[5]手描きの地図 6/5更新予定
ここから先は編集中の為、更新をお待ち下さい。
私達が倉庫と呼ぶその部屋は、孤児院で使う道具をしまうだけの教室のことだった。
段ボールが無造作においてあるその部屋は、孤児院の先生でさえ滅多に入らず、二人きりで話すには丁度よい部屋だった。
私達は倉庫に入り、窓際に置いてある机に座った。
埃が舞うこの部屋は、いつもの教室とは異なる匂いがした。
私はどう話し出すか少し迷って、ノアの方を見た。
ノアは私の事を静かに見守っていた。
窓の外は、小さな雲が連なり日射しが私を照らしている。
私はポケットの中にしまっていた手紙を持って、そっとノアの前に差し出した。
「これ。先生から貰ったんだ。」
ノアは封筒を受け取り視線を返し、口を開いた。
「封筒の中も見ていいかな。」
「うん、いいよ。」
ノアは手紙を取り出し、手紙を読み出した。
私は手紙を読むノアの顔を覗き込んだ。
いつも私達に見せる笑顔は次第に消えて、次第に目が潤んでいた。
手紙が読み終わる頃、ノアは上を見上げてこう言った。
「よかったなぁ。」
しみじみと言うノアを見て私は気がついた。
きっとこの言葉が欲しかったのだと。
そして私はもう一つ、ノアに尋ねたい事があった。
あの手紙に書いてある〝穴〟という文字。
きっとこれは洞窟探検者に関する事だろうと考えていた。
洞窟探検者になったノアは知っているかも知れないと思って、私は手紙の〝穴〟の文字を指して尋ねた。
「これって洞窟の事?」
「うーん」とノアは悩む。
「多分そうかも知れないかな。僕も洞窟探検者になったばかりで分からない。」
期待外れの答えで私は少し落胆した。
そんな私を励まそうとノアは慌てて口を開いた。
「洞窟の中に入ったら、きっと手紙の意味が分かると思うよ。」
「そうだね。」
私も洞窟に入ったら、手紙の意味が分かる気がした。
そして私は何よりそうであって欲しいと強く願っていた。