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第2話 美少女もお金がほしい!

 旅を始めようと家から飛び出したが、ピーニ王国ではフェアリーへの差別がある。ビキカは暴言やいたずら、時には暴力を受けることもあった。旅先の街に立ち寄ると、ビキカへ異様な視線がささる。


「気にしないで。私といれば何もされないから。」


 今晩の宿屋を探そうと思ったらお金が無いことに気づいた。依頼を受けてお金を稼ぐ必要がある。街の冒険者ギルドに立ち寄る。戦闘が不得意なので採集の依頼を受けようとする。


「あなた、フェアリーなんて連れてるの?そんなの足手まといよ。」


 こんなことを言われることも少なくない。早いうちに王都から遠い差別の少ない郊外に行きたいが徒歩では一日に進める距離は限られている。


「初仕事、薬草採集に行こう!」


 すぐ近くにある森で薬草をとってくるだけの簡単な依頼。だがしかし、ミモリとビキカは野生動物すらも脅威になる。


「なんか鳴き声聞こえる…。」


「そうだ、あの、私少しなら魔法が使えまして…。」


 ビキカは偶然にも魔法の才能があったのか魔力を持っている。ただしフィヨド村には本がないため覚えられる魔法には限りがある。


「どんな魔法?」


「動きを止める魔法と喋れなくさせる魔法と服を脱がす魔法です。」


 動きを止める魔法は使えそうだ。野生動物に対抗する手段を見つけ、安心して薬草を採集する。すると予想通りクマがでた。


「拘束魔法、トース!」


 クマはピンク色の輪に足を拘束される。別の場所に移して採集を続ける。魔法の効果は思ったよりも強力だ。


「すごいじゃんビキカ!」


「えへへ、他にも出来ますよ。脱衣魔法、ヌヌエード!」


 ミモリの服が一瞬にしてビキカのもとへ飛んで行った。森の中で裸になってしまったミモリは手で隠しながら赤面して怒る。


「なんでそっちの魔法使うのよ!早く服!」


「すみません。嬉しくてつい…。」


 薬草の最終を終えて冒険者ギルドへ戻る。薬草を渡すと報酬のお金をミモリには手渡しで、ビキカには放り投げて渡された。


「これで宿屋行こ!」


 すっかり日が暮れてしまっている。宿屋に着いた頃には既に夜になっていた。宿屋のカウンターに行くと主人が嫌な顔をする。


「あー、困るんだよねぇ。ウチ、フェアリーはお断りしてるんだ。ほら、帰った帰った。」


 宿屋を追い出されてしまった。街を出て少し離れた平原にテントを立てて野宿することにした。ビキカは切り株に座って塞ぎ込んでいる。


「ビキカのせいじゃないよ。ほら、ご飯食べよ?私いいお肉買ったんだ。」


 元気の無いビキカがのそのそとご飯を食べ始める。そこに馬の走る音がする。ミモリは盗賊を警戒するが、それはピーニ王国の王子だった。


「女の子が二人でこんな所で何をしてるんだ。宿屋は?」


「フェアリーだからって断られちゃって。」


 王子はフェアリー差別のことをよく思っていない数少ない味方の1人だった。


「それはひどいな。この先に僕の領地がある。案内するよ。」


 王子の連れている馬に乗って王子の領地へ向かう。高身長で整った顔、剣も使えるらしい。王子はビキカの様子を伺いながら話しかける。


「いやー、草むらに可愛い子が2人もいたから声掛けちゃった。」


「でも本当にありがとうございます。」


 あのままでは盗賊に襲われる危険もあったため、本当に助かった。王子の領地ではフェアリー差別を禁止しているため、宿にも泊まれるだろう。


「ここですか?」


 街というよりは村に近いような街並み。しかし住民は明るく優しい。落ち込むビキカをみて果物などの甘いものをくれた。


「ベッドだー!」


 ミモリが勢いよくベッドにダイブする。ビキカもノソノソと布団に入る。今日はもう寝ることにした。

 翌日、ミモリとビキカは王子の元へお礼を言いに行った。


「あの、本当にお世話になりました。」


「昨日は寝れたかい?そうだ、この街は発展こそしていないが、鉱石が採れてね。お金が無いなら採ってきたら買い取ってあげるよ。」


 ミモリとビキカは鉱石が採れるという鉱山へと向かった。植物は生えておらず、石がゴロゴロとした岩山だった。


「あ!早速落ちてる!意外と簡単なのかも。」


 張り切ってつるはしを振り下ろす。しかし石がものすごく硬い。しばらく頑張ってみたが少しへこんだ程度だった。


「だめかあ。ビキカどう?」


「このっ!バカにしやがって!フェアリーが何したって言うんだよ!」


 ビキカは岩に怒りをぶつけている。ビキカが思い切り振り下ろした時、岩が真っ二つに割れた。その岩の中に金色に光る鉱石が入っていた。


「あ!それって、高く売れるやつじゃない?」


「やった…。」


 ビキカが初めて笑ったような気がした。街に戻って鉱石の功績をお金に変換してもらうと、やはり金色の石は高く売れた。


「これでしばらく旅ができる!」


 この街はいい所ではあるが、ミモリはフェアリーの差別を無くすべく、ビキカと活躍を残すという目的があるため、この街を離れることにした。


「ありがとうございましたー!」


 ミモリたちは次の大きな街へと向かった。依頼を定期的に受けないと冒険者として認められないからだ。しばらく道なりに歩いていると、盗賊が現れた。


「おい!着ているものと金を置いていけ!」


「脱衣魔法、ヌヌエード!」


「俺のじゃねえ!」


 草原に裸のおっさんを置いていく。大きな街が見えてきた。建物が沢山あるのが見える。


「おおー、すごい街だね。」


「でも人が多そうです。大丈夫でしょうか。」


「ここは王都からも離れてるし大丈夫だよ。」


 フェアリーも少ないが普通に歩いている。今晩の宿も確保し、街の冒険者ギルドに行く。採集の依頼は今日はないようだ。


「ええ!今日依頼受けないといけないのに!」


 もうダンジョン攻略しか残っていない。なるべく安全なダンジョンを選ぶ。戦闘は避けられないのでどうしようか迷う。


「私戦えないのに…。」


「私の魔法も動きを止めるだけですね。」


「こうなったら…。」


 ミモリの武器、めっちゃ可愛いを使うことにした。動きを魔法で止めて魔物の前後から身体を押付けて上目遣い。まさかの勝利。


「魔物にも可愛いって概念あるんだ。」


 盗賊やゴブリンに特に有効的で、どんどんダンジョンの奥へと進む。最後の階層で恐れていた事態が起こる。


「さすがにゴーレムには効かないよねぇ。」


「き、来ますよ!どうしますか!」


「わあああ!」


 ゴーレムは大きな腕をふりまわし、ミモリとビキカを角に追い詰めた。

 ミモリとビキカは必死に命乞いをする。


「お願い!食べないでー!」


 ゴーレムは思いっきり腕を振り下ろす。ミモリはゆっくり目を開け、後ろを見ると盗賊がやられていた。


「カワイイ…スキ…マモル…。」


「あ、ありがと…。」


 そして無事に可愛いだけで宝を手に入れた。冒険者ギルドに戻って手続きを終わらせる。フェアリーがダンジョンに行って生きて帰ってきたので驚いていた。


「これでよしっと、さあ、街で遊ぼう!」


「遊ぶ…?よく分からないです。」


 ミモリがビキカを案内するが、ミモリも仕事から解放されて遊ぶのは久しぶりだった。ミモリはカジノへ入る。


「何やる?ビンゴ?スロット?ポーカー?」


 ミモリは全部やる事にした。まずはビンゴからやる。ビンゴは9リーチしたが外れた。


「これで揃ってないの?おかしいでしょこれ!」


 次にポーカー。2ペアを変えて全てバラバラになった。ギャンブルは向いていないのかもしれない。


「まだスロットがあるもんね。」


 揃う訳もなく終了。遊ぶお金が無くなって少しションボリしていると、ビキカが大量のお金を持って帰ってきた。ビキカはポーカーで大勝ちしている。


「楽しいところですねここ。」


「ちっ、お嬢ちゃん強すぎるよ。」


 ビキカの稼いだお金でショッピングをする。まずは服屋にいった。ビキカが遠慮するのでお互いの服を選ぶ、という企画をやったらビキカはフリフリなドレスを選んできた。


「ほお。なかなか挑戦的だねぇ。まだ美少女で助かったけど…。」


 ミモリは異世界にピッタリな女勇者のような服を選んだ。カッコ良さと可愛さがあっていい感じだ。服を買って次にカフェに入る。


「この世界にもカフェとかあるんだなぁ。」


「甘いもの…!」


 ケーキとカフェオレを楽しむ。ケーキは元の世界には無い材料をこの世界のもので補われているようなつくりで、よりミルク感が強く、果物は酸味が強い。


「この世界のケーキも美味しいなぁ。」


「この世界、とは?」


「あれ言ってなかったか。」


 ミモリはビキカに転生前のことと転生する時のことを話した。ビキカはミモリにも辛い過去があることを知って親近感が湧いた。


「まあ私も真面目では無かったけどね。」


 カフェを出ると日が沈む様子が見える。遠くに霞んで王都と城が見える。坂の上からの景色は絶景だった。ミモリは少し感動した。


「そろそろ宿に行こうか。」


 大きな街なだけあって宿も豪華だった。食事はバイキング形式で肉も魚も麺もある。


「こ、これ食べちゃっていいの?」


「遠慮せずに食べちゃえ!」


 この宿にはなんと風呂も付いている。いつも汲んだ地下水で体を洗っていたが、今日は綺麗なお湯で体を洗うことが出来る。


「はぁ…気持ちいですね。」


「私のよりデカイ…。」


 異世界も楽では無いが、厳しさの中に少しの楽しみを見つけて幸せを噛み締めながら眠りについたのであった。

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