夏4:いわゆる大きなお世話
「……ふたりとも、よく来るよね。わたしなんかの所に」
話は戻って花火大会の日。凛音は自分の部屋のベランダでコーラの入ったグラスを手に持って、空に打ち上がる色とりどりの花火を見上げながらそばにいるおれたちに言った。おれと夏希が横に並んで、凛音は夏希の隣に立っている。
「わざわざわたしにちょっかいをかけに来るくらいなら、ふたりで市街まで遊びに行ってくれば良かったのに」
凛音はグラスを持っていない片方の手をベランダの柵の上に置くと、手首から先をだらんと下ろした。
「そりゃあアタシだってそうしようとしましたよ」
夏希がコーラのなくなったグラスを揺らすと、半分溶けかかった氷がカランと鳴った。
「凛さん以外にも知り合いは大勢いるし、学校中の男子からデートのお誘いを山ほど頂いてるんだからね。でも、央士が凛さんのところへ行くってきかなかったからさ」
そう言って、夏希はおれのほうを見た。それと同時に、凛音も見上げていた花火からおれへと顔を向けた。
「……凛音をひとりぼっちにしたくなかったんだ」
おれは手に持っているグラスの中に視線を落とした。
「今度のコトでみんなが凛音を責めた。先生もだし、あの日のウワサが広がってみんなあるコトないコト言い合って、凛音を冷たい目で見てる。それは当然のバツだと思う。凛音が不知火くんや胡桃に迷惑かけて、傷つけたのは本当のコトだから。悪いコトしたら、ちゃんと痛い目に遭うべきだって思うから」
おれはそこまで言うと、小さくすう、と息を吸った。
「でも、悪いコトしたヤツでも、ひとりくらいかばうヤツがいたっていいと思う」
あれは顔を上げてグラスの中から、もう一度空に打ち上がる花火を見上げた。
「先生や同級生、先輩たちまで、学校にいる人たち全員が凛音のコトを責めているなかで、近くにいるおれたちもわざわざそんな同じコトをするのに、イミなんてないと思うから」
もしかしたらそう思うのは、あの文化祭の日の終わりに凛音とふたりきりの教室で踊りながら、おれの胸のなかで泣いている凛音を目の当たりにしたからなんだろう。
せめてこの姿を知っているおれだけは、凛音のコトを守ろうって、そう思ったからかもしれない……
「物好きな人」
凛音はそう呟くと、ベランダの柵にもたれかかった。
「突然だけど、あなたたち、明日学校に行くんだよね」
「え? ……うん、そうだけど」
本当に突然話題を変えた凛音に、おれは少し戸惑いながら返事をした。
七月の終わりに入って、もう学校は夏休みになっている。だけど部活のために学校にくる生徒は大勢いるし、平日はほぼ毎日、夏期講習っていう希望者が参加できる授業が開かれる。まあ、おれは絶対参加しないけどさ……
とまあ夏期講習の話は置いておいて、夏休み中に行われる行事として、明日は体験入学会が開催される。これは来年高校入試を受ける中学生がどこの学校に進学するか参考にするために、学校のなかを見学できるというイベントだ。
そしてそのイベントにおれと夏希は生徒会に頼まれて手伝いに駆り出されるコトになっていた。凛音は……来ないというか、文化祭での一件が原因で来れないコトになっていたはずだけど。
「わたしは夏期講習に出るために明日学校に行くんだけど、明日二人が来るなら、紹介したい人がいるの」
凛音はそう言って、おれと夏希の顔を見た。
「なんでも部でわたしの後釜になってくれる人を見つけたの」




