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沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
夜の風
93/112

93

 白く、頭の大きなイルカに羽を生やしたような形状の攻撃機型を筆頭に、水平複座の灰色をしたヘリコプターが続く。無数の子機を支援に連れて、夜明けの空を飛来する。

 装備を外し腕を出す。そして自らの腕を強く噛み、剣を自分の肩にあてがう。一回、二回と大きく呼吸を行うと、三度目の呼吸で一気に腕を切り落とした。

 攻撃機型の腹部が開く。ゆっくりと現れたのは吊り下げられたミサイルだ。

 剣に付いた血を払い、鞘に戻して口から腕を受け取り手首を掴む。重量のある腕を大きく振って、空高くへと放り投げる。肘を曲げたり伸ばしたりを繰り返し、回転しながら空を舞う。ソードが腕に魔法を使うと、それは瞬時に再生し完全体のミツキになった。

 朝の空に玉虫色のベールが広がる。

 空へ空へと昇っていくミツキの勢いが消える。反転し、落下し出したその瞬間、濃厚な魔力がミツキの元へと集まって獣の姿で実体化した。

 鋭く巨大な牙でミツキを喰らう。着地と同時に口が閉じられ、はみ出た手足が地面に落ちる。獣、それも大型のネコ科のような形態で、魔神はソードの背後に続く。

 攻撃機からミサイルが二発放たれて、ヘリコプターの機銃が回りだす。魔神は深く踏み込みソードの頭上を跳び越える。前足でミサイル二発を叩き落とし、攻撃機を噛み千切る。自身の身体を一旦魔力に還元させると人型となり、炎の剣でヘリコプターを切って落とした。

 無人機は炎上しながら落下し魔力に還る。魔神は更に迫る子機たちへ黒い炎で薙ぎ払う。

 爆風の中を抜けて肩から先を再生させる。次から次へと迫り来る無人機たちは魔神に任せ、装備を直し盾を持つ。第二の城門が見えて来た時、近くで爆弾が炸裂した。

 金属片が飛び散ってソード達に襲い掛かる。盾で自分の頭を守る。だが馬は金属片にやられ体から力が抜けて落ちていく。咄嗟に片手剣を抜くと、馬の頭を切って落とした。

 魔法で馬を治し頭を生やす。馬の身体は傾き転倒しかけたが、危うい所でなんとか耐えた。

 固く閉ざされた城門を近衛兵たちが陣形を組み守っている。何重もの馬止めと大砲に、具現の勇者のターレットさえも用意してソードが来るのを待っている。

 空の機械を薙ぎ払い、黒い獣が地響きと共に着地する。一歩、二歩と助走をつけるその度に、黒い被毛が炎に変わる。やがて獣は黒い炎の塊となり、獣のような形状をした炎がまっすぐ城壁へと向かう。

 兵士が放つ矢弾も魔法も全て焼き尽くし、城壁へとぶつかった。壁に沿い、早朝の空を黒い炎が舐め上げる。爆炎は近くの兵士も建物もなにもかもを包み込み、城壁さえも塵へと変える。炎が燻る更地にはたった一人、ソードだけが残っていた。

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