百十五話
「どうかな? これでおいらが先代の勇者だって信じてくれたかい?」
「まあ、多少なりとも嘘はついていないことは分かった」
俺がそう言うと、先代の勇者は安心したような表情をした
俺が信じていないのを気にしていたのか
「先代の勇者なら答えてくれますよね?」
「おいらにこたえられることならなんでも」
俺はごくりと生唾を飲み、口を開く
「率直に聞きます 答えたくなければ答えなくても構いません 『魔王は封印できたのですか?』」
「…………」
先代の勇者は黙っている
答えたくないのか
俺はそう判断し、話を切ろうとした
「できていない おいらの力ではできなかった」
先代の勇者はボソッと言った
その言葉を俺は聞き逃さなかった
「あなたの力ではできなかったというのはどういうことですか?」
「そのままの意味だ おいらの力不足のせいで魔王を封印まで追い込むことはできなかった それほどまでに魔王は強かった」
トーリアは先代の勇者の話を聞いて、驚いていた
この話を初めて聞いたのか
「そんな大事な話、何で私に教えてくれなかったんですか! あの時あれほど問い詰めたのに!」
「言えるわけないじゃないか! 勇者が魔王を倒せませんでしたなんて! おいらは責任に押しつぶされたんだ」
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