表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝石龍の生き残り計画  作者: おもち丸
21/47

20話

「じゃあ明日の朝には出来上がるから、今日の所はサルバでゆっくりして行ってちょうだいね。」



あれからゼラードは見事に大剣を操り俺の爪先だけを斬り落としたが、魔導具を作るためには2人分の爪を用意しないといけないことを忘れていた俺が 「ぴぎゃぎゃっ?!(まだやんの?!)」 と騒ぎ、また奴にうるさいと殴られるトラブルがあったものの、無事に必要な材料が揃い準備が終わったので、カーリンさんがそう声をかけてくれる。



「そうだな。ゼラード、昨日着いたばかりなのにすぐ調査に向かってくれたろ? もう宿はとってあるのか?」


「いや、まだだがいつもの所へ行く。」


「そうか。もし良かったら、俺らの家に泊まってくれても良いんだぞ?」


「・・・・・・・・・。機会があればな」


「お前はいつもそう言って、遊びに来んだろうが。」


「・・・・・・・・・。」



後は今ギルドで出来ることは無いのだろう。

ドゥーガとゼラードがサルバの街での宿の話をしている。



ゼラードはドゥーガの家に行くのが微妙に嫌そうだった。

何となく分かる。



俺たちと話が終わったカーリンさんは、ドゥーガを見つめそれは綺麗に微笑んでおり、見つめられたドゥーガは照れたように若干頬を赤くして隠すように頭を掻いている。

要は、二人の仲が良過ぎて、愛の巣(死語)にお邪魔した所で居た堪れないのだろう。



俺も、出来れば二人の邪魔はしたくない(アテられたくない)。



話は終わったとばかりにゼラードが部屋の外へ向かい始めたので、俺も二人にお辞儀して別れの挨拶をした後、ヤツを追って部屋を出た。



----。



思い出したが、階段・・・・。



1階へ降りるための階段のことをすっかり忘れていた。

アイツは今度は俺がどうするつもりなのか見たいのだろう、先に降りずに階段の前の壁に寄りかかってこっちをニヤニヤしながら見ていた。



(---。

あの時は感動したけど、やっぱりこういう奴だよな・・・。)



分かっていたことだが、基本的にドSのようだ。

俺は階段まで来ると、後ろを向いて足が下の段に届くか試してみる。

が、もちろん届かないので、仕方なくジャンプして降りる。



後ろ向きに階段を降りるのは、足元が見えず案外怖いのだ。


そんな風にビクビクしながら一段一段階段を下りる俺を手伝うことなどもちろん無いまま、ヤツも俺に合わせて階段を下りる。


そして、後ちょっとで1階だ――

という所まで来た時に、バランスを取るために動かしていた羽と尻尾を壁に当ててしまい、体勢崩して階段から後ろ向きに転がり落ちてしまった。


そのまま1階の床に強かに頭を打ちつけた俺は、目を回してしまう。


――突然階段から転がり落ちてきた間抜けな魔物()と、普段愛想の欠片の無いであろうヤツが珍しく笑うのを目撃した冒険者ギルドは、その奇妙な光景に再び静まり帰ったのだった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




冒険者ギルドを出て向かったのは、広場から屋敷方向へ少し進んだ所にある建物だった。



3階建ての大きな宿で、1階は受付と食堂になっているようだ。


扉を開けると中は、左手に台帳が乗った受付カウンターがあり、左手奥の方はバーカウンター状の厨房がある。

右手が円形の机に椅子が並ぶ場所となっており、奥には階段がある作りとなっていた。

木の温もりを感じる、シンプルだか素敵な宿だ。



ゼラードが中へ入ると、

「あらゼラードさん? お久しぶりだわね」

と厨房に居た恰幅の良いおばさんが声をかけてくる。



「あぁ。空いてるか?」

「えぇ、空いてるわよ。いつもの部屋でいいかい?」

「あぁ。」


と慣れた様子でトントン拍子に話が進む。

そう言えばこの街での定宿って言ってたっけな。


そのまま勝手知ったるというヤツで、

台帳に何か(文字が読めないし俺の位置からは見えないので予想だけど、自分の名前と宿泊予定日数とかか?)を書くと、代金をカウンターへ置く。

すると厨房から手を拭きながら出てきたおばさん(この宿の女将さんだろう)が、壁に掛かった鍵を一つ渡してくれる。


それを受け取ると、ゼラードは部屋の場所や注意事項など聞かず、ズカズカと階段を上り始める。


俺が自力で階段を上るのは、流石に時間がかかり過ぎるとヤツも思ったのだろう。

今回は俺の首を掴むと、一緒に連れて行ってくれた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




3階の突き当たりの部屋に入ると、ゼラードは背中の剣を窓際の壁へと立てかけ、ベッドへ座り大きな溜め息をついた。


まぁ、色々あったからな。


俺はというと、ヤツと2人きりになるのはこれが初めてなので、どの様に過ごせば良いか分からず扉の陰で小さく立ちすくんでいた。

手持ち無沙汰に、顔でも掻こうと腕を上げた時だ。



「ぴぎゅ(あ)」



俺は男に腕輪を借りていたことを、今になるまですっかり忘れていた。

着けていた腕を、散々動かしてたというのに。



そして腕輪を外すと男の下へ寄り、



「ぴぎゃーぎゃ(どうもありがと。お陰で助かった)」



とお辞儀をしてから腕輪を差し出した。

男はそんな俺を見ると、



「そいつはいい。取っておけ。どの道俺には使えんからな。」



と言って受け取らなかった。



(あの時男が自分で腕輪を使ってエリクを助けなかったのは、そういう事だったのか)

確かに道具は持っていたとしても、使えるとは限らない。


事情も知らないまま(自分で【治癒】をかければ良いのに)と思ってしまったことに、若干罪悪感を感じる。




そのままつい俯くと、奴が大きな手で俺の頭を掴みグワングワン揺らしてくる。



「別にいい。」



俺が思ったことが正確に分かっている訳でもないだろうに、そう言ってくれた。



基本的に唯我独尊なのだが、良い奴なのだ。



(こうして良くしてくれる奴の方が珍しいのだろうと言うことを、肝に銘じておかないとな・・・。)



感謝の気持ちを伝えるため深くお辞儀をして、腕輪を受け取った。



そしてヤツが飯を食いに行くがどうするかと聞いてきたので、俺は部屋に残る事にした。


この世界の料理に非常に興味があるが、食べれないし、階段の昇り降りが面倒だ。



(それに---。)



先程も大通りを堂々と歩くヤツを追って、そのまま歩いてしまったが。

冒険者ギルドでも一度姿を見られているから、とそのまま歩いたが。



(俺という魔物を連れ歩くことで、トラブルに巻き込まれる事もあるって言ってたしな。)



ヤツが出かける時は、俺を連れて行ってくれる場合以外は部屋で大人しく過ごし、外を歩く時は【隠蔽】を使うことにする。





――なるべく迷惑をかけないように、徐々に、この世界の人間との暮らしに慣れていこう。




ここまでお読み下さり、本当にありがとうございます!


※本日はこの後20時頃にも投稿予定です。

よろしければまたお付き合い下されば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ