百六十七話
「王様の冠についている宝石をいただけないでしょうか?」
俺がそう言うと、その場所だけ時間が止まったかのような錯覚に襲われた
何かまずいことでも言ってしまったのだろうか
「勇者よ その話はどこから聞いた」
「えっと、先代の勇者様から――」
「何と!!」
俺が言い終わる前に、王が俺の方に近寄ってきていた
王は先代の勇者と知り合いなのだろう
何かしら感じ取ったのかもしれない
「勇者よ 先代の勇者と会ったのか?」
「はい 魔導師のトーリアさんからを介して会わせてもらいました」
「またトーリアか」
王は小さなため息をついた
トーリアとも知り合いなのか
「分かった 勇者の言う通りにしよう だが、約束してくれ これからトーリアには一切かかわらないこと いいな?」
王は怖い顔で俺に迫ってくる
トーリアがそんなに危ない存在なのか
「それと、先代の勇者にも同様だ 今も勇者のそばにいるのかもしれないが、関わらないように 約束できるか?」
「は、はい!」
俺がそっと後ろを向くと、先代の勇者はいなくなっていた
王に言われて帰ってしまったのか
「よろしい ならば渡そう」
王は自分の冠を手に取り、金色の石を俺に渡した
「それでは、魔王討伐頑張ってくれ 勇者の帰りをここで待っている」
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