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沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
夜の風
89/112

89

 魔神の炎に包まれながら二人は進む。時折姿を見せる魔族は全て焼き払われ、近づく前に魔力へと還っていく。

 タクトの腕を肩に回して通路を進む。ソード一人のカンテラの灯が示す先へ、二人一緒にゆっくりと行く。どちらも一言たりとも発する事無く、ただ淡々と足を動かす。

 手や足、頭に胴体を魔力が形を成していく。不完全な人型は身体の一部を形作って、床に転がり蠢いている。どれもこれも見覚えがある。ソードと同じ顔立ちの頭を蹴ると、魔神の炎が全て焼き消していく。

 建物の外に出る。ファサードで待っていたメイスとクロスが立ち上がり、ソードからタクトを受け取り支える。人も、鳥も、虫さえも、魔族ですらも姿は無い。無機質な廃墟だけが広がっていた。

 無音の世界に風が吹く。積もった砂が舞い上がる。それがソードの頬を叩いた。傷の一つも付けられぬまま抜けていく。崩れた塔が風に晒されて泣き、唸るような声を出す。亡国はいつしか砂の下に沈み、記憶と記録の両方から消え新たな国の礎となる。それが人族か蛮族か、はたまた魔族かは不明だが栄え滅びてまた消えるのだ。

 月は地平に沈みかけ、青から赤へと変色している。赤と言えども夕陽のような色ではない。もっと黒く、暗い赤だ。月が沈めば陽が昇る。陽が沈めば月が昇る。どちらもなければ星が輝く。何千、何万、何億もっと、幾度とも無く繰り返された。それが自然の法則だ。常に光は空にある。

 魔神は魔力となって傍に居る。姿は見えぬが存在だけは感じられる。息遣いとか物質的なものではない。魔力を通じて繋がった意志のようなものであろうか。魔神はソードの意志と意図とを理解して、おとなしく彼女に従っている。

 無人の旧都を後にする四人のミツキを、赤い月の光が照らし長い影を落としていた。

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