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第1話 美少女で異世界に行きます

 午前0時。今日も夜遅くまで作業をしていた。ようやく仕事が終わり、帰る支度をする。店も既に閉まっていて街は暗闇に包まれている。

 ミモリはかなり疲労が溜まっており、足がおぼつかない。ぼーっと何も考えずにとりあえず足を前に出すことだけを考える。


「はあ…疲れた…。」


 その時、信号は赤だったがミモリは下を見ていたため気づかなかった。そこへ夜中でも運搬する大型トラックが突っ込んでいく。暗闇で歩道がよく見えなかったのだろう。


「ん…?なんかある?」


 ミモリはトラックに跳ねられた。そして、意識は暗闇の底へと沈んでいく。運転手が駆け寄った時にはもう暗闇へと向かっていた。

 ミモリは痛みを感じていたが、やがてふわふわとした浮いているような感覚がする。


「私…トラックに跳ねられて…。」



 闇の底を突き抜け、目を開けるとそこは光の中の世界が広がっている。想像でしかなかった天使たちがそこにはいる。

 ミモリは困惑し、しばらく見渡したあと、天使に話しかけた。


「あの、ここは?」


「ここは天国です。もしよければ私が転生のお手伝いをしましょうか。」


 ミモリは天使の誘いにのることにした。天使は書類を取り出して転生先の世界の説明をする。魔法が使えることと王国に生まれることがわかった。

 ミモリは異世界転生へのワクワク感を感じていた。仕事から開放されるというだけでミモリの中では満たされていた。


「転生する際に、一つだけ何でも願いを叶えられます。」


「それなら…。」


 ミモリは天使の目を見てはっきりと言った。

 ミモリは気持ちが高ぶって仕方がない。


「私を、美少女にして下さい!」


「出来ますけど、本当にそれでいいのですか?」


「はい!」


 天使は彼女の願いを了承し、転生するための最後の書類を取り出してサインを書くよう促す。ミモリは勢いよくそこに名前を書いた。


「それでは、あなたの次回の人生に幸あらんことを。」



 ミモリの視界が真っ白になり、意識を失う。次に目を覚ましたのは白色のふかふかのベッドの上だった。見渡すと木造の家の中だ。ここが自分の家だと認識した。


「すごい!本当に異世界に来たんだ!」


 机の上に置いてあるメモに『 2時間後、王様の元へ』と書いてある。王様からの呼び出しがかかっているようだ。外へ出て城へと向かう。

 日本とは大きく異なる景色にミモリは感動していた。


「あの店はなんだろう。あとで寄ってみようかな。」


 城まで辿り着くと、門番に停められた。

 ミモリは先を急ぎたい。


「ねえ!通してよ!」


 腕を引っ張ってねだると、なぜか門番が道を開けてくれた。その後も止められてもねだると皆通してくれる。

 ミモリは自分になにかあるのかと不思議に思った。


「もしかして…。」


 窓の反射で自分の姿を見ると、とてつもなく可愛い美少女が写る。

 自分の姿だと信じられず、驚きを隠せない。


「願いが叶ってる!やったあ!」


 時間が迫ってきたので王様の元へ向かう。王室に入ると、すでに何人かの人が集まっている。ミモリが最後だったようで、王様が話し始めた。


「えー、転生して間もなく申し訳ないが、お前たちには冒険者になってもらう。」


「え!冒険!」


 王様からお金をもらった。王様によると、今いる国、ピーニ王国の隣の国、フリージュ共和国との戦いに有利になるような情報を集めて欲しいそうだ。報酬は情報を提供した人の仲間全員にでるという。

 ミモリはさっそくの活躍のチャンスに胸を踊らせた。


「よし!異世界らしくなってきた!」


 外へいきなり飛び出したらまた死ぬだけなので、街を見て回ることにした。食料品の店に入る。

 見たことの無い野菜や肉を見て、食べたくなって買ってみた。


「あれ、なんか安くないですか?」


「あんたは可愛いからオマケしちゃうよ!」


 まさかの能力「めっちゃ可愛い」が結構便利だ。その後も防具や武器を買う時もオマケしてもらった。

 可愛いとたくさん言われて気分はいい。


「可愛いっていいねぇ。」


 街には長い耳と透明な羽が特徴的なフェアリーと、紫色の角としっぽが特徴的な魔族がいる。元の世界ではもちろん居なかったのでまじまじと見つめてしまう。


「おお!これが別の種族!」


 しかし、格好が明らかに人間だけいい格好をしている。フェアリーの中では腕を欠損していたりする者もいる。

 ミモリはなんだか不穏な空気を感じた。


「もしかして、種族差別とかあるのかな。」


 買いたいものは買ったので家に戻る。買ってきた野菜や肉を鍋にして食べる。

 ミモリは今後の計画について考えていた。


「装備も買ったし、旅立ってみようかな。」


 冒険に備えて早く寝る。

 心臓は高鳴っていた。


「異世界転生らしいなぁ。いやー、楽しみだなぁ。」


 翌朝、元気よく街を飛び出す。外は平原が広がっており、遠くに山や森、湖も見える。

 ミモリは見えるところ全て行き尽くしたいと思った。


「とりあえずまっすぐ進んでみよう!」



 1日かけてまっすぐ歩くと、村らしきものが見える。近づくと看板には『フィヨド村』と書かれている。家は木造だがボロボロで家のあちこちに大きな穴が空いている。

 もう夜だったため泊まらせてもらおうと思った。


「誰かいないのかな。」


 影から1人のフェアリーがやって来た。ミモリにとても怯えているようだ。

 ミモリは異世界で初めてのフェアリーとの交流にテンションを上げていたが、怯えているので刺激をしないように気をつける。


「あの…今度はなにを…?」


「今度?私初めて来たよ?そうだ!今晩泊まらせてもらえないかな?」


「わかりました。こちらへどうぞ。」


 通されたのはボロボロの家の中でもいちばん綺麗な家。藁が積まれたところは寝床だろうか。

 歩き疲れたのもあって今日はもう寝ることにした。


「なんでこの村こんなにボロボロなんだろう。それにすごく怯えてた。」


 翌朝、眩しさと騒がしさで目が覚めた。何故か外に引っ張り出されていて、柱に括り付けられている。

 突然の出来事にミモリは焦った。


「どういう状況!?落ち着いて!」


 ミモリの頭の中でボロボロの家と怯えた様子が繋がった。この村のフェアリーは王都で人間族から差別やいじめを受けてきたのだろう。

 ミモリは自分が危害を加えないことを証明する方法を考える。


「私は違うわ!冒険者として来たのよ!あと…ほら!こんなに可愛いでしょ!殺したら可哀想よ!」


 フェアリーが集まって話し合っている。ミモリの持ち物の中から冒険者カードが見つかり、可愛さもあってなんとか許して貰えた。

 一息ついて、フェアリーと話す。


「そうだ!私がこの村を発展させるわ!」


「無理ですよ。フェアリーは学ばせて貰えないので建築も経済も分からないのです。」


 ミモリも何も分からないので村の発展は難しいようだ。せめて人間族からの脅威を取り除いてあげたいが。

 ミモリはフェアリーたちを見てあることを思いついた。


「フェアリーって可愛い子多いのねぇ。そうだ!可愛さで許してもらおう!」


「へ?どういうことです?」


 ミモリはフェアリーたちの体を洗い、街から買ってきた可愛い綺麗な服を着せた。一気に空間が華やかになり、アイドルグループのようだ。

 ミモリは可愛い子に囲まれてドキドキしてしまっている。


「よし!これで可愛くおねだりすれば人間なんてちょろいものよ!」


 しばらくすると、外で馬を走らせる音が聞こえる。フェアリーを襲撃しにきた王都の人間だ。

 ミモリは自信満々に言い放つ。


「大丈夫!可愛さ用意!発射!」


「おねがぁい♡許して?こんなに可愛いのに襲ったら可哀想でしょ?」


「うぐっ、フェアリーってこんなに可愛かったのか!」


「私からもおねがぁい♡」


「ぐわあああっ!」


 人間を一人につき5人で囲んで密着する。動きを封じると同時に顔を見て貰い、体温を感じさせて興奮させる。可愛さで見事人間を撃退することが出来た。

 ミモリは人助けができて嬉しかった。


「これでこの村は大丈夫だね。」


「ありがとうございます!」


 今度来た人間には村の家を建築させよう。もう一晩だけ泊まって、村を出発することにした。村を出る際に最初に話をしたフェアリーが駆け寄ってきた。

 なにか忘れ物でもしたか不安になったがそうでは無いらしい。


「あの!私も連れて行ってはくれませんか!」


「…お、おねがぁい♡」


 このお願いはあまりにも可愛いすぎる。断ることは出来なかった。

 しかし、フェアリーにとってはこの旅は過酷になることをミモリは想像していた。差別は無くなった訳では無いからだ。


「過酷だと思うけど、いいの?」


「はい!あなたと居ればいいことが起こる気がするので。」


「あなた、名前は?」


「ビキカといいます!」


 ビキカをパーティーとして連れるには国に申請しなければならない。つまり、ビキカを王都へ連れていく訳だが、差別の激しい王都では簡単ではないだろう。フード付きのマントを被せて王都へ入る。

 怯えるビキカを励ましながら歩く。


「ここが冒険者の役所かな。」


 役所へ入り、書類を書いて申請書を提出する。ビキカがフェアリーであることを隠してはいけないため、正直に書く。役員はビキカを睨みつけて言った。


「フェアリーとパーティー組むなんて正気ですか?もっといい仲間紹介しますよ。」


「そんな奴より俺とパーティー組もうぜ。悪いことは言わねえから。」


 ミモリの可愛さに変な男も寄ってきた。ミモリの仲間は可愛いフェアリーがいいのだ。申請はフェアリーや魔族でも断ることは出来ないため、無理やり押し通す。


「私はこの子がいいの!ほら、こんなに可愛いし!」


 そう言って外へでる。1度自宅に帰る。ビキカを自宅においてミモリはビキカの装備を買って帰り、冒険の準備を整えた。

 ミモリは活躍するまでこの王都には戻らないという決心をした。


「ビキカ!行こう!」


 めっちゃ可愛い少女二人が今日、世界へ1歩踏み出した。

ちょっと王道すぎるか…?

読んでくれてありがとうございました!

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