38話
ゼラードが本気を出すと、こんなに速かったのかと実感する。
魔法や魔力による支援もないのに、ダンジョンを風のように駆け抜ける。
戦わなくても良い場所では魔物を無視し通り抜け、敵が道を塞ぐようであれば一刀で斬り殺し、あるいは一撃で殴り飛ばす。
この強さは一体なんだろうか。
身体の一部が、爬虫類のモノになっていることが関係しているんだろうか?
(それはともかくとして、首を掴んで疾走されるとヤバいんだよな・・・)
首を掴まれて走られると、頭と身体が振動に合わせてブルンブルン揺れる。
今にももげそうだ。
一応小声で鳴いて訴えてみるが、『うるさい』とばかりに一睨みされてしまえば、小心者の俺は黙っているしかない。
そうしたヤツの走りもあり、行きは半日ほどかかった道程も、1時間くらいでサルバの街まで戻ってくる。
俺はサルバの街が見えると自身に【隠蔽】をかける。
ゼラードは勢いを落とさずギルドまで走り、ギルド内へ飛び込むと、受付嬢に断ることもなくドゥーガの執務室の前まで駆け上がる。
ゼラードは上がった息を整えながら執務室の扉を乱暴に叩く。
中からドゥーガの返事があったため、ドアを開けて中に入ると書類仕事をしていたらしいドゥーガが立ち上がって俺たちを迎えてくれた。
「ゼラード、何があった? お前にしては随分と慌てているな。」
「ドゥーガ、ヴォルグ火山がダンジョン化したようだ。
それも、どうも鉱山と繋がってしまってるらしい。」
「っ、何だと?! それで、鉱山はどうなってる?!」
「まだ大きな変化はなさそうだが、【熔岩巨人】に出くわした。」
そこまで話を聞くと、ドゥーガは絶句してしまった。
ゼラードが慌て、ドゥーガが絶句する程だ。
火山が新しくダンジョン化したことはまだしも、鉱山と繋がってしまい熔岩巨人のような魔物が彷徨いかねないことは、余程問題となるようだ。
俺はまだゼラードに掴まれたままだったので、【隠蔽】を解除するとヤツを軽く突ついて説明を求める。
するとゼラードは、『説明はドゥーガにしてもらえ』と言わんばかりに俺をまたしても執務机と放り投げる。
俺は咄嗟のことに受け身も取れず、顔から机に突っ込んだ。痛い。
ドゥーガはそんな俺を見て我に返ったようで、
「よう、チビ! ・・・多少ケガはしてるようだが、元気そうで良かった!」
動揺は隠しきれていないが、そのように言ってくれた。
俺は片手を挙げてそれに応えると、改めてドゥーガを見て首を傾げることで説明を求める。
ドゥーガもそれを受け、俺にも分かるように今起こっている問題について説明してくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
場所が歪み、【ダンジョンコア】が生まれると、コアを通じて魔物が発生する。
発生する魔物や属性はコアによって決まり、ヒトにとって有用なダンジョンだと判断された場合は国の委託を受けたギルドが管理をすることになる。
このため新しくダンジョン化した場所を見つけたのなら国へ報告する義務があり、発見した功績に対し褒賞が国から渡される。
そしてダンジョンを調査し、破棄するか管理するかを決めるのだ。
基本的に魔石や素材を得られるためヒトが住んでいない場所のダンジョン化は歓迎される傾向にあるのだが、『新しい土地のダンジョン化』が問題となってしまう場合もある。
その問題となるケースの一つが、『コアの力に差があり過ぎる場合』だ。
繋がったコアの力に差があり過ぎると、力の強いコアが力の弱いコアを侵食し、自身のコアへと吸収してしまうそうなのだ。
『力の差があり過ぎる』をどこで判断しているのかというと、ダンジョンが魔物を生み出す力や、生み出した魔物の強さで判断しているらしい。
これを現状に当て嵌めると、
『サルバ鉱山』と新しくダンジョン化した『ヴォルグ火山』が繋がった。
もし『ヴォルグ火山のコア』の力がサルバのものより強い場合、段々『サルバ鉱山のコア』が侵食されて火山の性質を持つようになってしまう。
そうなれば、『サルバの森』にも連鎖して影響がでる。
ただし、ダンジョンは国の判断で破棄するか管理するかを決めるのだ。
国へヴォルグ火山がダンジョン化したことを報告し、国が『鉱山より火山の方が利用価値がある』と判断した場合、
火山のコアは守られ、サルバ鉱山と森は侵食されるのを待つしかなくなる。
だから、火山のコアの力とその行く末次第では、鉱山と森から得られる素材を中心に栄えてきたこの街の根幹を揺るがす問題へと発展する可能性があるそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこまで聞いて俺はようやく、サルバ鉱山の【コア】に書かれていたことの内容と、ゼラードが急いで戻ってきた理由が分かった。
コアに表示されていた『変換率』というのが、魔物を生みだす早さに関係しているのだろう。
鉱山の『3』と火山の『5』では大きな違いがないと思っていたが、数字が一つ変わるだけで力はだいぶ変わるようだ。
そして、『変容』が進行中となっていること。
ゼラードはコアに書かれた文字は読めないらしいが、それでも火山のコアが魔物を生み出す早さは目の当たりにしている。それで力のあるコアだと判断して戻ってきたのだろう。
このまま国への報告と調査が遅れる程、火山を破棄する場合でも鉱山の変容が完了してしまい、間に合わなくなってしまうということだ。
事態を理解した俺は頷くと、ドゥーガとゼラードを交互に見やりこれからどうするのかを問うた。
数多の素晴らしい小説の中からこの話を見つけて下さり、興味を持って下さりありがとうございます!
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