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志保と不思議な夏休み  作者: 碧川亜理沙
二章
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みやげ話と夏夜のお祭り①


 8月に入った。

 やはり今年も、連日真夏日が続き、朝も昼も夜も、ずっと暑さがまとわりつく。


 この日志保は、午前中から1人で街をぶらついていた。

 この時間、いつもは宿題をしている時間だけども、毎日取り組んでいたら残り半分もないくらいまで進んでいた。


 本当は、家の掃除とかなにか手伝えることないかと碧に聞いたのだが、大丈夫だからとやんわり断られた。

 碧は、志保に家事をさせようとはしない。志保としては、いつも家では父の負担にならないようにと、家事を率先していたため、何もしなくていいと言われると手持ち無沙汰になってしまう。


 ──私、碧さんに嫌われたりしてない……?


 そんなことはないと志保自身分かってはいるが、こうもかたくなに断られるともしかして……と思わなくもない。


 そんなこともあり、志保はここ2、3日、午前中から外に出ていた。


 いつもなら、ここで宿題なんて知らなそうなひまりとダルそうなかげやも混ざるのだが、彼女らは今日、登校日ということで、午前中は学校へ行っている。

 志保の小学校は登校日というものがないので、休みの間に学校に行くというのは、どんな感覚なのだろう。



 お昼近くになり、志保はかかしの立つ街の入口へとやって来た。ひまりとかげやが帰ってくるのをここで迎えようと思ったのだ。

「あ、はっぴ着てる」

 目印となるかかしは、今は青い法被を着て、頭に当たるカブにはねじり鉢巻きもされていた。

「そう言えば、来週末、お祭りがあるんだっけ……」

 つい昨日、ひまりが嬉しそうにいっていたのを思い出した。来週になったら、街がお祭りムードになり、外から人も来るとか何とかで、一層にぎやかになるのだという。

 志保も密かに楽しみにしていた。


「あ、ミケさん」

 近くの塀に寄りかかって座っていると、どこからともなく猫がやってきた。


 ミケさんは、どうやらこの街に居着いている猫なのだという。三毛猫のメスで、野良とは思えないキレイな毛並みをしている。

 ミケさんは、ちらと志保の姿を横目で見て、塀の上に飛び乗り、丸まって毛繕いを始めた。

 よくかかしのいるこの辺りで見かけることが多いので、きっとお気に入りの場所なのだろう。




 だんだんと日も高くなり、セミの鳴き声がうるさいくらい聞こえてくる。

 帽子をかぶっていても、下からの照り返しが思ったよりも強い。

 ──日陰で待ってればよかった。

 かかしのそばで待つのはいいが、お昼前からずっと太陽の下にいるので、暑さはもちろん、肌もじりじりと焼けてるような気がする。持ってきていた冷たい飲み物も、もうほとんど残っていない。


 さすがにこれ以上、日の下にいるのがつらくなってきたので立ち上がると、くらっと目の前が一瞬暗くなった。思わず目を瞑り、塀に手をつく。

 何度か深呼吸をすると、くらくらとした感じがおさまってきた。


「おや、将吾(しょうご)?」


 そんな時、低い男の人の声が頭の上から聞こえてきた。

 目を開けると、真っ黒い色が視界に入る。そのまま視線を上にあげると、志保は思わず声をあげてしまうところだった。

 そこには、真夏なのに真っ黒い服を着てこれまた真っ黒いシルクハットをかぶった長身の人が志保を見下ろしていた。しかも顔には、目を細めて笑ったような仮面をしている。


「いや、失礼。私の知り合いによく似ていたからね。でも、そもそも君は女の子だ」

 その人はまじまじと志保を見たあと、そう言った。"将吾"とは父の名前ではあったけれど、もしかして父の知り合いなのだろうか。思ったものの、志保は尋ねることができなかった。


 志保の心中など知らぬその人は、「失礼」と言い街の奥へと歩いていく。長身に隠れて見えなかったけど、服とおなじ真っ黒な大荷物を持っているようだ。

「……街の人?」

 あまりに慣れた足取りで、その人は志保の視界から消えた。インパクトのある人で、少しだけ、その人のことが怖いと思ってしまった。


 日陰に行こうと思っていたことも忘れ、いつの間にか帰ってきたひまりとかげやに声をかけられるまで、志保はその場を動くことができなかった。


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