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異世界スピノ ~恐竜に生まれ変わった私はスローライフを希望する~  作者: SIS
闇の獣

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第67話 スピノ、北へ


 今更確認するまでもないが、私は唯の異世界転生スピノサウルスである。


 当然、聖剣に選ばれた勇者でもないし、神様にチートスキルを与えられた訳でもない。いや、スピノサウルスの肉体というチートは貰ったが。


 さらに言えば前世はどちらかというと平均より下のサラリーマンであり、血生臭い事とも縁が遠く、さらにいえば争い事というか過激な事は苦手で、どちらかというと何かあれば真っ先に犠牲になるタイプの弱者男性であった。


 そんな私に、世界を救え? 悪い冗談にも程がある。


 しかしながら、サルッカスはそんな冗談を言う男ではない。それに、世界がどうこう、というなら、オルタレーネの平穏にもかかわる事だ。その彼女を巻き込むつもり、というのは聊か穏やかではないが、どういう話なのか聞いてみないと判断はできない。


 どういう事なのか。思う事はあるが、大人しく話を最後まで聞いてみる事にしよう。


『ほっ。話を聞いてくれる気になったみたいっすね。じゃあ、順を追って説明していきますね。まずは、この街を襲った飛竜や、こないだ戦った花野郎の事まで話は遡るんですが……』


 はぁ。


 ふむふむ、なるほど。


 ……ふむ。


「グルルル」


 納得した。


 えーと、つまり、前々からちょこちょこ話題に出てた禁則地とやらの封印が解けてて、このまま放っておくと怪獣大行進みたいな事になって世界が滅ぶ、と。で、それをどうにかする為に、境界剣というのを探しに行く必要があるのと、現時点でそれを手にする権利を持っている可能性があるのが、オルタレーネ唯一人しかいない、と。


 事態は急を要するが、境界剣の場所はだいたい分かっており、神獣勢力も魔獣勢力も所在を把握していない場所だったから、そこに取りに行くのに危険は恐らくない。ただ現地のセキュリティがどうなっているのか分からないのと、大規模な調査隊を出して目敏い魔獣に感知されるのは避けたいから、少人数で行動せざるを得ない以上オルタレーネと私についてきてほしい。


 んでもって境界剣を手に入れた後は慎重に検証を重ねた上で、どうしても、という場合にのみオルタレーネにご足労願う事になるけど、極力他の資格者の選出も行う。どちらの場合でも世界全体の危機だから、連絡が取れる限りの国家から護衛が抽出されるし、在野の神獣も協力は惜しまない。


 そういう話らしい。


 なるほど。


 RPGゲームみたいに魔王を倒してくれとかじゃなくて、要はキーアイテムを回収してきて、緩んだ蓋を閉めなおしてくれ、という奴か。所謂、お使いクエストという訳ね。


 ふーむ。


 話を聞く限り、危険な事を強いられる訳ではなさそうだ。私を説得する為にそのあたりはキチンと抑えてきたのだろうが、概ね大きな矛盾点や問題点は見当たらない。


 私が理解を示す方向で反応を返したからだろう、サルッカスは我が意を得たり、といった感じで注釈を重ねてくる。


『オルタレーネのお嬢ちゃんにご足労願いたいのは、なんていうか、境界剣を手にする資格を持つのは神か、神の代理人である神獣に認められた巫女だけだからなんすよ。スピノの旦那が正式な神獣じゃないのはわかってますし、オルタレーネ嬢ちゃんもそういうつもりで旦那の所にいる訳じゃないのは分かってるんですが、現状俺達神獣は俗世と距離を置いてきたし、俺っちもちっせえのと特段仲良くしてる訳じゃないんで、条件を満たせそうなのが一人もいないんすわ。一応、今回の件で地元の民族と関係を持ってる奴らから侍従を選ぼう、という話はあるんですが、必要によって繋がれた関係が、神代のそれと同じような密接な関係かというと、ちょっとね』


 まあ、確かに。それって単なる契約関係だよな、世界を救うっていう約束での。全部が全部そうとは言わないが、信仰と一緒で必要に駆られた信頼ってのは、ちょっと倫理的に首を傾げる所はある。神様がそういうのをヨシとするか、となると、なおさらだ。


 信仰が神様への捧げものなら、そこに不純物が混じる訳だからな。その点では、オルタレーネの気持ちを疑うのは今更、という話だ。


 とはいえやってみなければ分からない、と考えているのは評価できる。


 関わったが最後、強制的に一蓮托生最後まで、という訳でもないらしいし、逆に言えば私達が駄目でもサブプランは用意しているという事だ。文字通り世界の命運を背負わされたのに資格が元々ありませんでした、お前たちのせいだー、なんていう無責任コンボをやらかすつもりはない、というのはちょっと安心要素といえる。


 ううむ。しかしそうやって話を聞けば聞くほど、私達しかいないし断り辛い感じになっていくな。肝心のオルタレーネはどう思っているんだろう。


 先ほどから背中にのったまま話を黙っている彼女に目を向けてみる、すると。


「(目がキラキラしている)」


「グル…………」


 あー、うん。オルタレーネ本人は超ノリ気だわ。聞くまでもない感じ。いくらコミュ障で人付き合い苦手でも一発で分かるレベルだわ。灰色のフィルターぶち抜いてくる勢い。


 まあ、多少の危険がどうこういっても、この子レイピア一振りで怪物の跳梁跋扈する戦場に殴り込みかけてきてそのまま総大将やれるような武士ガールだしなあ……。普段はお淑やかだが、私よりもよっぽど戦闘民族であるという事を忘れてはいけない。「世界を救うのは我が誉れ!」みたいに考えてるのかな。


 その事を考えると、無理に断るより話に乗った上で危ない事やらないようにこっちで見守る方がよっぽど安全かもしれない。


 問題は、危険度が私の手に負える範囲かという事だが、それも問題ないように聞こえる。境界剣とやらがある場所は、つい最近判明したという話で、神獣もそれと敵対する魔獣も全然知らない場所で、さらに人里から遠く離れた空白地帯だという。知られていない何もない場所だからこそ、今回の事態に関係する敵がいるとは考えにくい、というのは道理が通っている。そこにある、と知らなければ、どんな場所もただの風景に過ぎない。素通りしておしまいだ。


 一番やばそうなのは、魔獣があふれ出しそうになっているという禁則地の再封印だが、そちらもありったけの戦力をかき集めてくれるというのだから、これも問題ないだろう。チラリと視線を向けると、ゲーダー宰相もわかっております、と頭を下げてくる。すでに国家間ではそのつもりで話が動いてる、って事だな。


『禁則地の護衛も、万全を期する計画っす。ていうかこれまで俗世に関心が無かった大物神獣も動いてるので、こないだの花野郎も正面から叩き潰せそうな戦力が集まるはずですわ。現に、今禁則地を監視してるレクスシオ先輩に至っちゃ、這い出してきた魔獣を数秒で血祭に上げる、現神獣の最強候補の一角っすよ。こっちもガチっす』


「グルルル?!」


 何それ怖い!? 何なのそのレクスシオっての、どんな化け物なの!? 頭が三つあって金ぴかで翼が生えてるとかじゃないだろうな。あるいは真っ黒でクソデカで背ビレから青白い光を放つとか。


 でもまあそんな強者が護衛についてくれるなら安心だな。逆にいうとそんな強者がいてもどうにもならないぐらい、禁則地にはミッチミチに魔獣が詰まってるって事か。何百匹いるんだよ……。


 まあ、数は力っていうしな。質ではどうにもならない事はある。前世でも、タイガー戦車とかそんな感じだったしね……。あれは相手も普通に強かったけど、禁則地の魔獣も似たようなもんだろう。


「グルルル……グゥ」


 うーん、断る理由がどんどん無くなっていく。というか、オルタレーネが乗り気みたいだし、それならもういいかな、という気はする。何より、魔獣があふれ出してくるなんて事になったら私も困るし。


 しゃーないね。


 私はサルッカスに、縦に頭を振って応えた。


「グルル」


『おっ! 引き受けてくれるっすか! いやあ助かる!!』


「●■、スピノ●! ありがとう●■★!」


『おっしゃそれじゃ善は急げだ! 準備するっすよ準備! 目的地は北のさむーい山々ですからね、旦那とお嬢ちゃんが凍えないように装備整えないと! いやあ忙しくなるっすよ!!』


「グルゥ!?」


『んじゃ試着するっすからそこにたっててくださいっすね旦那! いやあ、この街の連中が旦那のサイズとか測ってて助かりましたよ、下準備が捗ったっす!』


「グルルゥー!?」


 サルッカスの合図で、中身を満載した木箱が次々と運ばれてくる。その中には明らかに人類のサイズではないクソデカ布も大量に満載されて、これは、最初から準備してたな!? 私が断らないだろうと最初から宛にしてただろうお前!?


 っていうか、あれか! 最近街の人達がシーツくれたり私を街に留まるように仕向けてたの、測量の為か!? 図ったなサルッカス、測量なだけにな(勘違いです)!?


 しかし一度引き受けた以上、今更断るというのも道理が通らない。


 私は苦虫をかみつぶしたような顔で、大人しく全身に定規やら布やらを当てられるのだった。幸いというか、心の救いは、オルタレーネもこの事を全く知らなかったことだろうか。目を白黒させる彼女のそれが演技とは思えない。まあ、彼女に話せばそこから私の方に絶対に伝わると考えるだろうしな。


 あ、オルタレーネには最初からサイズぴったしのめっちゃ可愛い防寒具用意済みなのね……。


 目福だしこれでチャラにするとしよう。うん。


「●■★▼●!??!」


『あ、お嬢ちゃんがバグった。……はー、ごっそさんごっそさん。お幸せな事で』


「グルル?????」





■■



 さて、そんなこんなで北国への旅路が決まった訳だが、事はそう簡単じゃない。


 スピノサウルスサイズの防寒具なんて、一日やそこらで用意できるはずもない。街を上げて作業に取り掛かってくれるようだが、どれだけ早く見積もっても数日はかかるだろう。


 他にも準備するものは色々ある。


 とはいっても、北方を旅した経験がない私に出来る事はない。オルタレーネのほうは北方生まれという事で色々知識はあるようだが、セルヴェの街でその知識を生かす事はできない。流通や植生といった、前提条件が変わってくるからだ。北では容易に調達できたものがここでは難しく、その逆もまたしかり。この世界は全世界が流通網で繋がっていた前世とは違うのだ。


 なので私と彼女の仕事は、皆が準備してくれている間、より詳しい話を頭に入れておくこととなる。研修授業みたいなもんである。


 当然、研修の先生はサルッカスである。主に私のせいなのだが、迷惑かけてごめんね。


『碑文の解析結果によると、境界剣の安置場所は、北の果て……漂白山脈の中腹という事らしいです。距離関係的にはノルヴァーレ帝国と、絶縁山脈の中間地点っすね。地理的にも、地政学的にも普通の人はまず寄り付かないし興味も持たない空白地帯。これまで発見されなかったのも道理ですわ』


 大きな看板のような地図を立てかけて、指示棒を咥えつつ教えてくれるサルッカス先生。ちなみにこのでかい地図は、冒険者ギルドの建物に飾ってあったものだそうだ。


 前世において、地図というのは戦略資源というか、非常に貴重な物だったはずである。そんなものを誰でも見れるようなとこに置いてあったのは、価値観が違うのか、ここの住人がおおらかなのか、まさか地図の重要性を理解してないという事はあるまい。


 まあ何にせよ、これから見知らぬ場所に出向く私達にとっては助かる話だ。


 しかし、聞いたことのない単語がポコポコ出てくるのは少し厄介だ。


 手を上げて質問しておこう。わかった風に流しておくと後で困るのは私である。


「グルル?」


『ん、なんすか旦那。あー、絶縁山脈が何か、って事っすね。まあ簡単に言うと、踏破困難な山岳地帯っすね。異様に鋭く切り立った山々と、地の底まで深く刻まれた谷間。ほんの数キロ移動するだけでも、急勾配を上がって降りて、ってしなきゃいけないから、地図上ではそう広くないんですがものすごく手間が掛かるんですよ。だから普通、人間はおろか地元の獣だってここを横切ったりはしません。空飛ぶ生き物じゃないですかね、ここを横断できるの。だから、絶縁山脈と呼ばれてるんです。事実上、地図の上においても大穴、欠落とみていいですね』


 ははー。なるほど。つまり行路として全く機能してない地域なのね。特徴を聞くに大規模なフィヨルド地形、って事か。


 となるとそれに隣接する地域も、自然と価値は低くなる。絶縁山脈を迂回しないといけないからね。そんでもって、ノルヴァーレ帝国は無神論者っていうか、神々に対してよくない感情を持っている関係で、この世界の多くの国家とは折り合いが悪い、と。そうなるとその二つの間に挟まれてる地域なんて、誰もいかんわな。何の旨味もない。オルタレーネと同じアルカレーレ人が大半を占める帝国だったら絶縁山脈も渡れるんだろうけど、国の方針が鎖国気味だから進出する意味が薄い、と。オマケに寒冷地帯だ。前世におけるユーラシア大陸北東にあんまり人がいないのと似たような理由か。かのおっそろしい国の首都も、共産主義国家が爆誕するまではド田舎だった訳だし。


「●■▲▼●?」


『ん、現地に住人はいないのかって? 多分ですけど、誰もいないと思うっすね。聞いた話によれば、境界剣の守護の任を任されていたっていうレイストフ先輩の巫女の一族がこのあたりを治めてた、って事になるんでしょうけど、あの一族はもともと魔獣被害で滅びかけてましたからね。先輩の巫女が恐らく最後の巫女、って話っした。なんせ当時はそこら中に魔獣が溢れかえってて、少数民族が隠れ潜むような場所まで被害が出てましたからね……。まあとにかく、あれから結構な時間が流れてますし、とっくに滅びてるか人里に降りてるんじゃないでしょうか』


「●■……」


 それは残念な話だ。でも、まあそうか。今もその守護者の一族が生き残っていればもっと話は簡単だったものな。


 しかしレイストフか、当時の神獣のリーダーのような存在だったらしいが。サルッカスの話だと問題が起きている禁則地も“レイストフの霊峰”と呼ばれている場所だという。既に亡くなっているそうだが、彼が生きていれば心強かっただろうに。残念だ。


『ま、そういう訳で現地に何か変なのがのさばってる可能性は低いし、魔獣の方もせっかく禁則地から解放されたなら、わざわざ絶縁山脈を乗り越えてこんな辺境までやってくる理由もないんでさ。実際、ノルヴァーレ帝国と境界都市イセルガーヤを襲った魔獣は、北に一度北上してから海にでて、そこから東に向かったという話です。連中弱い者いじめが大好きですからね、完全な無人地帯には興味ないでしょ』


 人界を襲った四体の魔獣については、その移動ルートはほぼ判明しているらしい。飛竜は一度南下してからまっすぐ東、ザ・ワンは地下を通ってそのまま東に向かったという事だ。私の知らない魔獣もいるが、いずれにせよ特殊な移動能力を持った魔獣も絶縁山脈を通るような事はしていない。


 これなら、境界剣の探索で魔獣と遭遇する可能性は低いだろう。もともとの話通り、そこまで危険な旅になる事は無いという訳だ。下調べって大事ね、下調べした上で情報が古いこともあるけど。


『んでもって、可能な限り獣道を避けて、生きてる街道を通って向かうルートが……これ。漂白山脈の南、雪原都市カニスを経由して向かうコースです。カニスはほぼ目的地の真南なんで、まずは普通にここに向かい、街で装備を整えなおして北上します。連合王国の方でカニスに話をつけてますけど、漂白山脈に詳しい現地のガイドも得られそう、という事でさ。まあそいつらも麓までしか行った事がないそうなので、そこから先はもうスピノの旦那とオルタレーネのお嬢ちゃん次第になってきます』


 なるほど。地図の上で見る限りはマニプルより少し遠いか? とはいえ、マニプルまで旅した経験を生かせば、そう困難ではないだろう。現地ガイドが途中まで、というのは不安点だが、最悪オルタレーネは空が飛べるし、私も炎が出せる。前世の人間の登山より難易度は低いはずだ。


『ま、そんな感じでさ。時間が惜しいんで、お二人には先にカニスに向かってもらい、旦那用の防寒装備は完成し次第、速達でカニスに送ります。旦那用といっても防寒具単体なら、専門の業者に運んでもらえば三日もあれば届けられますんで』


「グルル」


 それはありがたい。いや、私だって急げば三日ぐらいでカニスまで走っていけると思うんだが、本番の登山の前に体力を使い果たしては元も子もない。防寒具があっても寒いものは寒いだろうし、体を慣らしておく必要もあるだろう。


「■●★、▲★?」


『いんやいんや、まさかぁ。お二人だけで行かせる訳ないでしょ、迷ってカニスにすらたどり着けなかったらどうするんです。ちゃんと旅慣れた冒険者を護衛も兼ねてつけてもらいますよ、そこは安心してください。まあ、俺っちは居残り組ですが。すいませんね』


「グルル」


 首を横に振って否定する。そこまでサルッカスにお世話になる訳にはいかないし、そもそも私とサルッカスが並んで旅をしたら目立ちすぎる。良からぬ災いを呼び寄せるかもしれないし、魔獣達の襲撃に対する備えも必要だ。今の所、禁則地から新たに出てくる魔獣はレクスシオ? とかいう神獣が対応できているという話だが、その前に逃げ出し、しかしどこもまだ襲撃せずに身を隠している魔獣がいるかもしれない。そいつらが、サルッカスの留守をこれ幸いと襲撃してこない可能性が無いとは誰にも言いきれないのだ。


 世界の危機は当然大事だが、身近な危機も疎かにしてはいけないだろう。


「●■大丈夫■、スピノ●。心配■●」


「グルルル」


 そうそう。心配はいらない、大丈夫さ。


 むしろ、北への旅と聞いて俄然楽しみになってきた。湖の北の方にあるウォールランド王国とはまた違った感じに違いない。マニプルの街のあたりは、さほど天候や植生がセルヴェと変わらなかったからね。


 これだけ念入りに調査済みなら大きな危険を心配しないでよいし、実質旅行のようなものだ。そのついでに、大昔の骨董品を拾ってくるだけ。楽な世界救世もあったもんである。


 さーて、雪原都市カニスか。ふふふ、どんな所か楽しみだなぁ。





 翌日、善は急げとはいうものの本当に急展開で、私とオルタレーネは出発する事になった。


 御供は一台の馬車と三人の冒険者。普通であれば頼りないのだが、いざ冒険者と対面してみて私の小さな不安もかき消えた。覚えがある上に、実力は申し分ない相手だったからだ。


「グルルゥ」


「●■! ★▼●! ●★!」


 よろしく、と挨拶してくるのは白い毛皮に大剣を携えた、あの凄腕の冒険者だ。飛竜戦でアシストしてくれたのは忘れない。マニプルの街までの旅でも護衛してくれたのでもうすっかり顔なじみといっていいだろう。


 その後ろに控えているのは、猫っぽい感じのまだ初々しさが残る二人組だ。もしかして、剣士の弟子か何かなのだろうか? 目をキラキラさせて頭を下げてくる。実力の程はまだよくわからないが、人間性は好ましそうに思える。


 なかなか頼もしい旅の連れをつけてくれたものだ。これなら道中、私が魔獣に対応する必要すらないかもしれない。ははは、マニプルへの旅も快適そのものだったし、これはもはや何の心配もいらないのでは?


 私はまだ見ぬ漂白山脈とやらに思いを馳せながら、先導する馬車の後をついて歩みだした。


 さあ、目指すは雪原都市カニスだ!



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