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6 2日目

 目が覚めて最初に見たのは木でできた天井だった。今自分がどこにいるのか分からなくて、ギョッと飛び起きる。

 そして、思い出す。僕は昨日10歳の誕生日を迎えて、この獣医学校に来ることになったことを。


 うつらうつらとしながら、力の入らない手でベッドの隣にある窓のカーテンをシャッと開けて、景色を眺める。雲がところどころ赤色になっていて、森は霧に覆われていて背の高い木だけ見える。

 窓を開けると冷えた空気が部屋中に入ってくる。いつの間にか目がパッチリと冴えてしまった。


 時計が部屋にかかっていないから、ちゃんとした時間は分からない。けれど、誰かが歩いている足音が聞こえてくる。


 スウェットを脱いで、制服に着替える。緑色がベースの、シンプルなデザインのもの。さっきまでは少し肌寒かったのに、制服を着るとその寒さがすぅっと消えていった。

 その後に、洗面台の前に立ち顔をバシャバシャと洗う。トイレは廊下の突き当たりにあり、行くには部屋を出なくてはいけないけど、洗面台は部屋ごとに1つずつあるんだって。

 髪の毛がぐしゃぐしゃになっていたから、手ぐしで整える。歯ブラシは持ってないから水を口に含み、うがいだけした。あとで誰かに、日用品はどこで買えばいいのか聞いてみようと思った。


 鏡に映った自分を見て、一昨日の水に映った自分との違いにびっくりする。

 髪の毛は部屋の電気を受けてキラキラしていて、顔も薄汚れてない。着ているのはピシッとした制服。一日でこんなに変わるなんて、とポカンとした顔で鏡に映った自分を見る。

 大っ嫌いな僕のこの『灰色に近い黒目』。最弱の目の色。今日は久しぶりに、鋭利なもので突き刺してこの色を消してしまいたいとは、思わなかった。



 扉を開けて外に出て、食堂へと向かう。ガチャガチャと皿の音が聞こえてきた。


「クリストファー、おはよう」


 ちょうどトレーに食パンを取っていたソラに挨拶される。僕も慌てて、おはよう、と返した。

 ノーラとエレノアも食事を作り終えたからか、席に座って食べ始めていた。ケビンとベンは今日はここで朝食を食べないらしい。


「おはよう。…ここ、座ってもいい?」


「ええ、構わないわ。どの席に座ってもいいのよ」


「そっか、ありがとう」


 僕もクロワッサンをトースターに入れると、きゅうりとキャベツ、卵のサラダを皿に盛り付けて、ノーラの隣に座った。トースターの、焼きあがったというチンッと音がしたので、立ち上がってクロワッサンを皿に載せると、ついでにリンゴジュースも持って席に戻った。


 僕が食べ始める頃にはエレノアは食べ終わっていて、今日は街に降りるから何かいるものあるか?、と聞かれた。

 僕は歯ブラシと歯磨き粉をお願いした。明日の朝に帰ってくるから、その時に持ってきてくれるとのこと。お金は出世払いでいーよ、と言われた。時計はたくさん物置部屋に置いてあるから、あとで気に入ったのを持っていっていいらしい。


 クロワッサンはサクサクしてて、中はもっちりで美味しい。ごまのドレッシングがサラダによく合っていて、サラダも美味しかった。

 僕がクロワッサンを食べ終わった頃、ノーラは部屋に戻っていった。午前中は1階の図書室で手紙を書いてるから、何か困ったら来るのよと言われた。

 そして、エレノアが街に降りるから昼食作りを手伝って欲しい、と言われてもちろん、と返した。

 ソラも食パンに目玉焼き、ハム、レタスを挟んだサンドイッチを食べ終わり、今日は森で過ごし昼まで帰らないから、困ったら他の人に聞きに行ってな、と告げられる。


 木のボードの、朝食のところには、ソラ、エレノア、ノーラ、僕、そしてもう一人知らない人の名前が書いてある。多分まだ会ってない人だ。

 フォークに慣れてないから、サラダを食べるのに思ったより苦戦する。でも、僕はまだゆっくり食べた方がいいらしいから、この速度でいいと思う。

 フォークやスプーンなんて、使ったことがないから手がプルプル震えてしまう。お姉ちゃんに使い方は教わっているとはいっても、実際に使うのは初めて。でも、なんとなくコツを掴んできたような気がする。



「おはようございます!!」


 白色の髪に、赤色の目をした僕と同い年ぐらいの少女が食堂に飛び込んできた。時計は朝7時を指していた。


「もしかして新しい人!?あのね、私はリズ!よろしくね!」


「僕はクリストファーです!よろしくね」


 朝からハイテンションな人だ、というのが最初の印象だった。パタパタとトレーの方へと駆け寄り、食パンや目玉焼きを山盛りに盛り付けた。

 そのトレーを僕の真正面に置いたあとで、ブルーベリーのマフィンとクッキーを持ってきて、いただきます!と満面の笑みで叫んだ。

 そして勢い良くバクバクと食べ始める。わぁっ、って思うほど美味しそうに食べていく。


 僕もチョコレートクッキーを持ってくると、サクリと食べた。チョコレートはちょうどいい甘さで、何枚でも食べられそうな感じがする。


「ねえねえ、クリストファーくん!君はいつここに来たの?」


「昨日の昼ぐらい…かな?」


「そっかー!あのね、私はここから見える、あの1番高い木!分かる?あの木に登ってずっと寝てたの!森の魔物たちはみんな優しいから、あそこで寝てても怒られないよ!クリストファーくんにもオススメ!」


「落ちないの?」


「んーっとね、バランス鍛えたら落ちなくなるよ!この学校の、1階のお風呂の隣にある部屋にはもう行った?トレーニングルームっていうところでね、バランスボールとかなんか色々あるから行ってみて!」


「ほんと?楽しそう!今日、行ってみるよ」


「うん!私はまだ食べるから、ここでね!ばいばい!」


 手を振って別れると、最初に物置部屋に行って、時計を貰うことにした。シンプルな白色の掛け時計と、文字盤が青色の腕時計を選ぶ。ついでに、学校内の地図を確認して、トレーニングルームの場所を覚えた。

 白色の掛け時計を部屋に掛けて、腕時計は左手に。トイレに行ったあと、食堂を通って階段を下り、1階のトレーニングルームへ向かった。

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