百三十五話
「あら? もしかして帰ってこないつもり? こんなに愛している人がいるのに?」
「そう言うわけじゃないけど……」
「なら、特に問題ないわよね?」
ルナが俺に顔を寄せてきて言う
ルナからこんなに圧力を感じたのは初めてだ
俺が何をしたっていうんだ
まあ、ユユが安心したような顔をしているのでよしとするか
こうして俺達は北の街を去ることになった
「勇者ってみんなから愛される存在なのね」
「そうか? 俺はそんな感じはしないが はたから見ればそう見えるのか?」
「…………勇者って辛くない? 無理してたりしない?」
ルナが今度は心配そうに俺の顔を覗き込んでいた
表情から見るに本当に心配しているようだ
確かに勇者になった当時は辛く苦しい事ばかりだった
何度勇者をやめようと思ったことか
そんな時、俺を鍛えてくれた師匠が言った
『勇者になるということは自分がもう一段階成長できるということだ』
その言葉は勇者として諦めかけていた俺の心に強く響いた
もう限界だと思っていたが、まだまだ先がある
そう考えると、世界が変わった
「勇者はこの国を守るもの それが世間の常識 俺はその期待を裏切ってはいけない 自分自身をもっと強く成長させるために」
「…… 分かったわ 勇者 頑張って」
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