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志保と不思議な夏休み  作者: 碧川亜理沙
プロローグ
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プロローグ 夏休みの始まり①


「お父さん……やっぱり私もついてっちゃダメ?」


 夕食後のココアを飲みながら、志保(しほ)は目の前に座る父親に尋ねる。

 答えは分かりきっている質問だけど、これが最後と半ば自分に言い聞かせるように聞いてみた。

「志保……ごめんな。今回はダメだ」

 何度も見た申し訳ないような、困ったような顔をして言う父親に、志保は「そっか」と返事をする。


 先月末から言われていたことで、今回ばかりは変わらない答えだと知っていた。だけど小学校最後の夏休みなのに、という気持ちもあった。

 でも困らせたくないという気持ちも本心であり、

「うん、ごめんね。何回も聞いて」

 自分のわがままは胸の中にしまっておく。

「お前が謝ることじゃない。だけど、今回ばかりは海外だし、日本と違って安全ともいかないから……」


 父親の仕事柄、よくいろいろな場所へ行く。近場の場合は一緒に連れて行ってくれたり、遠い場合でも父ひとりでの仕事の時は一緒について行くこともあった。


 だけど今度は大勢の人たちと海外での仕事。しかもちょうど志保の小学校の夏休みとかぶってしまっていた。


 小学校最後の夏休み。一緒にどこかお出かけでもしようかと話していたころの海外出張だった。

 本当は行かないでほしいと思っている。だけど、志保のためにと働く父の姿を知っているため、困らしてしまうようなことは言えなかった。


「おじいちゃんの家ってどんなところ?」


 志保は夏休みの間、父方の祖父の家で過ごすことになっている。

 祖父には何度か会っているが、いつも志保たちの家に来てくれていたので、祖父の家に行ったことはない。しかし去年の冬、仕事で足を悪くしてしまい、あまり遠出するのが難しいということで、祖父の家のほうに行くことになったのだ。


「どんなところか……志保も一回行ったことあるぞ」

「え、本当?」


 そうは言うものの、志保にはまったく覚えがない。

「本当、本当。沙耶香(さやか)と3人で。確か志保が小さかった時だから……1歳くらいの時かな」

「……そんなの覚えているわけないじゃん」

 1歳の頃の記憶なんて、覚えているわけがない。でも母と一緒に出かけたという思い出だったのなら、残っていてほしかったとも思う。


「はは、それもそっか。場所は浅草のほうだよ。どんなところ……んー、口で説明するのはちょっと難しいな。でも、いいところだ。志保も慣れたらきっと楽しいと思うよ」

「浅草……テレビでたまに見るところだよね」

「あぁ、そうだな。と言っても、家があるところは、観光地からは少し外れているところだけど」


 テレビで映っている赤い大きな提灯しかイメージとしてはない。そんなところに祖父の家があるというので、志保は少しだけわくわくしてきた。


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