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宝石龍の生き残り計画  作者: おもち丸
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9話

人の行き交う中で出来たであろう道を道標にして歩き始めてから、4時間ほど経った頃だったであろうか。



森には洞窟で見かけた【蛍光キノコ(フロライト・マッシュ)】もあったが、

花びらが半透明になっていて触れる度に色を変える美しくも不思議な花が陽の光を反射して輝いていたり、膨らんだ部分に触れると中の種が散弾銃のごとく弾ける柘榴のような実(これは咄嗟に魔法で石の壁を作りガードした)、近くを通る小動物に襲いかかる肉食系の動く木(やはり襲われたが、【ストーン・バレット 砲】で風穴をブチ開けた)など、地球にはない草花たちについつい目を奪われてしまう。


そういった不思議を楽しみ、時には森に潜む魔物に襲われ肝を冷やし、時には道を見失いかけながらもなんとか進んでいたが、ふと、それまで鉱山からずっと続いていた一本道が、2つに分かれる場所へと着いてしまった。


ちなみにその分岐地点には木で作られた案内板が立っていたが、人間の話す言葉は不思議と理解できても、文字までは読めなかった。




-どうせ言葉を理解できるようにしてくれるなら、もうちょいオマケしてくれたっていいじゃないか-




自分をここへ生まれ変わらせた神のようなモノがもし居るならばと、そう心の中で愚痴る。



(さて、どうするか…)



分かれてるとはいえ、まだちゃんと道にはなっている。

それぞれの道の先に目をやっても、どちらも周囲の木々が影となり徐々に濃くなる暗闇が続くばかりだ。


(どちらも獣道になっているなら、どっちに進んでも人が居る場所に続いているってことだよな? なら、どっちに進んでも『人里へ出る』という目的は果たせそうだな)


とはいえ、もう少しばかり情報は欲しい。


辺りを見回すと、背の高い木々の中でも一際どっしりと太く、頭一つ抜けた高さのある木があることに気付いた。



(あの木の上から見たら何か分かるかな)



身体の小さな自分が木の頂上付近まで登るのは骨が折れそうだ。

だが、今夜寝る所も確保しなくてはならない。

地面に穴を掘って隠れた方が簡単だが、せっかく洞窟から出てきたばかりなのだ。 今夜ぐらいはこの景色を眺めながら休みたい。



登って、この森がどのように広がっているのか確かめる。



そう決めた俺は、その木に近づくとおもむろにその幹に爪を立てる。


これまでの経験上、本気で力を込めて振り払えばアースバットのような岩のように硬い物をも切り裂ける。

木を登る上でこの手の爪が邪魔になるようなら、木登り自体を諦めなければならない。


幸い木はかなり頑丈だったようで、爪先が幹に食い込む程度でそこから裂ける様子もない。




(これならイケそうだな)




あまり木を見上げ過ぎると、その高さに登る意思が消えてしまいそうなのでなるべく上を見ないようにしてから、指に力を込め始めるのだった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





それは、一際大きな木のおよそ半分ほど登った頃だった。




日が傾き夕闇が辺りを覆い始めると、もともと背の高い木々に光が遮られる森の中は一足先に暗闇に包まれ、【蛍光キノコ】などの夜光性の植物が放つ僅かな明かりだけがその付近を照らすのみとなった。


半分登るだけで力尽きてしまった俺は、太く幅がある安定した枝を探して休んでいた。


半分登っただけで力尽きるのかとも言われそうだが、自分の身体はまだ小さいのに対し木は自分が人間だった頃よりも何倍も高いのだ。

足が短いせいでほぼ腕の力で登っていたこともあり、これだけ登るだけでもだいぶ疲れるのだった。


まだこの高さでは森全体を見下ろすことはできず、同じ目線の高さにあるものと言えば葉っぱくらいしかないので景色を堪能することは諦めている。

そうして身体を横たえて休んでいると、疲労を回復しようとしてか眠気がじわじわと襲ってくる。


逆らい難い睡魔に目を閉じてうつらうつらしていると、ふと下の方から微かな音がした。

重く閉ざした瞼はそのままに耳をそばだててみると、分かれ道の片方からナニかが歩いてくる足音がした。


見つかると襲われてしまうかも知れないので、直ぐに【隠蔽】の魔法で身を隠してから目を見開き、音のした方をじっと見てみる。


するとどうやら人間の男らしき影がおよそ3人、大きな荷車を引きながら、段々とこちらの方へ近づいてくる。


この世界に来て初めて見る人間。

美女や美少女などではなく、男達だと声とシルエットから予想はしていた。


だがそれが、某世紀末漫画に登場する『ヒャッハー!!』のようなハゲやモヒカンのゴツイ男達だとは思いたくはなかった。



これもテンプレではあるのだろう。

しかし、目と心には非常に優しくない。



その格好はともかく、姿形は地球の人間と変わりないように見える。



物音を立てないよう息を殺していると、静かな森にはそいつらの話すの声だけが響く。




「---大体よ、いきなり鉱山の閉鎖なんざ受け入れられっかっての!」

「ったくマジでよ、ギルマスも未確認の魔物が現れた可能性があるからだとかなんとか言ってやがったけどよ、こちとら生活がかかってんだぞ。 ハイそうですかって言えるかっつーの」

「鉱山が閉鎖中ってことは、逆に誰も居ねぇ今がチャンスってことだよな! 俺たちが鉱石や魔石、魔唱石なんかを大量に持って帰れば一気に稼げるってことじゃねぇか!」



そういった話をしながら、そのまま鉱山へと続く一本道へと歩き去っていく。

どうやらこちらには気付かなかったようだ。




そのまま男たちの声が聞こえなくなってもしばらくじっと待ってから、ようやく【隠蔽】の魔法を解除する。




(今のやり取りはどう言うことだろうか?)




わからないなりにも、男達から得られた情報は大きかった。




まず、男達が歩いて来た方へ向かえば人里へ出れる可能性が高いこと。

次に、自分が出て来た鉱山が現在閉鎖されているらしいこと。

通りでエナたちに会って以来、今日に到るまでほとんど冒険者に遭遇しなかった訳だ。

そしてその鉱山の閉鎖には、未確認の新たな魔物が現れていること。




(---って、これはもしかして俺のことを言ってるのか?!)




鉱山の全てを周った訳ではないが、中で遭遇した魔物で自分と同じ姿のモノはついに見かけることは無かった。




(それに… 魔石や魔唱石、だって?)




鉱石は行き先が鉱山であり、メタルリザードやメタルゴーレムなどが居たりしたことから、そいつらを倒して剥いだり地道に掘削すれば得られるものなのだろうとは思う。



だが、魔石や魔唱石とは何だろうか。



(あの、広間に埋まっていた黄色い魔力を帯びていた石… あれが魔石か魔唱石のどちらかなんだろうな)



とは思うものの、もしそうだった所で結局あの石がどちらで、どのような違いがあるのかまでは分からない。

どうやら鉱山では、魔物を倒しその身を素材として剥ぐ以外にも色々得られるものはあるようだ。




-そして。




俺も倒した相手の一部を食うことはあったけれど。


食うものがいれば食われるものも居るのだと分かっていたつもりだけれども。


あの手の輩にとってはやはり俺も魔物-


つまり()()()()なのだろう。

数多ある素晴らしい作品たちの中からこのお話をご覧下さり、本当にありがとうございます!




※誤字を見つけて報告して下さった方々へ、御礼申し上げます。


沢山あったのにも関わらず全然気付いておりませんでした汗


ありがとうございます。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

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