13話
※本日また2話投稿をしております。未読の方はよろしければ前話からお読み下さい。
「----お前は、あの鉱山から出て来た魔物か?」
そう訊ねられた瞬間、頭が真っ白になり世界から音が失くなる。
(なんで俺が鉱山から来たことを知ってんだよ?!
もしかして途中から見られてたのか?
やっぱりあそこから出るのは間違いだったのか----?!)
様々な感情が押し寄せ、ふと目から涙が零れる。
その涙を見て男は、今握り絞めている魔物が鉱山から来た魔物だと確信したようだ。
-そして。
「そうか」
と一言呟くと。
俺を女の子の横へと投げ捨てたのだった。
「……ぴぎゃ?(あれ?)」
思わず心の声が漏れる。てっきりあのまま縊り殺されるかと思っていたからだ。
何とか体勢を整えて改めて男を見やると、
「殺されるとでも思ったか?」
と淡々と聞いてくる。
若干イラっとしたが、敵う相手では無いので素直に頷くと。
「やはり、俺の言葉が分かるんだな。」
と言われた。
一瞬なんのことか分からなかったが、その意味を理解した途端、ゾッとする。
「知性のある魔物は、簡単な人間の言葉なら調教次第で理解することがある。中でも極一部の魔物は、人間の言葉を完全に理解することができる。お前もそのような魔物の一体のようだな。」
俺が人間の言葉を理解する魔物だと、バレたのだ。
思えば腕輪を渡してきた時には、ある程度察していたのだろう。
そして腕輪を使いこなした時点で確信していたのかも知れない。
不幸中の幸いか、そのような魔物は俺だけではないらしい。
いなくはないが、決して多い訳でもないらしい。
俺はこの世界で言葉を理解する魔物がどのように扱われるのかも知らないのだ。
お陰でますます目の前の男が、次にどの様な行動に出てくるのか予想もできなくなった。
必死に身を守ろうと身体を縮こませている俺と、男の間に漂う緊張した空気を感じたのであろう、女の子が息を飲む気配がする。
そして。
おもむろに男がこちらの方へ再び歩み寄ってきて。
「----何をしている。行くぞ。」
俺と女の子に、そう声を掛けてきたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
女の子だけなら解る。
人間だからだ。近くの安全な場所なり、その子の住む家まで送り届けるのだろう。
(----だが、俺は?)
何故俺にまで声を掛けてきたのか解らず、首を傾げると、
「俺は最近鉱山に起きている異変を調べるためにここへ来た。
まだ鉱山には入っていないが、そいつらをこのまま放って置く訳にもいかないだろう。
-それに、鉱山から出て来たお前だ。俺も何度か鉱山には潜ったことはあるが、お前のような魔物はいなかった。
今回のことと無関係ということもないだろう。」
と男が理由を教えてくれる。
男の言う異変が、昨夜見た男達が言っていたものであるならば。
-確かに、無関係でなないかも知れない。
まぁ、「テメェが原因なんだろ?」と突き付けられているようなものなので、むしろ先刻よりも更に居心地が悪くなったのだが。
そして男は女の子に家の場所聞き、それが俺も向かおうとしていた森の先にある山を背にした街(-サルバという名前の街らしい-)にあると分かると男の子を背負い、
「日が暮れる前に街へ向かうぞ」
と一言告げ、子供とは言え人一人を背負っているとは思えない動きで歩き出したのだった。
数ある素晴らしい作品たちの中から、この様なお話をご覧下さり本当にありがとうございます!




