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タマゴあたまの短編集

伝説の木の下で

※たいあっぷにも掲載しています。現在イラストレーターさん募集中です!

https://tieupnovels.com/creator/user/Tamago_atama

『伝説の木の下で告白すると結ばれる』


 そんな噂が俺の通っている高校にある。

 といっても、今日でその高校ともお別れなんだけどね。

 卒業式も終わり、高校生活を惜しんだり友達と抱き合ったり。今はそんな時間帯。

 俺は今日、一つ下の後輩――沙月(さつき)――に告白する。


「先輩。話って何ですか?」

「おう。来たか。この木のこと覚えてるか?」

「覚えてますよ。私が入部して初めて描いたものですよね。『これが美術部の伝統だ』って」


 美術部では新入部員の歓迎と力試しを兼ねて『伝説の木』の絵を部員全員で描く。

 沙月は誰よりも上手く絵を描いた。同じ新入部員はもちろん、当時の三年生でさえ褒めたたえるほどだった。


 その才能や実力に嫉妬し、あるいは自分の実力との差に失望し、沙月の陰口を叩く者が出てきた。


 ――――

「私、部活辞めようかと思うんです」

「なんで? あんなに絵が上手いのに」

「私がいると部の空気が悪くなっているような気がするんです。みんな私のこと嫌ってるっていうか」

「そうか。じゃあ辞めろよ。俺も辞めるから」

「ええ!? あっさりしすぎですよ! しかも、なんで先輩まで辞めるんですか!」

「いつだったかな。沙月が『部活を忘れてただ絵を描いていたい』って言ったことあるだろ?」

「はい。言いました」

「それ聞いて思ったんだ。『そういえば部活以外で絵を描いていないな』って。だから部活のない日に絵を描いてみたんだよ。するとびっくり! 今までで最高の出来だったんだよ」

「そうなんですか」

「だからさ。沙月も描いてみろよ。部活なんてしがらみ忘れてさ。いい景色見つけたんだ。今度連れて行ってやろうか?」

「ふふ。変な先輩」

 ――――


 あれから沙月と色々な場所で絵を描いた。自由気ままに。思うがままに。

 そうしていくうちに俺は沙月に惹かれていった。いや、ひょっとするともっと前からだったかもしれない。


 俺は意を決した。


「沙月、俺と付き合ってくれ!」

「ごめんなさい。私好きな人がいるんです」


 即答だった。泣きたい。


「私の好きな人は一つ年上なんです。つまり、今日卒業しちゃったんです。私も受験生だし、勉強に集中するために告白しないって決めてたんです。振られちゃったらメンタルやられそうですし。それに、私の目指している大学はその人と同じなので、合格できたら告白しようと思っているんです」


 そこで言葉を切り、深呼吸してから沙月は言った。


「だからあと一年待っててくださいね。先輩」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少ない文字数で2人がどのような学校生活を送っていたのか分かりやすくて面白かったです! 後輩の最後のセリフは素敵だなと思いました! [気になる点] 1年後が気になります! [一言] これから…
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