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志保と不思議な夏休み  作者: 碧川亜理沙
一章
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変わった友だちと変わった街 ⑤


 ひまりたちと知り合って数日、7月もそろそろ終わりを迎え、志保がこの街に来てから1週間以上経っていた。

 午前中は宿題をして過ごし、午後になると約束をしていなくてもひまりとかげやが迎えに来て、一緒に街を探索する日々が続いている。


 この頃になると、志保も街の人たちと顔を合わせることも増え、会えば気さくに声をかけ合うほどになっていた。時には一緒におしゃべりをしたり、お菓子をくれることもある。


 志保はだんだんと、この街が好きになっていた。

 そして好きになっていくと同時に、この街が普通とは違うのだということを知っていった。




 初めに疑問に思ったのは、3日目、ゴトさんと呼ばれるおじいさんの家に行った時だ。


 ゴトさんとは、五藤(ごとう)さんと言うおじいさんの愛称らしく、初めて会った時は厳つい顔と大きな体、まるで熊みたいで、少しだけ怖い人だと思ってしまった。

 だけど、ひまりやかげやは親しげに話しかけ、ゴトさんもそれに黙って耳を傾けていた。隅に寄ってしまっていた志保にもお菓子をくれたり、時おり話を振ってくれたりと、接していくにつれ、いい人なのだと分かっていった。


 そのおじいさんの家が、違和感を覚えた最初だった。

 志保たちが和やかに話している最中、何度か家の中でガタガタと物音が鳴った。3人は特に気にすることもなく話を続けていたけれど、結構大きな音が何度も鳴っていた。

 心配に思った志保がゴトさんたちにそう言うと「いつものことだ」と言われた。


 それに志保がトレイを借りている時にも、不思議があった。

 ゴトさんの家のトイレを借り、みんながいる居間へ戻ろうとしていた時、なかなか居間へたどり着けなかったのだ。

 そこまで大きな家というわけでもないし、一軒家なので、迷うということはないはず。それなのに、来た道を通っても居間へ戻ることができなかった。

 その時は何度かくるくると家の中を回っていたら、無事みんなのいる居間へ戻ることはできた。

 だけど、まるで家自体が動いているような、遊ばれているような、そんな感覚になった。




 次に疑問に思ったのは、街中を3人で歩いている時のこと。

 アダチ商店でキャンディアイスを買って、商店内の簡易休憩所みたいな場所で食べていると、店の前を近所の原田(はらた)親子が通りがかった。

 子どもたちはまだ5歳程度で、やんちゃ盛り。見つかると気が済むまで遊びに連れ回されることがあると、ひまりから聞いていた。

 だけど、どうやらその日はお昼すぎともあって眠いのか、大人しくて、原田母の傍を離れなかった。


 ひまりが大きな声で挨拶をすると、原田母のも気づいて店前までやって来た。

「ひまりちゃんたち、今日も元気だねぇ」

「いやいや、ちびっ子たちに比べたら暑くて動けないよう」


 楽しそうに話し始める2人の話を聞きながら、かげやからアイスの棒を受け取り店の外にあるゴミ箱に捨てに行く。

 原田親子の近くを通った際、何かふさふさしたものが視界の端に写った。

 思わずそれに視線を向けると、それは原田母にくっついている子たちのおしりあたりから出ているものだった。


 あまりにじっと見ていたせいか、子どもたちは志保の視界から隠れるように原田母にくっついていった。

 困惑する志保を他所に、ひまりたちは他愛ない話を続けている。

 その後もなかなか話のきっかけを切り出せず、その日は夕方に土砂降りの雨が降ってきてしまったので、結局その日は誰にも尋ねることなく終わってしまった。


 それから街を歩き回る時は、つい通りすがりの人たちのことをじっと見るようになった。

 だけど、なかなかしっぽが生えていたりする人は見当たらない。志保たちと何ら変わらない見た目の人たちしかいない。


 見間違いだったのだろうか。

 そう思い始めた別の日、今度は羽の生えた男の人が空を飛んでいるのを目撃した。

 夕方のチャイムをきっかけにひまりたちと別れ、祖父の家への帰り道の途中であった。その男の人は、道を歩く志保に気付かぬまま、すうっと西の方へ空を飛んで行った。


 志保はその光景に驚き、急いで家へと戻り、居間でくつろいでいた祖父に全てを話した。

「なんだ。まだひまりたちは話してなかったのか」

 祖父はそう言うと、立ち上がり近くの戸棚をあさり始めた。

 そして、目的のものを見つけたのか、それを手にテーブルの上に置く。

 それは、少し色あせている写真だった。


「どれ、志保もここに慣れてきたようだからな。この街の秘密について教えてやろう」

「ひみつ?」

 首をかしげる志保に、祖父は先ほど持ってきた写真を志保へと差し出す。

 そこに写っている人たちは、みんなにこやかで、後ろのほうに法被(はっぴ)を着たかかしがいるので、この街の住民たちなのかもしれない。

 一見、何気ない写真なのだが、その写真の中にも普通じゃないものがたくさん映っていた。

 目を丸くしている志保に向かって、祖父は驚きの事実を告げる。


「この街はな、いわゆるあやかしたちと人間が一緒に生活する場所なんだ」


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