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志保と不思議な夏休み  作者: 碧川亜理沙
一章
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変わった友だちと変わった街⑦


 衝撃的な事実を聞いた次の日。

 いつもの集合場所へ向かおうと思っていた矢先、その日はひまりとかげやが家までやって来た。


 特にかげやが暑そうだったので、志保は2人に縁側に座るように促し、台所からついできた麦茶の入ったコップを渡す。

 そして、早速、昨日聞いた事実を2人に話して聞かせた。


「あれ、わたし、志保ちゃんに話してなかったっけ?」

 半ば予想していた答えが返ってきた。

「何にも聞いてないよ」

「あらら。ひまり、話した気になってたかも」

「だって志保ちゃん、普通にすれ違ってたのにスルーしてるから、知ってるもんだと思ってた」などと言われてしまった。


 思えば、ここに来た頃は、周りの風景などに目が移り、あまり街の人たちのことは気にしていなかったように思う。だんだんと慣れてきて、今度は人々に目を向けたとたんのことだったのかもしれない。


「それでも、ひとこと言ってよ」

 ついそう言ってしまうのは、仕方がないことか。

「ごめんって。だって、おじちゃんから慣れるまでは志保ちゃんに言わないようにって言われてたんだもん」

「おじいちゃんが……?」

「うん。街の人たちにもね。志保が驚くだろうから、慣れるまでは普通の人間みたくしててくれないかって、言ってたもん」

 そう聞くと、これは祖父なりに、志保がこの街に馴染みやすいように配慮してくれたのかもしれない。

 そう思うと、これ以上文句を言うのもはばかられてしまった。




 ひまりとかげやが一息つけたところで、志保たち3人はいつも通り街の中をぶらつき始める。

「ねぇ、ひまりとかげやも、もしかしたらあやかしとかだったりするの?」

 志保はそれとなく尋ねてみる。昨日、祖父から話を聞いたあと、いつも遊んでいる彼らは果たして自分と同じなのだろうか……と疑問に思ったのだ。


「んーん、私たちはちゃんと人間ですよ! ほら、しっぽとか羽とかないでしょ?」

 ひまりはその場でくるりと回ってみせ、隣を歩いてたかげやにぶつかって怒られた。


「でもね、陰と陽がどうのこうのってのは、大人の人たちによく言われる」

「陰と陽……?」

 志保は聞きなれない言葉に首をかしげる。

「なぁに、それ」

「よく分かんない。なんかこの街では、男女の双子が一定期間で産まれることがあって。その双子は、陰と陽の循環をなんちゃらするから、街のみんなで大事に育てて……みたいな?」

「ひまり、説明になってない」

 隣でかげやがぼそっと突っ込んだけど、まさしくひまりの説明は説明になっていなかった。全くもって、分からない。

「かげやは詳しく知ってるの?」

 志保はかげやにも聞いてみたけれど、

「聞いたけど、難しすぎて分からなかったから覚えてない」

 という、実にかげやらしい返答が返ってきた。


 ──ひまりとかげやって、双子なのに正反対かと思ったけど、こういうマイペースそうなところがすごい似てる……。


「つまり、よく分からないけど、2人は普通の人と同じってことなんだよね?」

「まぁ、そういうことかな!」

 結局詳しくは分からなかったけど、3人とも深く考えることなく、今日は何をするかという話へ、自然に切り替わっていった。





 結局今日も、夕方のチャイムがなるまで、とことん街の中を遊び歩き回った。

 志保は、今まで以上に、周囲を気にしながら歩いた。

 そうすると、やはり今まで気づかなかったが、日常に溶け込む形で普通の人とは違う人たちが生活していた。

 まだ少し慣れない光景だけど、志保はこの街のことを受け入れつつあった。


 家に帰り、夕飯を食べてお腹いっぱいになると、疲れているのかまぶたがだんだん重くなってくる。

 もうお風呂に入って寝ようかと思った時、祖父の携帯に父から電話がかかってきた。


 祖父が短く話したあと、携帯を志保に手渡す。

「お父さん?」

『志保か。何だ、眠そうだな』

 電話越しでも分かるくらいなのか、父がそう言った。


 簡単に近況報告すると共に、父にも昨日今日であったできごとを話した。

『……そう言えば、伝えてなかったっけ』

「何にも聞いてないよ」

 どうやら父も、うっかりなのか、単に忘れていただけなのかは分からないけれど、この街のことについては既知だったようだ。

『でも、街の奴らはみんないい人たちだ。父さんや志保たちと、ほとんど何も変わらない。だから、別に怖がる必要とかはないからな』

「うん。まだあんまり話したことないけど、街の人たち、いい人いっぱいだよ」

『まぁ、もし何かあったら、おじいちゃんに聞けば、多分いろいろ教えてくれるはずだからな』

「うん、わかった」

 それから父の近況も聞いたところで、携帯をまた祖父へと手渡した。


「……あ、お父さんに、ここにいた時の話聞くの忘れた」

 そろそろお風呂に行こうかと、寝間着を取りに居間を出たところで、ふっと思い出した。

 祖父が父も小さい頃、ここに住んでいたことがあるという話をしていたので、その時のことを聞いてみようと思っていたのだ。

「……今度でいいかな」

 海外との電話は、お金がけっこうかかることがあるという話を聞いている。いつも祖父から電話を借りているので、あまり迷惑はかけたくない。

 志保は次に電話がかかってきた時は、絶対に父に子どもの頃の話を聞こうと決意して、風呂場へと向かった。


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