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レインに向かって矢を放つ。回転しながら霧を引き裂き一直線に飛んでいく。決して遅くは無いはずなのだが動じるそぶりを一切見せず、最小限の動きで避ける。サイドバーを踏み下げながら二本目の矢を撃ち放つ。回避を読んだ一撃だったが正しく見切っていたようで、彼女は全く動かなかった。
矢を引き抜いてセットする。左右同時に構えると時間差をつけて引き金を引く。まずは左手、レインの左半身を狙い回避を誘う。間髪入れずに右から放ち、予測された回避先へと狙って撃った。一発目までは予想通りで回避行動を取った。回避先まで狙い通りだがそれまでで、彼女目がけて飛ぶ二本目を矢はあっさりと素手で掴まれた。
通用しないと思っていたが、全くダメとは思わなかった。向こうは武器も防具も着けてないのに、明確なまでに不利だった。
弦を引き、矢筒からまた矢を取った。手で固く握り締めると、歩み寄るレインを見ながら自らの太腿につきたてた。鋭い矢尻がパンツを貫き、赤色の血に染まっていく。歯を食いしばりながら力任せに引き抜き装填すると、外套越しに発射した。
矢は外套を引きずってはためきながら飛んでいく。レインは容易く矢を避ける。クロスは武器を手放すと、ナイフを引き抜き投げつけた。冷静にかつ的確に、頭を下げて刃を潜る。低い姿勢でレインはクロスに接近すると、クロスボウを掴みあげた。
息切れ一つしていない。人工肌は白く滑らかで柔らかくそして暖かい。激しい鼓動が響く中、レインの胸から鼓動代わりの高い音が耳鳴りのように唸り上げていた。
霧がゆっくりと流れていく。霞みは彼女からあらゆる色を奪い取り、白の中へと手招きをする。クロスが一度まばたきすると、霞みは流れて色は戻った。
ナイフを抜いて胸元を狙う。その手をレインに捕まれる。彼女はクロスの手を引き寄せると、強力な膝蹴りをいれた。膝から崩れるクロスを支えてゆっくりと、冷たい石畳の上に座り込ませる。レインはクロスの茶色い瞳を見つめると、咄嗟に背後へ回し蹴りを放った。
ナイフが跳んで通りに落ちる。クロスの外套を着た新たなミツキが赤くなった手を治す。二発のパンチを素早く放つと、息つく間もなく足払いを入れる。レインは全てを捌き切り、腕を掴んで投げ飛ばす。新たなミツキは空中で受け身を取ると、利き手を固く握り締めレインに向かって殴り掛かった。