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志保と不思議な夏休み  作者: 碧川亜理沙
三章
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夜道の影と思い出なぞり②


 志保の足は、まず、ゴトさんの家へと向かっていた。

 最初に会った時は、怖いおじいさんだと思ったけど、今ではひまりたちと気軽に家にお邪魔できるくらいには仲良くなっていた。


 けれど、今日はゴトさんに会いに行くわけではない。そこにいるであろう、居候に用があった。



「こんにちわ」

 今日も縁側にたくさんの物を広げている影法師の姿があった。

「こんにちわ。おや、今日は志保ひとりなんだね。ゴトさんなら、病院に行ったから今は留守だよ」

「ううん、今日はゴトさんじゃなくて、影法師さんに会いに来たの」

「おや、それは嬉しいねぇ」

 仮面を被っているから表情は分からないけど、その声色は本当に嬉しそうだ。相変わらず全身真っ黒な出で立ちで、初めは圧迫感を覚えていたが、少しずつ慣れてきて普通に接することが出来る。……多少の怖さはまだあるが。


 志保は気を取り直して、手に持っていたノートを差し出す。

「ん? なんだい、これは」

「おじいちゃんが見つけてね。お父さんが書いたものなんです」

「ほう……将吾(しょうご)が」

 影法師も興味を持ったようで、受け取ったノートをパラパラとめくる。途中絵が書いてあるページで手を止め、「うん、間違いなく将吾が書いたものだ」と納得していた。


 ひと通り見終えたのか、影法師はノートを志保へと返す。

「それで? このノートと私に会いに来たことは、なにか関係があるのかな」

「うん。あのね、そのノートに書かれている人たちのことを聞きに来たの」




 昨日このノートを読んだ時、志保はこの日記に書かれている人たちのことを知りたいと思った。


 この夏休みの間で、知っている名前もちらほらとある。それでも、父が書いた人たち全員という訳ではない。

 彼らのことを知りたい。それと同時に、子どもの頃の父の軌跡を少しでも辿ってみたいとも思ったのだ。


 真っ先に祖父に聞いてみようかと思った。だけど今回は身内に聞くより、街の人たちから聞いた方が、子どもの頃の父の話も聞けるかもしれないと思った。

 次にひなたや(わたり)、住職さんやゴトさんを思い浮かべた。しかし小学生の志保とは違い、忙しいかもしれないと選択肢から外した。

 身内ではなく、忙しくなさそうでいて、父のことを知っている人──そこで選ばれたのが影法師であった。




「影法師さんなら、ここに書いてある人たちのこと、知ってますよね?」

「まぁね。長年ここには出入りしているから」

「じゃあ、教えてもらってもいいですか? それに、今日ひまりとかげやがいないから、ちょっと暇で……」

「いいよ。私も誰も来ないからちょうど話し相手が欲しいと思っていたんだ」


 お互いの利が一致したところで、志保は影法師からたくさんの話を聞いた。

 影法師はノートに書いてあること以外も詳しく知っているようで、志保はその話に引き込まれた。それにところどころ、父の話も混ぜてくれたので、意外な父の一面を知ることができた。


 思いのほか熱中していたらしく、2人は夕方のチャイムではっと我に返った。

「おや、もうこんな時間か。いやはや、久しぶりに楽しい時間だったよ」

「うん。私もたくさん話を聞けて楽しかった。ありがとうございます」


 影法師に挨拶をして、志保は家路に着く。

 歩きながら、ひまりたちと遊ぶ時とは違った楽しさがあったなと思った。

 今日は、いろんな人──結果的にあやかしのほうが多かったけど──のことを知れた。今度はノートに書かれた、まだ立ち寄ってない所へ行くのもいいかもしれない。


 ──その時は、ひまりとかげやと一緒に行こうかな。


 明日、2人と一緒に遊べるだろうか。遊べなかったら……。

 未来の予定を立てながら、志保は足取り軽く家へと歩いていった。



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