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第1話 転生スピノ


 夢を見た。


 仕事の疲れが反映されたかのような、荒唐無稽でトンチキな夢だった。


「初めまして。私はゴッドです。突然ですが貴方はお亡くなりになりやがりました」


「はぁ……」


 周囲はピンク色の靄。目の前にはモザイクで塗りつぶされたナニカ。

 なんだか神だとか名乗っているが、自称神とか胡散臭い事この上ない。状況の前後の繋がりもない、まあ夢らしい唐突な展開だった。言葉遣いも変だし。


 しかしあれだよね、夢ってとんでもない内容の割に目覚めたすぐあとはなんかすごく真実味があるよね。


「それで、その、神様? が私に一体何のご用事でしょうか? 数億人いる人類の一人にこうして面談されているのですか?」


「それは実に人間らしい矮小な判断基準でザマス。人知を超えた存在が、人類の尺度での価値観や尺度で行動すると思うのは実に滑稽でごわす」


「あ、はい」


 なんだか説教されてしまった。言っている事は成程、確かにそれっぽくはあるが同時に、いかにも私の考えそうな事だ。夢っぽさが増す。


「まあよい。それよりとっとと来世の望みを教えてくれやがりませ」


「え、転生ボーナスくれるんですか?」


「記憶の引継ぎもセットです。やったぜ」


「やったね」


 転生体験できるとか夢であってもテンションあがってきました。

 いやあ、子供っぽいとは我ながら思うけどこういうのはやっぱ好きだね! やめられない。


 一体何にしよう?


 人生イージーモードで生きるには、やはり頑丈な肉体は必須。転生後の世界がどんな文化圏かはわからないけど、楽に生きていくためにはやはり希少なスキルがあるとよいだろう。見た目も拘りたい。現世での自分の顔造形にはちょっとコンプレックスがあるから、贅沢な話だが。あ、あと花粉症とか胃腸が弱いとかも克服したい。


 スーパーパワーもできればほしい。常人のピンチを助けてちやほやされたい。苦労せずに楽しく生きて、誰かに感謝されて、心から自由に……。


 ワクワクしていると、モザイクの神が何やらため息をつく気配がした。


「下手だね、君。欲望の解放の仕方がへたっぴ」


「えと……」


「顧客の要望をくみ取って反映するのがプロの営業。君の望みは……こうだろ?」


 パチン、と指を鳴らすような音がする。


 それを拍子に、急激に意識が遠のいていく。視界が水面に浮く絵具のように混濁し、マーブル模様からドドメ色の鈍色へと変わり、そして暗転。



 そして気が付けば、私はどこか知らない湖の真ん中につったっていた。


 青い空。白い雲。眩く輝くふたつの太陽。それこそこれまでの人生で見た事のないほどの快晴。


 だから、水面に映る自分の姿もよく見えた。


 緑色がかった爬虫類のような鱗。細長い顎に、鋭い乱杭歯。太く長く、先端近くで斜めに切り落とされたようなオールのような尾。そして何より特徴的な、帆船を思わせる背中の巨大なヒレ。


 それは、まさしく。



「アンギャ~~~~~!?(私、スピノサウルスになってるぅ~~~~!?)」



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