第二話 シングルマザー
ここは東京都M市にあるアパート。
今回は、一人息子を大切に想う母親の物語である。
第二話 シングルマザー①
いつからこうなったんだろう…。
旦那にDVを受けるようになったのは…。
毎日、酒に逃げては暴言を吐き、物に当たる。
その後は、暴力、暴力、暴力…。
私も最初は抵抗もした。
だけども、男との力の差は歴然だ。
髪の毛を鷲掴みにされては引き摺り回され、
何度も殴られたあとは、倒れ込むしかなかった。
一人息子は、部屋の隅で震えている
「なんじゃあ?
ガキのくせにクソ生意気な目ェしやがって!
文句あるんか!?コラァ!!」
「ヤメテ!」
暴力を振るわれ倒れ込んでいた私が、
声にならない声で叫んでも、
理不尽な平手打ちが容赦なく息子を襲う。
息子の泣き叫ぶ声があたりに鳴り響く。
その後は、住人からのクレームの嵐だ。
「誰も助けちゃくれない…。」
「もう限界だ。逃げなきゃ!」
私の決意は固まった。
そのうち、アイツは疲れて眠りこけた。
そして、印鑑を押した離婚届を机に置き、ありったけの荷物とお金を持って、息子と一緒に逃げた。
「とにかく、できるだけ遠くに。できるだけ人の多いところに行こう。」
そうすれば、アイツには見つからないと思った。
東京駅に向かう電車に乗り込み少しほっとする。
そこから先は、無我夢中だったのか、あまり覚えていない。
ただ、私を抱きしめて離さない息子の温もりだけは感じていた。
絶対にこの子には真っ当な人生を歩んでほしい。
気がつけば、私たちは大阪にいた。