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立志生の目指す未来 【休載中】  作者: 海斗
第二章  ここから始まる……。 東京襲撃編(前編)
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第二話  トラブルメーカー


「でも、本当に大丈夫なんですか?」

「ええ。もしかしたらデマって可能性あるし、あるいは今の思考を利用した騙し討ちの可能性も否定はできないわよ。どうなるかはその時になってみないとわからないわ。もう起きてしまったことだから。後戻りはできない」


「でも、だったらその伝えられた情報は信用できるんですか?」



 彼らの荷物のほとんどはバスのトランクにあるため、すぐに済ませて話に戻った。

 そして、この状況に不安を抱えている様子の荒哉は話をすることで気を紛らわせようとしていた。だが、彼の質問の内容は事態の予測を広げる意見でもあった。



「そうね。一応、連絡を入れてきたのは戦人防衛省よ。あまり気にしないほうがいいかもしれないけど、情報操作の可能性もあるわね。正直言って面倒くさい話よ。技術の進歩で可能性が色々と出てくる。それに対処できるかなんて難しいわ。できなくはないんだけど、今の状況は起こったあとの状況だから。それにテンちゃんが言ったでしょ?ここで話をしていても懸念は広がるだけだって。だから、その話は一旦、中断」



「あっ。そうでしたね。天道先輩に言われてました。すみません」



 荒哉は自分の言動に関しての謝罪をする。それに対して、摩耶は頷いて受け入れて口を開いた。



「確かに私はそう言いましたが、八千戈くんや佐々木さんは今回、初めての学校外。特に八千戈くんは緊張の様子が見られましたからそうやって気を紛らわすのは当然の行動ですよ。しかもトラブルも発生したので」


「あれ?なんか、テンちゃんがフォローする立場なの?私がまるでスパルタの先輩みたいじゃない」

「いえ、別に」

「むう~意地悪ぅ」

「別に図ったわけじゃないです。あと威厳を保って下さい」

「は~い。わかりましたあ~」



 庵奈は脱力感のある話し方で返事をすると、すぐに荒哉と累和にこちらを向くように促した。二人は生徒会長の様子を見るとどことなく真剣な様子だった。二人は彼女の切り替えの早さに少し目を見開いて驚いた様子だった。



「いい?あなた達の今回の目的は、自分達の武器を選ぶこと。これからの人生に大きな影響を与える。さっき話したトラブルの件は私達に任せるて一週間は自分のことに集中する。先輩があなた達を守ってあげる。自分のやるべきことを全うするの」


「「はい!」」



 荒哉達は彼女から詳しくは聞かされていないため、『武器を選ぶ』とは今になって聞かされた二人だったが出発前までの話の流れで察しがついていた。しかし、荒哉は密かに疑問に思っていた。なぜ全容を伝えないのかと。



「さて。到着したようね」



 その言葉とともにリニア高速バスがリニア専用の空中道路から降りる音がする。出口は通常の高速道路と同じようになっていて降りたあとは直ちに電導リニアシフトから切り替わることで陸路を走れるようになる。どちらも電動。

 そして、その降りる際の音というのがシフトが切り替わると同時に陸路に着くタイヤの小さな衝撃が音として伝わったもの。


 陸路に着いてからわずか五分ほどで大学の正門に到着。門をAIロボットの警備員に開けてもらい敷地内に入っていく。前方や後続には他県の学生バスがずらりと並んでいる。そのほとんどは通常の高速バス。中には荒哉達の乗っているようなリニア高速バスも見られる。 


 荒哉達とその前方や後続のバスが次々と大学内に入っていき、前方にいたバスについて行き巨大な駐車スーペスに着く。その数は47台。日本全国から同年代の問題児が集まった瞬間である。


 荒哉達一行はバスを降りて庵奈と摩耶、琉菜の上級生三人が先頭となり下級生の荒哉と累和の二人があとをついて行く形になった。

 ここから研究所までの距離はさほど遠くなかったため、一行は徒歩で向かうことに。

 その途中――――。



「荒哉さん。一つ、質問したいことが……」

「え?ああ、いいけど」



 累和はどこか申し訳なさそうにして荒哉に問いかける。



「あの……荒哉さんって適正武器ってなんです?」

「刀剣、だけど。それがどうかした?」

「いえ。まだ荒哉さんの戦闘スタイルを一切見たことがないのでどんなものかなと」


「あ~それかあ~。いや、まあ。剣の扱いは人並み外れてるとかそういうのはなかったけど、上達が早かったことは覚えてる。なんかVRのシュミレーション空間で模擬戦やったりしてた。ただ、一つ気がかりがあってさ」


「気がかり、ですか?」

「うん。その…小さいころの記憶が思い出せなくなって……。もうホント、小学生あたりのころの記憶も曖昧で。それに…――」


(なに話してんの……?)

「え?」



 荒哉がそう言いかけた瞬間、二人の耳元でささやくような声が聞こえて二人はその場に止まり、そこからそのまま振り返る。

 荒哉はこの瞬間的な出来事の間で背後に人のような気配を感じていた。突発的な出来事ながら彼には状況がある程度、理解できていた。そんな並外れたことをできる人間がどこにいるとでも思うくらいの話だが、彼が気にすることなかった。


 そして、二人が背後に振り返った途端、目に映ったのは一人の少年。髪型はオールバックでニヤニヤとした表情が鼻につくような具合にいやらしい。そんな印象とは正反対に桜色という優しい色の制服。アクセサリーが悪目立ちする。

 その男子生徒と荒哉はお互いに視線が合うなり、男子生徒のほうが不敵な笑みを浮かべる。



「誰?」

「お~~い、おい。酷くないか?第一声がそれってよ」

「そちらこそ…初対面の相手に変な挨拶から入るのはどうかと思いますが…」


「あ~。大丈夫。問題ない。俺がよければそれでいいの」



 荒哉の中では一分にも満たない会話で、初対面の少年の印象が決まった。印象としては最悪と言ったところ。

 だが、そんなこととは知らない累和は驚いて高揚感のある様子でその男子生徒に話しかける。



「あ、あの…あなたって、草薙(くさなぎ)神也(じんや)さんですか?」


「おっ!こいつ違って君は俺のことがわかったんだね!いやー。こんな失礼なヤツと一緒にいると嫌じゃないの?なんなら俺と…」

「本人がいる前で普通言うか?それ」


「あ?なんだよ。ノリが悪いヤツは嫌いだね」

「なんだと?」


「ちょ、お、お二人とも…」



 喧嘩寸前の一触即発の状況。なんとかこの場を収めようとする累和だが、二人には届かず。累和は困った様子になって必死に止めようとする。


 そんな中、先頭にいた庵奈や摩耶、琉菜の三人は後ろから聞こえてくる荒い二つの声を耳にした。三人は真後ろとあって()()()()がいると感づき、後ろを振り返る。


 そして案の定、後ろには言い争っている荒哉とそれを止めようとする累和がいたのだが、三人は荒哉が言い争っている相手を見て背筋に電撃が走ったような感覚に襲われる。この状況は三人とって非常に好ましくない状況だった。



「あら。あなたは、草薙家の人間では?」

「あ?……って。ババアか」

「今、なんて言いましたか?御曹司にして草薙家の次期当主、草薙神也様。と言っても双麻様と競り合って負けたと聞きましたので過去形ですね。相変わらず懲りないようで。」



 荒哉と神也が言い争っているにもかかわらず、その状況に屈することなく横槍を入れる庵奈。同時にさりげない牽制が始まる。



「ハッ。そのことかよ。残念ながらそれは無効。公式試合で俺は勝ったからな」


「あの試合ですか…。堂々と言えたものですね」



 荒哉と累和は十二族の人間の話を曖昧に理解することしかできなかった。話の内容自体は理解できるようだったが、世間的な話ではないためどういった経緯かは、二人は知らない。



「まあ。今は、どうでもいい話です。それより、うちの生徒がご迷惑を掛けたことは謝罪します。が、先の姿は見苦しいですよ」


「フッ。それだってどうでもいいだろ。とりあえず()()()を見れてよかったよ。じゃあ、な!」



 そう言って何事もなかったかのように庵奈達のいる方向に向かって行き、この場をあとにする神也。庵奈は深く深呼吸をして怒りを静めている様子を見せてつつも、荒哉と累和の元へ行く。



「二人とも。大丈夫ですか?」


「は、はい。大丈夫です」

「僕も大丈夫です」


「よかった。とりあえず、よくやったと言えますよ」

「「え?」」


「彼は世間には知られてはいませんが、十二族の間ではトラブルメーカーとまで言われていますから。この一週間、気をつけてくださいね」



 荒哉と累和は返事をして再び一行も研究所に向かった。これで言い争いは終わったが、荒哉の中では先の神也の不敵な笑みが頭の中から離れないでいた。しつこくまとわり付くように。

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