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翌日、注文していた装備が届いた。
ブーツにハードレザーの防具を付けて、両手には滑り止め付きのグローブを装着する。腰に付けた万能ベルトにポーチに水筒とカンテラを下げた。両手足にはそれぞれナイフを合計四つ固定して、利き手の腕にはバックラーを取り付ける。
刃の欠けた短剣に、新たに買った短剣と片手剣、そして赤い片手剣の四つの剣を腰から下げる。上から重たい外套で身体を覆うと、両手剣を外套の上から斜めに下げて三点ベルトで固定する。
メイスの方もソードと同様に両手足に四つのナイフを装着し腰から追加で二つ、合計三つのメイスを下げる。背中にはソードの両手剣の代わりにフレイル一つを引っ提げて、腕にはバックラーではなく一回り大きなラウンドシールドを装備する。
最後に新たなミツキはと言えば、武器屋で装備を揃えたようだ。二丁の片手持ち軍用クロスボウに、矢のたっぷり詰まった矢筒を二つ剣の代わりに腰から下げる。あとは二人と同じように両手足にはそれぞれナイフを装着し、防具にポーチに外套を身に着けた。
「お前達、持っていけ。弁当だ」
マスターから差し出された三つの包みを一人一つ受け取る。弁当はできたてらしくまだ暖かい。小さな声で礼を言うと、竜人なりの分かりにくいが笑顔を浮かべた。
「帝都なら馬を使えば一週間くらいだろう。道は、わかるな?」
ソードは小さく頷く。三人の他に客は無い。次の勇者が立ち寄るまでは、もしかすると客は来ないのかもしれない。
「この辺りは夏でも冷え込むから、風邪にだけは気を付けるんだぞ」
「大丈夫。ひいても魔法で治せばいい」
「自分を大切にしろ、って意味だ」
鼻を鳴らすソードを見て、マスターは声を上げて笑い出した。
「ありがとう。マスター」
「気にすんな。いつでも来い。待っている」
三人の為に扉を開ける。目の覚めるような冷たい風が流れ込み、ソードの髪をかき上げていく。薄くて白い霞が空に被さって、降りているかのようだった。着替えの詰まったポーチを担ぐと、光の中へと踏み出した。
ミツキ達は人通りのない街の中を歩いていく。足音の他に音も無く。静寂こそが立ち込めていた。辺りを包むは命の気配だ。姿も音も何もないが、今日も今日とて生きる者の空気があった。
街を抜け、勇者証を出し門を出た。畏まった調子の兵士に目もくれず、三人分の馬を借りる。鞍を取り付けさせてから勢いを付けて飛び乗った。