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志保と不思議な夏休み  作者: 碧川亜理沙
二章
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みやげ話と夏夜のお祭り⑦



 神社へ近づくにつれ、道路の脇に様々な屋台が立ち並んでいるのが見えてくる。

 そろそろ街灯が灯り始める時間だが、それと同じくして、吊り下げられた提灯がぼうっと鈍い灯りを点す。

 道行く人たちの数も増え、どこからともなく夏祭りにふさわしい笛の音も聞こえてきた。


 ここ2、3日、神社方面へと足を向けることがなかったので、周辺の様変わりように驚いた。


「これぞ祭りって感じで、テンションあがるー!」

 いつもよりさらにご機嫌なひまりは、キラキラした目で屋台を見回す。かげやもいつもより表情が明るい。

 志保にとっては、初めての地でのお祭りということもあり、地元とは違った雰囲気にどきどきしていた。


「ねぇねぇ、何から回る?」

「腹減った。飯」

「じゃあ、食べ物買ってどこかで座って食べよ」

「オケ。その後はひまりね、金魚すくいと射的と型抜きしたい!」

「食べ終わってから回ろうか」


 どこを見ても、おいしそうな屋台があって目をひかれる。

 志保たちは、各々食べたい物を買い、道路の脇によって食べ始める。


「志保ちゃんの焼きそば、おいしそ……」

「お前焼きそばも買ってただろ」

「志保ちゃんと違う出店のだもん」

「ひとくち食べる?」

「食べる! じゃあ、ひまりのたこ焼きあげるね。かげやにも特別」

「食いかけはいらねーんだけど」


 他愛ない会話をして、腹ごしらえをしたら、今度は遊びに向かう。

 射的に金魚すくい、輪投げに型抜き……。

 ひと時の非日常を、志保たちは思い切り頼んでいた。


「おぉ、志保。こんなとこにいたのか」

 1度休憩とかき氷を買って食べていたところへ、志保の姿を見かけた祖父が近寄ってきた。隣には付き添いだろうか、碧の姿もある。

「おじいちゃん」

「あ、おじちゃん! こんばんわ」

「どうも」

「みんな、楽しんでるようで何よりだな」

 祖父は志保たちを順に見て、満足そうに頷く。

「もう少ししたら、始まるらしいぞ。早めに上に上がってみな」

「はーい」

 そう言い残し、祖父たちはそのまま近くにいた人たちと話に混ざっていった。


 ほどよく休憩をとり、そろそろまた屋台を回ろうかと思った頃、どこからとなく太鼓の音や笛の音が聞こえてきた。今度はスピーカーとかから流れるような音ではなく、近くで誰かが鳴らしているようにはっきりと聞こえた。


「あ、もう始まるじゃん。上に行こっ」

 その音をきっかけに、ひまりはいそいそと手に持っていた綿菓子を食べ終え、志保とかげやの手を取りかけ出す。


 神社の境内まで行くと、いつもは広く寂しい感じがあるけれども、今日は違った。

 真ん中に大きな太鼓や楽器を持った人たちが集まり、そこを中心として、円を描くように周囲に人が集まっていた。


 ひまりはその中に志保の手を引いたまま入っていく。

「何があるの?」

 これから何が始まるのか。ひまりに尋ねる。

「盆踊りだよ」


 するとちょうどいいタイミングで、中央にいる人たちがそれぞれ楽器の音を鳴らし始めた。

 みんなその音に合わせて、ゆっくりと円を描くように進みながら踊り始める。


「ひまり、私盆踊りのやり方分からない」


 ひとり慌てふためく志保に「適当に真似てればいい」とかげやが答える。実際ひまりもかげやも、周りの人たちを見ながら、なんとなくで踊っているようだ。

 周囲を見渡しても、志保のようによく分からず真似ているような感じの人たちが多い。年配の人たち以外は、割と見様見真似で踊っているようだ。


 よく分からないまま、ひまりやかげやに倣い、志保も同じように手を動かす。

 始めのうちはおっかなびっくり動かすように踊っていたけど、1周する頃にはそれなりに様になってきて、細かい違いなど気にならなくなっていた。


 太鼓や笛の音に合わせ、誰からともなく歌われている歌も、何度も繰り返されるうちに、簡単に口ずさめるくらいには覚えてきた。

「楽しいでしょ」

 少し先にいたひまりが振り返り問う。

 志保は笑顔で肯定の頷きを返した。


 ──ここにいる人たちみんなと、一体になったみたい。


 夏祭りと言えば、近くの神社や地域で屋台を出し、打ち上がる花火を見るというものしか知らなかった。

 このようにみんなで盆踊りを踊る、という経験は初めてだ。


 人もあやかしも関係なく、みんな楽しそうに踊り、歌い、飲み食い、笑っている。


 なんて楽しい時間なんだ──志保はそう思った。



 祭りの雰囲気を思う存分楽しみながら、夜はだんだんと更けていく。

 神社周辺だけは、いつもよりも明るく、賑やかな場所となった。


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