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帝都の外でクロスとそして新たなミツキの二人と合流し、旅の物資を補充する。何着かの着替えに数日分の携帯食料、そして短剣に予備のナイフ、新品のバックラーを手持ちに入れた。馬車に置いたままにしていたソードの荷物はメイスとクロスが運び出していてくれた。武器の損耗も少なめで済んだ事もあり、補充したのは旅の消耗品が主だった。
新たなミツキは自らの名をタクトと名乗ることにしたようだ。クロスが命名し、由来はタクトが選んだ金属杖からだった。ソードと同じく両手足のナイフに加え腰から短剣と片手剣を共に二本ずつ下げている。盾は無く、身長程もある杖は背に背負う。ソードと同じ防具に外套を纏ってい、雑多な荷物はまとめてポーチに入れていた。
厚く雪の積もった峰を超え、四人のミツキは街道を北上する。道中会話は全くなかった。必要最低限だけで、無駄な会話はされなかった。皆が同じ方角を向き、無言のまま歩き続ける。とりわけソードの眼つきはやけに鋭く、すれ違う旅人たちは揃いも揃って俯きながら急ぎ足で離れて行く。
馬も無く。来た時以上に時間を掛けて街に着く。ギルドに立ち寄ることもせず、最低限必要な物資を補充し街を発つ。
正規の街道を逸れ、旧街道に入っていく。メンテナンスのされてない何百、何千年も昔の道は草木の中に包まれながらも、行くべき道を立派に示している。四人は揃って道沿いに進み、崩れかけた橋を越え、幅の狭い崖際の道を一列になって乗り越えた。
陽が沈み、そして月が昇る。月が沈み、また陽が昇る。いくつの山や丘を超えたのか、誰も数えていなかった。
気づけば木々は減り、代わりに岩や砂が埋め尽くしている。所々、生える低木は葉も花さえも無く、枯れ木にも見える。砂を含んだ風が吹きソードの外套を強く引く。悪戯な風が笑いながら逃げる先には、崩落しかけた城が朽ちかけて尚かつての威光を放っていた。