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3.ルール説明

 さて、不測の事態が重なりながらも始まってしまったデスゲーム。参加者4人は全員すでに泥酔状態(泥酔ゲーム?)


 しかし、私はめげたりしません。むしろここからどう恐怖を演出するか、それがハイパーデスゲームクリエイターたる私の腕の見せ所なのです!…そう、そんな溌剌たるモチベーションを持ってゲームマスターとして挑んでいたのでした__ここまでは。まだ。


 時にみなさんはデスゲームのクオリティを左右する芯の部分はなんだと思いますか?


残酷な処刑方法?


プレイヤー同士の裏切り?


それとも大御所声優を起用した可愛らしいマスコット?


__ノンノンノン。そんな直接的な要素じゃぁありません。


 その答えは__“ルール”。


 どんなに予算をはたいても、ルールが無ければただの野蛮な殴り合いにしかなりません。そんなもの年末の特番にでも任せておきゃいいのです。

 デスゲームがデスゲームたる所以は何より参加者同士だけでなく主催者__ゲームマスターとの駆け引きが介在していること。


 生かすも殺すもルールに則り厳正にとり行うことで場に緊張感やら臨場感やらが生まれるというもの。

 そしてこの《ルール説明パート》こそが作品の支柱となるのです。


私『…みなさん、静粛に。静粛に!!!』


海野「ほぇ?あんた誰?」


私『さっき名乗ったでしょうが!…こほん。まあいいでしょう、改めまして。私は“ミスターX”。これよりあなた方には命を賭けたゲームをしてもらいます。』


海野「はえ〜。」


私『……。』


 弛緩し切った空気。焦点の合わない四人の目線。仕方ありません、この場にいるのはただの酔っ払い四人ですもの。

 しかし私にはこれまで数多くのデスゲームを手掛けてきたプロフェッショナル。当然こんな自分の置かれていれる状況を把握できない参加者の相手もこなしてきたのです。むしろ油断しているからこそ場の空気を一気に掌握する手段があるというもの。例えばこのように__


私『__海野物郎さん。35歳。転生者。金欠になるとカブトムシやザリガニを捕え近所の子供たちにお菓子と交換してもらっている。』


海野「…!?なんで俺のことを…!?」


 ちょっとしたプロフィールを開示すること。個人情報を握られていることを知らしめることでその余裕を奪い去ることができるのです。

 ちなみに今回のデスゲームはライブ配信されているのですがこういったパートがあると参加者紹介も兼ねることができるので助かります。


私『__十文小吉さん。35歳。転生者。複数のマッチングアプリでブラックリストに入れられている。』


海野「なにっ!?」


私『__根鎌源治さん。35歳。転生者。実は“大型免許”と“危険物取扱免許”を持っている。』


海野「えっ!?」


私『__佐渡一さん。35歳。転生者。最近すね毛を永久脱毛したらしい。』


海野「くっ…!!」


私『ククク………………。』


__なんで海野(コイツ)しか反応してねえんだよ!!!


 咄嗟に出かかった叫びをぐっと飲み込みます。つーか、コイツはコイツでなんで呼ばれてねえのに律儀にリアクションしてんだよ!!


……いけない、いけない。思い出しただけでつい取り乱してしまう。その時の私は頭を無理矢理にクールダウンさせてルール説明の進行を再開させようとしました。


私『はい。あなた方のことは全て調べさせていただきました。方々で騒ぎを起こしては成功者の足を引っ張り続ける疫病神的転生者集団、そんなあなた達に裁きの鉄槌を__ちょっと!聞いてますか!?そこの三人!!』


根鎌「うぃ〜聞いてるよい(グビッ)。」


 外見だけ金髪美少女の根鎌はどこかから持ち出していた焼酎の一升瓶で他二人と再び飲み交わしていました。


海野「あ!ズルい!俺も俺も!」


根鎌「しょうがねえなぁ、グラスないからお前キャップな。」


 そのまま海野も加わり、四人で酒盛りをおっ始めました。


私『__ってオイ!!』


四人「へ?」


私『おかしいでしょうが!!あんたら自分が置かれてる状況分かってんの!?』


十文「…あんた誰?」


私『だーかーらぁ!!!えっくす!!ゲームマスターのミスターXです!!!これ3回目ですよ!!』


十文「つわれても、なんかその“エックス”って名前ありきたりすぎてなぁ。覚えてらんねえんだよ。ロッ◯マンかよ。」


佐渡「もういっそのこと“松・竹・梅”とか“甲・乙・丙”とかにしろ。」


根鎌「ヘイ!ミスター丙!」


__コイツらぁ…!!!


 あろうことか私の名前にまでケチをつけてくる始末。なにがいけないんでしょうか。かっこいいでしょうが“X”。

 ははん、さてはコイツら数学とかの偏差値低いですね?


 ですがいつまでもバカに構ってる暇はありません。

 この一部始終は配信中。無駄にできる時間などないのです。バカどものやり取りは一切無視して私は進行を再開します。


私『__えー、皆さん。自分たちの首元に注目ください。』


海野「うおっ!そういえばなんだこれ!?」


佐渡「くっ…どうりで飲みにくいと思った…!」


 四人がそれぞれ自分の首につけられた大きな首輪の存在に気がつきました(つーか自分で気付けそんなもん!)。


私『あなた方が寝ている間に付けさせていただきました。悪戯に触らないことをおすすめしますよ。__それは“爆弾”となっておりますので。』


四人「なにーっ!!」


__ナイスリアクション!


 そう、この《爆弾》こそがこのゲームの目玉!

 ただでさえ爆薬・火薬の類がバカ高いこの世界で予算の多くを割いた特注の首輪型爆弾四つ。

 デスゲームにおいてプレイヤーに枷を施すのは基本テクです。さらにそこに死に直結する要素を織り込むことでスリル倍増!正常な判断力を失ったプレイヤーは互いを陥れ始め撮れ高マシマシ!視聴者も増え世はまさに大デスゲーム時代へ__と、なるはずだったんですけどね。


根鎌「あれ?これほんとに爆弾か?よく見るとこの首輪俺の私物じゃね?」


__なわけねーだろ!!


十文「最近寒かったしなぁ。セ◯ストあたりでこんなの買った気がする。…くそ、記憶あやふやで思い出せねーや。」


__売っててたまるかそんなもん!!


 こんな感じですぐ緩んだ空気が舞い戻ってまいりました。

 もうなんなんでしょうこいつら。デスゲームとか知らないんじゃないでしょうか?だからこんな飲み込みが悪いというか。どこの世界でも一定数そういう映画なりなんなりがあると思うんですけどね。


__ここはよもや“あの手”を使うしか…いや、しかし。


 私は“最終手段”に思い至りかけすぐさま頭を冷やしました。それはこの状況においてはリスクが高すぎる行為です。


海野「へへ、これ酒かければ外れるんじゃね?」


佐渡「フン、その必要はない。これに流れる磁気が血行を改善し肩凝りを解す効果があるとかないとか__」


 とは言えこのままでは空気が弛緩するばかり__かくなる上は。


私『……13回です。』


十文「え、何?」


私『あなたのようなおバカさんを__』


海野「ああ、今日シコった回数?」


私『……。』


海野「あれ?静かになっちゃった。」


十文「お前さぁ……今のは酷いよ。進行役の人黙っちゃったじゃん。なんかカッコ良さげなこと言おうとしてたよ?」


 …信じられますかこの男。ちなみに私は『あなたのようなおバカさんを葬ってきた回数』と言おうとしていました。


佐渡「…ククッ、13回。」


根鎌「中学生じゃん…。」


海野「中学生て__」


__ボン!!!


 瞬間、会場に鳴り響く重い轟音。海野の首から上は爆煙に包まれました。


他の三人「ぎゃああああ!!」


 はい、我慢の限界だったのです。これが最終手段、“ルール説明でチュートリアル的に一人殺める”です。

 参加者の命と引き換えに場の空気を恐怖と狂気に塗り替える大技。…ぶっちゃけ、こんな四人だけのデスゲームで使いたくはなかった。ですが、効果はテキメンのようです。酔っ払いどもの顔色がみるみる変わっていきます。


根鎌「海野ーッ!」


十文「嘘…だろ…?」


佐渡「なんということだ…。」


 三人共すっかり酔いが覚めたようでした。茫然自失の様子で海野を見つめていました。


私『ククク…愚かな。しかし、これでようやくあなたたちも現実を思い知ることが__』


海野「チクショー!また美容室予約しなきゃ!!」


 爆煙の中から現れたのは顔が焦げ、髪がモジャモジャになった海野でした。


私『…??…??……?????』

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