

 少々目立っているがまあ良しとしよう。

 宗教のルールは他にもあり…。


「そこの人たち!この国では挨拶をしないと処罰の対象になるのよ!次からは気をつけなさい。」


「へえー。結構ルール厳しいのかなぁ。」


「そこの人!この時間は大聖堂の方を向かないといけないんだよ。」


「しまった。公衆トイレを見つめないといけなくなった。」


 慣れないルールに苦戦しながら歩いていると、宿を見つけた。

 部屋の中まで真っ白な宿は思いのほか安かった。


「はあー、大変だった…。」


「慣れませんね。疲れました。」


 だがミモリはずっと楽しみにしていたものがある。

 アステリアの食事は美味しいと世界各国から評判なのだ。


「お食事の準備が出来ました。」


「よし!待ってました!」


 どう調理したのか分からないが美味しそうな肉や魚が並んでいる。

 最後の食事がヴァルディアの木なのでどれもがご馳走に見えた。


「うんまあああ!あれも美味い!これも美味い!」


 ミモリが凄まじい勢いで食い尽くしている。

 ビキカはさすがに止めようかと迷ったが、1口目を運んだ瞬間に同じように食い尽くし始めた。


「美味しいですね。肉も魚も最高です。」


「でしょでしょ!これも美味しいから食べてみなよ!」


 本当に食い尽くしてしまった。

 久しぶりの満足な食事に元気になった心と胃もたれする体で2人は嬉しい悲鳴を上げていた。


「ここにずっと居たら太りそう…。」


「少し調子に乗りました。このまま寝ます。」


 翌朝、教会の鐘の音で目を覚ます。

 この国では起きる時間も決まっている。


「まだやっと日が出たとこだよ。」


「眠い…。」


「寝るな!寝たら捕まるぞ!」


 目を覚ますために朝食をたらふく済ませて街で買い物をする。

 アステリア公国の物価はかなり安い。

 ついつい買いすぎてしまう。


「これなんだろ。お土産に買お。」


「この野菜なんでしょう。買いましょう。」


 きっとこういう人たちが増えすぎたためのルールの厳しさなのだろう。

 カバンぱんぱんに買い物してしまった。


「そうだ。せっかくだからこの真っ白な街並み写真撮ろうよ。」


「そうですね。では、はい、チーズぅぅぅううう!?」


「ビ、ビキカー!」


 ビキカが教会の人に連れ去られてしまった。

 なにか違反したのだろうか。


「あなたは重大なことをしました。」


「な、なんですか?」


「写真の時、やっちゃダメなポーズとかあったのかな。」


「花を…踏みました…。」


 アステリアでは植物にも愛護法があるのだろうか。

 ミモリはそこまで重罪では無いだろうと財布を取り出す。


「罰はいくらですか?」


「死刑です。」


「死刑!?」


「それも、踏んだのがよりにもよって国の花、ステラリアを踏んでしまったので…。」


 このままではこの旅の目的、ビキカを活躍させてフェアリー差別を無くすという目標が達成できなくなる。

 ビキカは投獄されてからわずか1分、脱獄を決意した。


「こんなところで旅は終われません。ミモリさんが助けに来てくれることを信じます。」


 ミモリもビキカが刑務所に入れられてからわずか1分、脱獄させるのを決意した。


「早速助けに入るけど…白タイツ目立ちすぎるな!」


 一瞬でばれた。

 壁から降りようとしたところを情けなく捕まる。


「なにしてんの?」


「すいません。ごめんなさい。」


 仲良く同じ牢屋に入ることに。

 ミモリにはアステリアに来てからずっと違和感があった。


「おかしいなぁ。可愛さが通じない。」


「そりゃ通じませんよ。全身白タイツで。」


「それだ!」


 ミモリは白タイツを脱いだ。

 服はカバンに入っているため全裸である。

 バニーガールと変態は看守を誘惑し、ほかほか白タイツと引替えに鍵を手に入れて脱出する。


「早くこの街を出よう!」


「そうですね。捕まる前に出ましょう。」


 カバンを回収して無事に門の外へ。

 ミモリは服を着てからこの国のダンジョンを攻略しに向かうことに決めた。


「そういえばダンジョンってなんで行くんですか?」


「ダンジョンのお宝を手柄として渡そうと思って。物が1番わかりやすい手柄かなって。」


 国の規模は小さいのですぐに着くはずだったが、歩いていると例のごとく盗賊が現れた。


「おい!服と金を置いてけ!あと食べ物だ!···いやそのうさぎみたいな服は売れなさそうだからいいや。」


「あら、このうさぎみたいな服はこうやって使えるんですよ?」


 ビキカが抱きつくと想像以上に効果があった。

 盗賊はバニー衣装だけを奪って逃げていった。


「···私の体は別にいいのでしょうか。なんか傷つきますね。」


 今日はたまたまよく脱ぐ日だと思うことにした。

 ビキカが服を着るのを待ってダンジョンに入る。


「この壁の装飾、門にも掘ってあったね。」


「なにか意味があるのかも知れませんね。」


 1時間ほど歩いたが先に進める道がない。

 諦めかけた時にあることを思い出す。


「そういえばこの大きな文字の隣に花の絵がありました。私が踏んだあの花でしょうか。」


「確かにあった!それだよ!」


 早速ステラリアの花をそれっぽい台に置くと道が開けた。

 奥に進むと巨大な人の像がある。

 巨大な人の象は話しかけてきた。


「問題、アステリアでは白色を身につけないといけない。〇か✕か?。」


「これは〇でいいよね。」


「正解だ。」


 今回は謎解き系のダンジョンのようだ。


「問題、個人が1月1日から12月31日までの1年間に得た所得と、それにかかる所得税の額を計算し、税務署に申告・納税する手続きのことをなんという?」


「確定申告!」


「正解。」


「うわー、この世界にもあるんだ···。」


 3問目が最後の問題らしい。


「問題、朝は4本、昼は2本、夜は3本足の動物は、なーんだ。」


「なぞなぞ?」


「人間!」


「正解だ。ここを通そう。」


 石像の奥にはお宝部屋がある。

 なぜ今まで誰もこの試練を突破できなかったのだろうか。


「今度こそいいお宝頼むよー!」


「開けます。」


 宝箱の中には本が1冊入っていた。

 ページをめくると美味しそうな料理のレシピが書いてある。


「いや確かに美味しかったけど!」


「まあ、木よりはマシですよ。」


 ルールが厳しくて疲れるのでさっさとアステリア公国を出ることにした。


 王様にレシピ本を献上する姿を想像して冷や汗が止まらないミモリだった。

短い?ええ、短いですとも。


読んでくれてありがとうございました!

よければ評価、ブックマーク、感想もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ