十六話
俺は夜風に吹かれ、一人の時間を楽しんでいた
今思えば、いつも一人だったな
巨悪な宗教集団を潰した時も、全てを飲み込もうとする最悪の権化を倒した時も、誰一人として周りにはいなかった
誰も俺の事を褒めてくれなかった
いや、褒めて欲しかったわけじゃない
ただ、隣に誰かがいてほしかったのだ
隣にいてくれるだけで良かったんだ
この旅で人の温かさを知れた
王はそこまで考えて、俺に魔王の討伐を依頼したのだろうか
考えても仕方ない
夜空にはこんなにも星が輝いている
あの星たちのように、俺もいつかは輝ける日が来るのかな
「勇者殿は今も輝いているじゃないか」
後ろから、声がした
そこにはシェルドがいた
怪我は大丈夫なのだろうか
「勇者殿は私を助けてくれた 私にとっては星のように輝いていたぞ?」
「そ、そうかな?」
俺は頭をかき、照れる
そんなことを言われたのは初めてで、どう反応すればいいのか分からない
「私もな、勇者殿のように悩んだことがある それはもう毎日後悔の連続だった だが、誰かを助けた時 私は思ったのだ 助けられた人にはその人が輝いて見えるのだと」
シェルドは言う
人は誰かのために生きている、ということか
こんな俺も誰かの生きる糧になっているのだろうか
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