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宝石龍の生き残り計画  作者: おもち丸
4/47

4話

光る草やキノコが増えた訳でもないのに、洞窟内が明るくなってきた。


洞窟に穴が空いていて、そこに陽射しがさしている。

-そんな状況でなければ、外が近いと思われる。


もう直ぐ外に出られるという期待から、自然と動かす足が速くなる。

ここまで来るのに、途中で道に迷ってしまったせいでおよそ5日ぐらいかかってしまった。幸いにもこの身体は、飯となる鉱物さえ確保できれば飲水の心配が無かったのがとにかく助かった。


この角を曲がれば、洞窟の入口だ-!!


-という所で、入口の方から声が聞こえた。

それはこれまでに遭遇した怪物達のものではなく、どうやら人間たちの話し声のようだ。


一瞬足が止まる。

一週間近く独りで洞窟で魔物と慣れない戦いをしていたせいで、すっかり人恋しくなってしまっていたからだ。

だが、急いで引き返し壁の中に潜って息を潜める。すると直ぐに足音が壁の直ぐ向こう側に聞こえる。


(どうか、どうか気付かないでくれ---!)


そんな願いも虚しく、本能で生きる魔物とは違い知性がある人間相手だ。隠れている穴を塞いだ真新しい土に気付かれてしまったようだ。


「あら? この壁、柔らかい土で穴が塞がれてる…。 最近掘って埋めたようね」

「あぁん? アースバットやストーンスパイダーが穴なんて掘るわけねぇし… …メタルリザードが隠れてんのか?」

「…壁から離れろ」



どうやら人間は男2人女1人のパーティーで、耳をすませていると会話がよく聞こえた。

不幸中の幸いか、人間が話す言葉は自然と理解できた。そのおかげでこれまで会った怪物たちの名前も判明した。

だが--- この流れは不味い。


隠れているのがバレてしまった以上、速やかにこの場を離れなければ!


息を潜めるのを止め、とにかく全力で目の前を掘り進める。

潜んでいた謎の生物が動きだしたことを感じ、壁の向こうの人間たちが警戒して騒がしくなる。

壁から離れろと言った男がブツブツなにかを呟くと、壁の向こうでは自分が角に集めたときとは【異なる熱】が集まるのを感じた。

その瞬間、


ドガン!!!


と大きな音と共に壁が揺れ、全身に衝撃が響いた。

つい振り返ってしまうと、穴の向こうでは土埃と火の粉が舞う中、最初に隠れていた付近の壁が抉れていた。


どうやら人間たちは火薬…

あるいは、【火薬の威力を持った何か】で壁を破壊したらしい。


一度の爆発で壁の向こうに隠れる生き物を炙り出せなかった人間は、またも何かを呟き始めると再び【熱】を感じた。

その【熱】が高まると同時に、またしても


ズガァン!!!


という轟音と共に洞窟が揺れるとともに、炎が穴の向こうから押し寄せる。

思わず目を閉じて身を丸くすると、襲いくる熱を感じた。

少しの間炎に炙られていたが、『ちょっと熱い』以外は痛みも何も感じなかった。

熱が止んだころ、そっと目を開けてみる。

幸いにも自分が今いる場所までは抉りきれなかったもののかなり近くまで壁を壊されてしまったようで、今までにない程人間の気配を感じる。


このままじゃ見つかる-!!!


再び全力で穴を掘り始めると、人間たちも騒がしくなる。


「まだ生きてるだと!?」

「どんだけ深く隠れてんのよ?!」

「次で仕留める……!」


と男が3度【熱】を集め始めるが、


「馬鹿…!! さっきので洞窟の天井からもパラパラと岩が落ちてきたでしょ?! ここが崩れたらどーすんのよ!」

「エナの言う通りだな。これ以上は危険だ。」


どうやら人間の女はエナと言うらしい。

残りの男二人の名前は分からなかったが、壁向こうの【熱】が散ったのを感じた。少しばかり安心はしたが、ここには留まれない。


俺は腕の力が続く限り、目の前を掘り進んだ。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





あの後何とか人間たちを振り切った俺は、いつの間にか洞窟の中では拓けた場所に出た。

その場所は学校のプールぐらいの大きさの部屋だったが、光る草やキノコら水晶の他にも鈍色や銀色に輝く鉱石が所々顔を覗かせていた。


そして部屋の中央の地面には、黄色に輝く宝石のような石が埋まっていた。

水晶や鉱物を美味しく感じた経験から、輝く石はかなり美味しそうにみえる。脅威から逃れるために全力を出して疲れきった今の自分には、堪らないご馳走様に思えた。


フラフラよろめきながらもその石に近づき、力の入らない手で石を掘り起こしてみた。石を持ちあげてよく見てみるとそれは内側から光っていて、その輝きには先程の人間の男が集めていものとは違う、むしろ自分が集めたのと【同じ熱】を感じた。



(男は何かを呟きながら【熱】を集め、そしてそれを炎に変えた…

とすると、この熱はもしかして… -【魔力】、なのか?)



ラノベでお馴染みの《ステータス・オープン》が出来なかったことから、ここはファンタジーなようにみえて魔法が存在しない世界なのかとも考えていた。

しかし、【熱】を集めて現象を引き起こす。先程実際にあったことだ-。


恐怖と疲れから、気持ちが落ち込んでいた。

しかし今は、憧れていた【魔法】の存在に一歩近付けた気がして気持ちが一転した。


とりあえず近くのご飯を食べて少し休憩をしよう。



休憩したら--- この【熱】について調べてみよう。



こんなお話ですが、読んで下さって本当にありがとうありがとうございます。

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