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 目印になるような物は何もない。帝都も旧都も山々でさえ、地平線が続く先まで文字通り、干からびた大地であった。

 胸元を探り鳥笛を探す。レナームの為に作ってもらった特別製で、熱に強い石でできている。戦闘中に無くさぬように丈夫なチェーンで首から下げているのだが、ポーチと同じくどこかへ無くしてしまったようだった。

 レナームを呼ぶ彼女の声が灼熱の空に吸い込まれていく。二度、三度、繰り返し呼んでみたが例の巨大なハヤブサは現れる兆しも見せなかった。

 スカベンジャー共が地上に降り立ち羽を休める。忍耐強く待ちさえすれば確実に、食事へ有りつけるかのように、手を貸すなんて事もせず勝手に弱って命果てるのを待っていた。

 もしも記憶が正しいならば、この乾燥地帯は帝都から見て北東部に位置するはずだ。ならばこのまま南下すれば幅広の川に、西へ向かえば街道にたどり着く。ミツキは自分の影を見て、熱波の中を歩き始めた。

 たった数歩も行かぬ内に、乾きと飢えに襲われる。水筒はポーチと共に失われ、簡易的な食料も、もちろん無くしたポーチの中だった。

 足の長いネズミが砂を蹴り、一目散に駆けていく。熱と渇きの極限地帯でありながら、生物の数があまりに多い。表面的に水は無くとも、潜在的に多くの水がある事を意味している。

 ミツキは壊れたバックラーもそのままに、サボテンの間を見て回る。不幸続きで諦めかけていたのだが、不幸も弾が尽きたようだった。楕円形をした平たい緑色の表面に、黄色く見えるほどの棘が生えた植物が生えている。ウチワサボテンと呼ばれる物で、表面に赤々とした果実がいくつもなっていた。

 ナイフを抜き、少々手荒に刈り取る。帝都内でもよく売られており、市場に出れば必ずと言って良い程置いてある。小学生のころに見た、果物図鑑を思い出す。ファンタジックな名前の為に、今でもはっきり覚えてる。どちらかと言えば炎のようで、ドラゴンと呼ぶには程遠い代物だった。

 バックラーをまな板代わりに、四つに切ってかぶりつく。しっかり熟していたようで、口いっぱいに甘みが広がる。果汁の一滴さえもこぼす事無く、貪るように食べつくすと二つ目、三つ目と、一瞬の内に食べつくした。

 空腹と、渇きが同時に満たされて、ミツキは大きなため息をつく。良く冷やしてから食べたのならば、もっと美味しく頂けただろうが贅沢なんて言ってられない。まずは苦痛から解放された。それだけでもう有難い。直接水は得られなくとも、こうして手に入るのならば無事に帝都へ戻れると、希望の光を見いだしていた。

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