夏10:おじゃま虫ども
わたしが通う西吾妻高校では、二年生から"文系コース"、"理系コース"、そして"文理コース"のいずれかを選んで進むことになっている。
最初の二つはその名の通り、それぞれ文系中心か理系中心のカリキュラムが組まれるのだけれど、三つ目の"文理コース"は先の二つのコースで学ぶ内容を合わせたようなものになっていて、さまざまな科目を網羅的に学べるぶん、それに比例してこのコースを選択した生徒にはハードな学習量が求められることになる。
その前準備として、わたしのように文理コース選択を希望する生徒は、この夏季休暇で学校で開催される特別講習への参加が義務付けられていた。
特別講習の内容は普段の授業とそう変わらない。午前中に四コマ、一コマ五十分の講習を受けて、それが日曜日以外の週六日。お盆休み以外は部活の大会に参加するのでもなければ毎日学校に行くことになる。
こうして夏休みに入ってから毎日特別講習に参加しているわたしだったけれど、今日は学校見学会ということで、さっきからわたしたちが特別講習を受けている教室の横を、大勢の中学生たちが通りながら中の様子を眺めていっているのが見えた。
教室では物理の雨宮先生が教壇に立って、自由落下運動の公式について解説している。この時期はいつもクールビズで、ワイシャツ姿に上のボタンを一つ外している雨宮先生だけれど、今日は外からのお客さんが来るとだけあって、シャツのボタンを閉めてネクタイをつけていた。
最初は外からこちら側を眺めてくる人々の存在に気を取られていたわたしだったけれど、そのうち中学生がやってくるのに慣れると、視線も気にせずに集中して先生の講義に耳を傾けてノートに解説の内容を書き込んでいた。
……そう。そのはずだったのだけど、ある集団が来た時、わたしの集中は途切れてしまった。
少し教室の外が物音がして、わたしは思わず窓に目をやった。
するとそこには中学生の一団と、その先頭にはわたしと同じ西吾妻高生のなっちゃんと央士くん──なんでも部のふたりと、中学校の制服を着た女の子がいた。
顔馴染みの二人と、馴染みのない女の子の三人はごそごそと何か話をしていたり、なぜかなっちゃんと女の子の間で、央士くんの腕を引っ張りあったりして、じゃれているのか揉めているのかなんだか判らない感じになっていた。
「君たち、どっか行ってくれないかな。邪魔」
外で小さい騒ぎを起こしていた三人に、教室にいる雨宮先生が冷たい口調でぴしゃりと言った。
すると先生に叱られた三人はしゅんと小さくなって、そのまますごすごとその場から去っていってしまった。
教室にいるみんなはその光景を見てくすくすと笑っていたけれど、唯一、なっちゃんと央士くんの共通の知り合いである、わたしと同じ文理コース希望の蓮雅臣くんだけは、呆れて赤面しながら顔に手を当てて俯いているようだった。




