ー対話と決裂ー
ー特殊警察本部ーそこは、魔物に対して無力な者たちの最後の砦である。したがって何よりも強固で市民に安心を与えるものでなくてはいけない。高くそびえ立つその建物は、頼るものには勇ましく、向かうものには畏怖を与える佇まいをしていた。
しかし、これからそこに乗り込む彼らにはただのコンクリートの塊にでも見えているかのように、落ち着いていた。
影山のゲートを使い”TRUMP”の面々は特殊警察本部の前まで来ていた。
藤堂は門の前に立つ衛兵に召喚状を見せる。
「”TRUMP”のJOKERさんですね。話は聞いております。ついてきてください。」
「よろしくおねがいします。」
藤堂たちは衛兵に続いて本部へと入っていく。
「ひゃー、お金かかってるねこの建物。一見見た目コンクリートみたいだけど、これ全部魔物に対して強い耐性をもつ魔抗岩だぜ。」
中に入って早々そんなことを口にするのは、聖辰巳だ。彼は思ったことをすぐに口にする質である。
「ここは、この国にとって最大の砦です。当然の設備ですよ。」
聖の発言に対して、衛兵は少しムカついた様にそう答える。
「怖い顔しなさんな、悪かったよ衛兵さん。」
聖は対して思ってもなさそうに衛兵に謝罪する。
「着きましたよ皆さん。本部長たちが中でお待ちです。」
藤堂たちは重厚そうな扉を開き中に入っていく。そこには、本部長並びに数人の部隊長たちが待っていた。
「よく来てくれた”TRUMP”諸君。私が特殊警察本部本部長の朝比奈だ。よろしく。」
朝比奈が藤堂を立ちを笑顔で向かい入れる。しかし朝比奈の後方では部隊長たちが警戒心を持ちながら待機している。
「はじめまして、朝比奈さん。私が”TRUMP”リーダーのJOKERです。本名を明かさないことは先に謝っておきます。まだあなた方を信頼しているわけではないので。」
「おいっ!随分と生意気な態度をとってくれるな、民間の異能屋風情が!」
朝比奈の後ろにいた、部隊長の一人黒瀬蓮が声を荒げる。
「やろうってのか!ここでおっ始めてもいいんだぞ!」
聖が噛み付くように言い返す。
「やめないか!」
「やめろ!」
朝比奈と藤堂は黒瀬と聖に対して、それぞれ待ったをかける。
「俺たちは話し合いに来たはずだ、そうでしょう朝比奈さん。」
「ああ、その通りだ。」
「一体私達にどのような要件が?」
「我々特殊警察としてもあなた達ほどの力を持った民間の異能屋を野放しにしておくことはできない。」
「では、排除するということ宣言するためにわざわざ我々を呼んだのですか?」
「結論を急いでもらっては困る。我々としてももっと平和的な提案をしようということだ。」
「一体どんな提案を?」
「結論から言おう、異能屋”TRUMP”を国家公認の民間異能屋にしようと考えている。」
「ー予想していた提案の中では最もマシな選択を用意してきたようだが、結局答えは変わらない。」
藤堂は心のなかでそう思うと、強調するようにこう告げる。
「それは叶わぬ提案だ。我々にとって国に抱えられるというのは目的に反する。」
朝比奈の表情が一段暗くなる。
「理由を聞いても?」
「答える義理はこちらにはない。」
「本当にその選択でいいのか?”TRUMP”はお尋ね者になるぞ。」
「覚悟の上だ。」
藤堂と朝比奈が睨み合う。
「では、交渉は決裂だ。ここで消えてもらう。」
最初に見せた朝比奈の笑顔は、その一言とともに消えていた。
「部隊長たちあとは頼む。」
「「「承知しました!」」」
部隊長たちが”TRUMP”に対して、戦闘態勢をとる。
「結局こうなってしまったか。まぁわかっていたことだがな。」
藤堂ががそう言うと”TRUMP”のメンバーも戦闘態勢をとる。
「影山のゲートを使って各自一度バラける、各々敵を撃破して各自戦闘が終わり次第トイ・ボックスに帰還しろ!」
「「「ラジャー!」」」
藤堂の号令とともに特殊部隊と”TRUMP”の戦闘の火蓋が切られた。
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