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志保と不思議な夏休み  作者: 碧川亜理沙
四章
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彩りとじこめる夏の終わり⑤


 自由研究1日目を終え、祖父の家へ帰った志保は、夕飯を食べた後すぐに眠ってしまった。


 翌朝、昨晩父から連絡があったことを聞く。

「どうやら向こうの仕事は終わったらしい。明後日には向こうを立つと言っていたぞ」

 そうなると、おそらく週末辺りに父と約1ヶ月ぶりに会うことになる。


 こんなに長く離れていたのは初めてだ。途中で寂しさを感じるかと思っていたが、そんな事はなく、毎日が充実していた。


 でも、そんな毎日も残りわずか。

 まずはここにいる間に、始めた刺繍を終わらせたい。

「行ってきます!」

 今日も元気に、志保は家を飛び出した。


 2日目ともなれば、コツも掴んできて、ペースも徐々にあがってくる。

「スピードも大事だけど、丁寧さも忘れないでね。急ぎすぎると、糸がキレイに通らなくなったり、浮いちゃったりしたら見栄えが悪くなるから」

 原田からのアドバイスも念頭に、志保は黙々と手を進める。



 昨日は音沙汰がないと思っていたひまりが現れたのは、午後だった。

 どうやら志保の居場所を祖父に聞いたらしい。


「志保ちゃん、ずっと原田さんの家にいたの?」

「ずっとじゃないよ。昨日からお邪魔してる。ひまりは、昨日何してたの?」

「宿題〜。でもようやく終わったから、外に出ていいって許可もらったんだ!」


 どうやら、まだ宿題が残っていたらしい。それが終わるまでは遊んではいけないと、ひまりたちの母親にまたもや言われたそうだ。

 ちなみに、今日かげやと一緒ではないのは、彼が外に出る気分じゃないからだと言う。


「裁縫?」

「クロスステッチって言うんだって。自由研究がまだだったから、これを完成させようと思って」

「すごいね! ひまりもやってみようかなぁ」

「あら、ひまりちゃん、裁縫できたんだっけ?」

 隣で別の作業をしていた原田が、ひまりの言葉に口を挟む。その声色は、少しばかりからかいの色がにじんでいた。

 それをひまりも感じ取ったのか、

「縫うだけならできる……はず」

 と少々自信なさげに呟いた。


 暇だしということで、ひまりも志保と並んで刺繍を始めた。

 だが、彼女の集中力は1時間ももたなかった。

「志保ちゃん、何でそんなに黙々とできるのー。ひまり無理!」

 何となくこうなる事が分かっていた志保は、苦笑し返すしかない。

 ひまりは刺繍を早々に諦めて、原田の子の光太郎の遊び相手となっていった。



 それから、志保はほとんど休憩無しに進めていき、17時のチャイムが鳴ったことで手を止めた。

 進捗はまずまずで、この調子なら夏休み中に終えることが出来るだろう。


 毎日原田の家にお邪魔するのも悪いと思い、志保は原田に刺繍セット一式を持ち帰っていいかと尋ねた。

「あら、全然いいわよ。昌勝さんの家の方がきっと静かだものね」

「ありがとうございます。作り終わったら、返しに来ます」


 荷物を整理して、原田に挨拶をし、ひまりと共に家への帰路に着く。

「志保ちゃん、明日もそれやるの?」

「うん、夏休み中に終わらせたいから」

「そっかぁ……。ひまりいたら、邪魔? うるさいと思うけど」

「邪魔じゃないよ。でもお喋りあんまり出来ないかもしれないから、ひまりのほうが退屈するかもよ」

「大丈夫! じゃあ、明日志保ちゃんのとこ行っていい? ひまり、ひとりでゲームでもしてるからさ!」

「うん、いいよ」


 なんてことないひまりとの会話がちょうど途切れた辺りで、分かれ道へとさしかかった。

「じゃあ、また明日ねー!」

「うん、また明日」

 元気よく去っていくひまりの姿を見送りながら、志保はふと思う。


 ──ひまりとかげやって、自由研究何してるんだろう……?


 2人からその話題が出たことはなかった。

 明日聞いてみようと思い、志保は少し駆け足で家へと戻った。


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