表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈む太陽と昇る月  作者: あいあむ
北の方角
66/112

66

「ここだ。ここに猫の獣人がいるはずだ。頼むからあいつ等には黙っていてくれよ? 俺の尻尾を慰めてくれる貴重な場所なんだからよ」

 下種な笑いが沸き起こる。蛮族達は近いらしい。聞き耳をしっかり傍立てたままソードは音がしないよう慎重に、板の囲いの外に出る。壁の合間から動く影が見て取れる。数は四。皆、揃いも揃って大柄で、野太く品の無い声だった。

「おい居るか? 来てやったぞ」

 囲いから出ようとする少女を片手を上げて制止する。扉を手荒に叩く音がする中、ソードは赤い片手剣を抜き両手で構える。そして扉の脇に立った時、叩く音が止まり、おかしいなと、呟く声が漏れ聞こえた。

「いねぇのか? 今日は金貨三枚持ってきてやったぞ。早く出て来てくれよ」

 嫌な笑い声がする。短剣を持つ手に思わず力が入ってしまう。

 これだから蛮族は嫌いなんだ。頭の中で毒づくと、心の中で舌打ちをした。

「まったく、仕方ねぇな。入るぞ」

 言い終わらぬうちに扉が大きく開け放たれる。激しい音が響き渡り、差し込む光に影が落ちる。影の主は壁に手を掛けながら、頭を屈めて入り込んできた。

 ソードは素早く剣を振り、蛮族の首を切って落とす。残った胴から流れ出る血を外套で防ぎながら、外に向かって蹴りだした。

 男性体に牛の頭を持つ二足歩行の蛮族のミノタウロスが残り三体、唖然としたまま突っ立っている。ソードが剣を振って血を払った時、彼らは武器を取りほとんど同時に突っ込んできた。

 足を切り、腕を落として頭を潰す。ぶり下ろされる巨大な剣を力でねじ伏せ叩き折り、心臓目がけて突きを放つ。無理矢理捩じって引き抜くと、振り向きざまに切って捨てた。

 三つの死体が同時に転がる。獣人の少女に向かって出てきていいよ、と言いかけた時、氷のソードの身体を貫いた。

 ミノタウロスより更にひと回り大柄な、単眼の巨体が姿を現す。浅黒く、厚い肌にフレイルを担ぐそれは、いくつもの氷の礫を創り上げると、ソード目がけて一斉に撃ちだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ